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Vol.006 WHOが懸念する「ベビーフード」の糖分量 上手な活用法は?

医療ガバナンス学会 (2020年1月10日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(7月24日配信)からの転載です

https://dot.asahi.com/dot/2019071900018.html

森田麻里子

2020年1月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

市販のベビーフードに過剰な糖分が含まれているという報告書が、先週、世界保健機関(WHO)の欧州地域事務局から発表されました(※1)。この報告書は、2017年から2018年にかけて、オーストリアのウィーン、ブルガリアのソフィア、ハンガリーのブダペスト、イスラエルのハイファの4都市にある516の店舗を対象に、乳幼児用の食品7955種類を調べてまとめられたものです。

このうち3つの都市では、調査対象となった食品のおよそ半数で、カロリーの30%以上が糖類由来でした。また、3分の1程度は、砂糖や濃縮果汁、その他の甘味料が含まれていたことがわかりました。

この結果をWHOが問題視している理由は、2015年にWHOが出した糖類に関するガイドラインを見るとわかります。このガイドラインでは虫歯や肥満の予防を目的に、1日に摂取する遊離糖と呼ばれる糖類を、総エネルギー摂取量の10%未満、できれば5%未満にすることが推奨されています。遊離糖とは、甘みの主成分となるブドウ糖、果糖、ショ糖などの単糖類・二糖類をまとめた呼び名です。

ただし、この数字を今回の30%という数字と直接比較することはできません。WHOは、野菜や果物、牛乳など未加工の素材にもともと含まれている単糖類・二糖類は制限の対象にしていません。一方で今回の調査での「糖類」とは、素材にもともと含まれている糖も含めた数字なのです。

この調査で糖類が多かった品目を具体的に見てみると、ジュースや飲み物、果物や野菜のペースト、ヨーグルトといったものが並びます。果物に多く含まれる果糖や、乳製品に多い乳糖が糖類としてカウントされてしまっているので、これらの食品で糖類の量が多くなってしまうのは仕方ない部分があるでしょう。その他の食品を見ると、肉や魚がメインの主菜はもちろん、シリアル、さらにビスケットやウエハースなどの品目であっても、含まれている糖類の量の平均は、総カロリーの30%を下回っていました。

今回の調査では、購入してきた製品の成分表示を見て糖類の量を解析しています。成分表示は含まれている糖類全体の量しか記載がないため、調理加工で加えられた糖類がどの程度の量なのかはわかりません。また、食品の種類によって糖類が多いものと少ないものにはかなり差があり、全食品について何%以内なら良いと決めることは難しいようです。

そもそもこの調査は、ベビーフードの不適切な表示や広告をなくし、乳幼児の健康的な食事を推進するためのプロジェクトの一環として行われたものです。つまり消費者向けの調査ではないのですが、この調査結果は、日常で私たちが乳幼児向けの食品を選ぶ場面で活用することができます。その際には、ひとつの食品の中で糖類がカロリーのどの程度の割合を占めているかという数字を気にするよりも、どんな食品を摂るかを選ぶことが大切です。

ベビーフードは、衛生的で手軽に使え、鉄分など手作りの食事で補いにくい栄養素を摂りやすいというメリットがあります。ベビーフードを一律に避けるのではなく、上手に選んで活用していただきたいのです。

ママ・パパに注目していただきたいのは、調理や加工過程で加えられる、砂糖やシロップ類、果汁です。私は以前、息子のために買ったベビーフードを何度か味見しました。日本のベビーフードがものすごく甘すぎると思ったことはありませんが、ほんのり甘みがあるものが多く、「これが赤ちゃんの好きな味なのか」と感心したのを覚えています。原材料表示を見てみると、赤ちゃんボーロ、クッキー、ウエハースには砂糖が含まれているものが多く、またおやつではなく食事として与えるためのベビーフードでも、甘じょっぱい和食系の味付けのものには、砂糖が入っていることがあるようです。一方で、友人にお土産でいただいたドイツの子ども用スナックは、全く砂糖も塩も入っておらず、素朴な味わいでした。

ホームページを見て調べた限り、日本のベビーフードで砂糖の添加量が記載されているものは見つけられませんでしたが、砂糖やシロップなどが入っているかどうかは、原材料表示を見ればわかります。WHOは報告書の中で、乳幼児の食べ物に砂糖やシロップ、果汁を加えるのは適切ではないと明記しています。欧州地域事務局では、3歳までの子ども向けの食品としてはフルーツジュースや甘いスナックを販売させず、ベビーフードに砂糖やシロップ、果汁を加えるのを禁止する方向で動いているようです。この方針に沿うならば、おやつはジュースや甘いクッキーよりも、砂糖の含まれていないおせんべいがより良いかもしれません。メーカーによっては、砂糖不使用のボーロなどを販売しているところもあります。また、食事としてベビーフードを与える際にも、砂糖が入っていないものを選ぶことができます。

わが家の息子も甘いものが大好きなので、健康には良くないでしょうが、菓子パンを食べさせることもあります。糖類はあまり健康に良くないですよと言うと、それを気にしすぎて追い詰められてしまう方もいらっしゃるのですが、ストレスをためないことも大切です。余裕がある時に、ベビーフードの裏面の原材料表示も確認してみる、どちらを買っても良いと思ったら砂糖が入っていないベビーフードを選ぶ、くらいの気持ちで、少しずつ取り入れていっていただけたらと思います。

(※1)WHO. Commercial foods for infants and young children in the WHO European Region (2019) [Available from: http://www.euro.who.int/en/health-topics/disease-prevention/nutrition/publications/2019/commercial-foods-for-infants-and-young-children-in-the-who-european-region-2019.

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