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Vol.217 国の広報~その問題点と改善に向けて~

医療ガバナンス学会 (2019年12月19日 06:00)


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一般社団法人 知ろう小児医療守ろう子ども達の会
阿真京子

2019年12月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

芸人の小藪さんによる厚生労働省の『人生会議』のポスターは、要望が出されて発送が取りやめになりました。
その後、その要望への批判などもありましたが、関係者や委員へ再度意見を聴くなど良い方向に向かっているようで、今後良いものが出来上がってくることを期待します。

私自身、厚生労働省の広報に係わることがあるので、その中で感じていることを書きたいと思います。

いま現在は厚生労働省の『上手な医療のかかり方』に関わっていますが、その前に関わったことからお話します。

数年前に引き受けていた予防接種の検討会での出来事です。
当時、現在の接種票には非常に難解な言葉が多く、わかりやすいものが必要だと発言しました。
『どんな病気なのか、そしてそのワクチンを接種することでどのくらいその病気を予防するか、効果と副反応についてわかりやすく書かれたものが必要である』と発言したのでした。

そして、しばらくし、年度を明けてからですが、それぞれのワクチンのパンフレットが出来上がったことを聞きました。
当時の担当者の方には悪いのですが、出来上がったものを見ると、今度は、わかりやすすぎる。肝心なこと~自然にかかるとどんな病気なのか、どのくらい予防するのかという効果、そして副反応のこと~がすべてすっぽり抜け落ちていました。
難しいことをわかりやすく嚙み砕いてくださったのですが、これでは大事なことが伝わりません。

発言を受けて制作に入っているとは、その時の私は知らなかったわけですが、少しでも関与することができたら、と残念に思いました。
中身についてはもちろんのこと、配布の方法(PDFをウェブサイトに置いておくだけでした)もひと言、相談してほしかった・・・と思ったのです。
実際、数年が経ちましたが、このパンフレットは広まっていません。

そのとき、発言したことに安心して手を離してはいけない、次にこのような機会があったらうるさがられても最後まで関わらせてもらおう、と思ったのでした。
そして、数年経ち、昨年度のことですが、今度は『上手な医療のかかり方を広めるための懇談会』に参加しました。

通常の検討会とは異なり、医療者だけでなく、患者側(患者側が一人入ることは珍しくなくなりましたが、患者側の代表が複数いることはまだ珍しいです)、行政(自治体)、広報のプロ、ネットメディアの方、そしてデーモン閣下という多彩な顔触れの面々が、一堂に会して議論をするという珍しい懇談会~厚生労働省も本気で何とかしたいと思っているのではないかと感じることのできるもの~でした。特に、啓発についてはどの委員からもかなり厳しい意見が出て、取りまとめの案がひっくり返ったこともありました。

年度内に報告書がまとめられ、通常、これで委員が関わるのは終了、となります。
なぜか?それは事業が単年度だからです。
あとは、事務局側となる厚労省と受託先の事業者さんによって制作物が作られたり、といったことが行われるのが普通です。

しかしながら、この懇談会では、昨年度の段階で、多くの委員から、引き続き関わらせてほしいことを要望していました。特に広報に関することについては~ホームページや動画、ポスターなど~は懇談会終了後も広く委員に意見を求めるように、行政的な、国民にはわかりにくく、硬すぎるものを作ることにならないように、と要望していました。

その願いは叶い、引き続き今年度も関われることになりました。
事業も、5ヵ年の事業となり、単年度の事業とは違う大きな展開が期待できます。
受託先も決まり、委員への制作物のお披露目がありました。

意見を述べる機会となる第一回、とても楽しみに参加した私は正直、絶句しました。
これでは、伝わらないと。これは、ないだろうと。

けれど、受託先の業者さんが悪いわけでもありません。
懇談会は昨年度のこと。議事録や報告をを読んだとはいえ、この『不安を解消することを目的に、上手な医療のかかり方を伝えること』というこの文脈を読み解くのはとても難しいことであると、私自身この活動をずっとやってきた者として感じています。
それに受託されてからお披露目までの期間の短いこと・・・

『医師の働き方が大変だから!疲弊してるから!だから「かかり方を考えましょう」』というこの働きかけで、行動を変えることは難しいのです。「かかり方」が何なのか、具体的に示すことが大切です。考えましょう、では何をしたらいいかがわからないのです。
また、窮状を訴えることも大切です。けれども、順番があります。
あなたの、あなたの家族の、あなたの子どもの命を守るためにやっていることだということを先に伝えるということ、これが大切なのです。

その、意見を述べる場では、委員の皆さんから、文字通りボロクソと言えるほど、ダメ出しが行われました。気の毒になるほどでしたが、私もこのままでは帰れないので、率直に上記の思いをお伝えしました。

そして、2回目。
しっかり私達の伝えていることの趣旨をご理解いただいたのでしょう。
ものの見事に意図を捉えたものを作ってくださいました。
さすがに広報のプロだなと、心底感心しました。もちろん細かいところで、こうしたほうが、とは意見を言いましたが、大筋文句なしでした。

これで決定だと思われました。委員も厚労省も双方OKでした。
それでも、それが世に出ることはありません。今度は別のところから、NOが出ました。

なんと、難しいことかと思いました。いえ、過去形ではなく、現在もそう思っています。
まもなく、皆さんに見ていただけるものが、続々と上がってきます。
CM、動画、パンフレット、ウェブ広告、記事、などなど・・・。
ご期待ください!!!と大きい声で言いたいところですが、精一杯伝えたもののどこまで採用されるかは・・・未知数です。外の方から見たら、言い訳に聞こえるとは思うのですが・・・。

上記はポスターや動画についてですが、『上手な医療のかかり方』はこれだけに留まりません。特に乳幼児の保護者に向けては、自治体の母子保健事業で『上手な医療のかかり方』を伝えるようになることを目標に活動してきた私達知ろう小児医療守ろう子ども達の会ですので、母子保健事業での啓発活動に、現在、全力投球中です。
『医療のかかり方』は、たくさんの人が知ることが必要であり、たくさんの人が知らないことには意味をなさないものです。
そのためには、親になったらほとんどの親が通る自治体の母子保健事業の中で、実施することが不可欠であること。子どもを育てる間には、医療にかかることが多いからこそ、この時期に学ぶことで、子育てへの不安が少しでも解消されるものだということ。

やみくもに受診抑制を謳うような乱暴な形ではなく、あなたのお子さんの命を守るためにという大切なことを伝えながら、それが医療全体にも良い影響を及ぼすのだということを伝えるこの取り組みを進めているところです。

最後に、今はまだ♯8000や♯7119などしか載っていませんが、これから『上手な医療のかかり方』に関する大切な情報が続々とあがっていきます。
『上手な医療のかかり方』公式サイト kakarikata.mhlw.go.jp です。
ぜひ、時々、チェックしてみてください。責任をもって、許される限りはこの事業に関わっていきたいと考えています。

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