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Vol.055 ブルガリアでの新型コロナウイルスについて

医療ガバナンス学会 (2020年3月19日 06:00)


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ヴァルナ医科大学4年
菊地祐介

2020年3月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

ブルガリアでも、3月8日に初めて国内で新型コロナウイルスの感染が確認された。2月の水際対策の開始から現在(3月12日)に至るまでの経過を私の目線で書いていこうと思う。

ブルガリアでは、新型コロナウイルスについて、保健省から中国やその他感染事例が確認されている国から渡航するものに対して、ブルガリア入国時の検疫を強化する旨を2月4日に発表しました。ソフィア、ヴァルナ、ブルガスの各空港に到着した旅行者でそれらの国から渡航する者はサーマルカメラにより体温測定された上で、発熱やその他の症状がある者は近隣医療機関へ搬送され、診断結果が新型コロナウイルス感染の場合は14日間の隔離措置、陰性診断の場合も14日間の在宅経過観察措置がとられる由です。また、ブルガリア外務省はブルガリア国民に対して、中国への渡航中止を勧告しています。(在ブルガリア日本大使館より)

今年はブルガリアでも暖冬の為、例年より早く花粉症の症状が出始め、特に2/23(日)は症状がひどく、鼻水が止まらず大変であった。翌日も症状が続き、仕方なくマスクをしてバスで大学病院へ向かった。バスの中では、私一人、アジア人一人がマスクをしており、何か突き刺さるような視線を感じぜずにはいられなかった。病棟での実習も、時折鼻をかみながらだったが、先生や周りの生徒からも指摘されることはなかった。病院でさえ、マスクをしている人は、少数であった。

私の在籍するヴァルナ医科大学では、2月27日にメインキャンパスのエントランスにサーマルモニターが設置された。しかし、日本のように消毒液がエントランスに置かれていない。大学病院のエントランスにもまた消毒液は置かれておらず、各病棟の入り口に置かれているだけである。その日のレクチャーの時に、ある生徒がサブメインの大学病院でコロナ感染の疑いがある患者がいると言っていたので、先生に確認してみると、「それはデマ情報なんじゃないの?」との事だった。プロヴディフ市(ブルガリアの中南部に位置する)でもコロナ感染者が出たとの話を聞いたが、その時点でブルガリアでの感染者は正式に確認されていない。

2月28日に日本にいる姉から父が私の事を心配しているとの連絡が来た。それを聞いた時、初めは「え、なぜ?ブルガリアでは、まだ感染者が出ておらず、日本の方が感染が拡大しているのに」と思ったが、よくよく聞いてみると、アジア人、日本人差別を受けていないかとのことであった。ちょうどその前日に、携帯ショップで店員さんと話していたら、「どこ出身?」と聞かれたので、「日本です」と答えて、続けて「でも、大丈夫です!」と言ったら、そこにいた従業員さんたち皆に爆笑されてしまった。こちらが思っているほど、相手は深刻には考えていない様である。逆に、とてもフレンドリーに対応してくれた。

3月5日の夕方に急遽大学からインフルエンザ(B型)の流行に伴い、ブルガリア保健省からの要請で3/6〜3/11の間休校措置をとると発表された。在ブルガリア日本大使館によると、この期間は、ブルガリア国内の全校(小中高)を休校措置にするとの事。なお、大学の同期間の休校の有無は各校の判断に委ねるとの事であった。

3月8日、ちょうどこの日は大家さんに今月の家賃等の支払いをする日だった。大家さんとの話の中で、「コロナの感染者がブルガリアで出たよ」と言っていたので、現地のブルガリア人の話なら信憑性が高いと思い、アパートに戻ってからネットで調べてみると、プレーベン市、ガブロヴォ市(両市ともブルガリアの中北部に位置する)で各2名の計4人の新型コロナウイルス感染者がブルガリア国内で初めて確認されたとニュースになっていた。それに伴いブルガリア政府は、劇場や映画館を閉鎖するなど、全ての文化イベントの禁止を命じた。翌日のヴァルナの街の様子は、いつもと変わりなく、マスクをしている人も少数であった。薬局でマスクの販売の有無を確認してみると、3軒中1軒の薬局でマスクが販売されていたが、日本のように箱でまとめ買いは出来なく、1枚1枚のばら売りであった。価格も思ったより高く(1枚約90円)、サイズも1種類のみであった。

大学側からは、留学生に対してイタリア、中国やその他の感染が確認された国々への渡航自粛が強く出され、もしどうしても渡航をした場合は、ブルガリアに戻って来てからは14日間は自宅待機し、それからGeneral Practitioner(家庭医)に電話をする事、直接行ってはならないとの指示が出された。また、休校措置が3月15日まで延長された。

3月9日、首都のソフィア市(ブルガリアの西部に位置する)でも2名、ソフィア市在住の74歳男性及び66歳女性(両名は夫婦)の感染者が確認され、搬送先の救急病院で隔離措置がとられてた。ソフィア医大の知人に話を聞いてみると、偶然にもアパートの近くの病院であったとの事だった。翌日の搬送先の病院の周りはいつもと変わらない様子で、大学のそばでもいつも通りの様子でマスクをしている人は2、3人しか見かけていないとの事だった。

欧州でのイタリアでの感染者が3月10日に1万人を超え、中国に次いで世界2番目の多さとなった。ブルガリア航空は、イタリアでの感染者の増加を受けて、3月27日までミラノ発着便の欠航を決めた。またウィズエアー(格安航空会社)は、イスラエルの全てのフライトを3月23日まで、イタリアの全てのフライトを4月3日まで中断を決定した。ソフィア医大には、イタリアからの留学生が多いようで、フライトのキャンセルにより、ブルガリアに戻って来れない事態が発生しているようだ。また、ヴァルナ自由大学の友人によると、中国とドイツからの留学生は今シーズンは、もう戻れないようだと言っていた。

3月11日、WHOがパンデミック(世界流行)を宣言し、また米国のトランプ大統領は、水際対策を強化するため「ヨーロッパからの入国を30日間、停止させる」と表明した。対象となるのはイギリスなどを除くヨーロッパの26か国で、シェンゲン協定(ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を超えることを許可する協定)加盟国(ブルガリアは現在含まれない)で、アメリカ東部時間の13日午後11時59分以降、これらの国から渡航してきたり、2週間以内の渡航歴があったりする外国人の入国を認めない決定をした。

4月はイースター休暇のため、留学生は自国へ帰る人が多い。グループのメンバーのスペイン人ももうすでに航空券を予約したと言っていたが、スペインは現在2,277人の感染者が出ており、ヴァルナ医科大学の留学生の大多数を占めるドイツでも2,078人の感染が確認されている。欧州での収束の兆しがみえない中、ブルガリア国内の7人目の感染者は、ソフィア市内の病院の医療従事者で、最近イギリスとスペインへの渡航歴があるが、2月22日以降は出勤しておらず、現在軍病院に入院中との事。欧州との往来がまだある中で、ブルガリアでも今後、感染者の増加は避けられない。幸いにもヴァルナ市での感染者は今のところ確認されていないが、引き続き最新情報に留意し、体調管理を含め、感染予防に努めていこうと思う。

参照
在ブルガリア日本大使館 ( https://www.bg.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html )
THE SOFIA GLOBAL ( https://sofiaglobe.com/?s=Corona+viru )
Medical University – Varna ( http://mu-varna.bg/EN )

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