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Vol.011 健康食品は健康をもたらすか ~医学的な効果は?~

医療ガバナンス学会 (2020年1月20日 06:00)


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三豊総合病院
藤川達也

2020年1月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●〇〇のおかげで最近調子がよい
「TVで〇〇が良いって聞いてから毎日食べるようにしているんです。そうしたら体調が良くなったような気がします。」
影響力のあるテレビ番組がある食品を取り上げた後日の外来で繰り広げられる会話である。最近ではテレビ、雑誌のみならずインターネット・SNSの情報をもとに特定の食品野菜、果物、時にサプリメント類、健康食品が注目を浴びる。冒頭で述べた「体調が良くなった」の他に、「血圧が下がりました。」、「血糖値が下がりました。」、「便秘をしなくなりました。」など具体的なものから、「最近身体が軽くなりました。」などの主観的なものまで様々な感想を聞く。

●食品・サプリに対する医師の意見は?
では患者の発言に対して医師はどういう意見を述べるだろうか。
「薬以外のもので十分な治療効果が認められているものは無いのでやめておくべきである」と全てを否定するべきなのだろうか。ある日の外来で次のような報告を受けたことがある。「朝食の時にできるだけトマトを食べるようにしているんです。あれって〇〇のTV番組で糖尿病に良いって聞いたので。」私はその患者がそれほど血液検査の電解質(カリウムなど)に注意を要する状態ではないことを確認し、「ではこれからも適度に摂取を続けてください。」と答えた。このように野菜や果物の摂取を促すやり取りは比較的多い。その理由として野菜や果物の摂取は適度であれば食物繊維が血糖値上昇を緩和させたり、カリウムを摂取することで血圧上昇を抑えうるからである。
(糖尿病 53(2):112~115) ( http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/bp/pamph61.html )
また野菜の摂取を増やすことでご飯、麺類などの糖質摂取量を減らせ結果的にカロリー摂取を減らし望ましい効果をもたらすことも考えられる。
またある患者からは「薬局で買ったサプリメントの〇〇を使っても良いでしょうか?××の症状に良いと勧められたのです。」という申し出を受けた。まだ服用を開始していない段階であり、他に多数の疾患のために複数の処方薬を服用していたこともあり「他の薬剤との飲み合わせや予期せぬ副作用を考えると基本的にお勧めしません。」と伝えた。
ちなみに既に服用を開始している場合、服用してからの効果はどうだったかを尋ね、効いているのか効いていないのかわからないようであればやはり中止を促す。一方で服用して良い効果をもたらしているとなると病院からの処方薬との兼ね合いを考慮しつつ慎重に継続していただくようにしている。
サプリメント類の大半は効果の根拠が不明であったり、有効性のデータが不十分であるが中には十分なエビデンスを持つ貧血に対する鉄剤や便秘症に対するマグネシウム類などもある。(NMDB日本対応版、同文書院)( https://toyokeizai.net/articles/-/203612 )
では比較的有効性が示されているサプリメントは注意する必要はないのだろうか。
昔、『自分は貧血気味だから』、と鉄剤を購入し服用し続ける患者がいた。それでも貧血は進行し息切れ、立ちくらみのために病院を受診した。診察の結果、胃癌のため貧血をきたしていたのであった。頻度の高い鉄欠乏性貧血のみであれば鉄剤の服用は適切であるが、最初から自己診断するのではなく一度は医療機関で胃腸の疾患や子宮筋腫など貧血の原因となる疾患を否定しておきたい。医師から許可がでれば薬局で購入した鉄剤を続けることは比較的安全と言えるだろう。

●プラセボとの上手な付き合い方
我々医師が診察の対象としているのは症状を有しているもしくは検査で異常を示す患者が多い。そのため薬は我々の管理のもとで病院からの処方薬を用いることが大半である。つまり私の場合は疾患を有していない患者はもちろん、軽微な症状を有する患者にもこちらからサプリメントを積極的にお勧めすることはほとんどない。
しかし例外として、次のようなケースを挙げたい。
ある患者が血圧と血糖値の記録を見せてくれた。それを見るとサプリメント類を開始した時期と一致して血圧は下がり血糖値もいくらか改善していたのである。本来そのサプリメントからは期待できない効果がみられていたのである。患者は嬉しそうにそのサプリメントによる効果を主張しておりこれからもサプリの服用を続けたいという。薬品には極めてまれに起こりうる副作用も存在するのだから、通常想定しないような「良い効果」もないとは言い切れない。ただ多くのケース同様このケースもプラセボ効果であると考えられた。
プラセボ効果とは,薬理学的作用が期待できないと考えられる偽薬が投与された場合に何らかの臨床的効果が得られることである。(臨床薬理 Jpn J Clin Pharmacol Ther 2009, 40 (4) p.145)もしかしたら『私は今、せっかく高血圧や糖尿病に効くかもしれない薬剤を開始したのだから、それらを悪化させないような生活を心がけよう』というような意識、心理学でいうホーソン効果が働いていたのかもしれない。
( https://dot.asahi.com/aera/2017042100027.html )
このような効果は実際の直接的な薬理作用を示している訳ではないので微々たる効果と思われるかもしれないが、実は医学研究でも無視できないほどの効果を示すことがあるのである。( 臨床薬理 Jpn J Clin Pharmacol Ther 2009, 40 (4) p.145 )
私はこの効果を目にして、サプリメントをある程度続けてみる許可を出した。そのサプリメントが安価であり注意すべき副作用も存在しなかったことも理由である。しかし何より本来の治療を継続することに対する良い動機づけとなるのならサプリメントを治療の補助 (supplement)として続ける価値は十分あると判断した。
もしあなたが現在使用中の効果を示している健康食品などが実はプラセボなのかと思わせてしまったらお詫びを申し上げたい。しかし治療が上手くいっているとすればそれは事実なのだから迷わず治療を継続してほしい。そして日頃の疾患管理をしている主治医にまだ市販薬やサプリメント類の報告をしていない場合は一度報告、相談をしていただいて本来の治療の妨げになっていないことを確認していただきたい。
(プライバシー保護のため実例を一部改編しています。このコラムは個人的な見解を示すものであり、筆者の所属機関の見解を示すものではありません。)

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