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Vol. 164 民間病院における施設、設備投資コスト調達の問題点

医療ガバナンス学会 (2010年5月13日 07:00)


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民間病院における施設、設備投資コスト調達の問題点
医療法人鉄蕉会 理事長亀田隆明

(本稿は構想日本のJ.I.メールニュースNo.449 2010.04.30 発行からの転載です)

2010年5月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


現代の医療は、昔の赤ひげ時代と違い、非常に大きな施設・設備投資が必要となります。特に地域の基幹病院として病床数も多く、救急や周産期、災害医療を担うような病院の大きな施設・設備投資は数百億円にもなります。日本は、病床数全体の約70%を民間病院が占めており、上記のようないわゆる「公的医療」の多くを民間病院が担っています。

公立病院の場合、設備投資のほとんどが公共工事として税金が投入されますが、民間病院の場合、税金はほとんど投入されることは無く、資金調達の方法は極めて限られております。銀行などからの借入れ、即ち間接金融に頼らざるを得ません。そもそも医療法人の資本には、株式会社や団体などからの出資は認められておらず、個人の出資にしても、これから新たに設立する医療法人には持分すら認められない仕組みになっています。つまり、資本主義経済のシステムとはまったく違う概念で制度が構築されているのです。

診療報酬には設備投資に当たる部分は明記されておらず、公立病院と民間病院とが同じ診療報酬で統制されているといういびつな状況(公立病院は税金で建ち、民間病院はほぼ借金で建てられ、それを収益から返済する)にあります。診療報酬に設備投資が含まれているならば、公立病院は公共工事として税金が投入されているはずなので、その分の診療報酬は不要であろうし、診療報酬に設備投資が含まれていないのであれば、その分を民間病院の設備投資として別途加える必要があるはずです。いずれにしても、設備投資の位置付け・考え方は明確なものとなっておらず、今後、大いに議論すべき問題です。

医療崩壊が叫ばれる中、民間病院にとっては、設備投資の調達問題に政策的な結論が出されるまでの間、つなぎの役割として、これまでに福祉医療機構が果たしてきたような制度融資の拡充が求められます。より使いやすく改善するような措置が講じられなければ、民間病院はとても持ちこたえられる状況にはありません。

これからの時代の「医療」には新たな雇用や新技術開発など大きな経済効果のある医療産業の可能性も期待されております。福祉医療機構が果たしてきた役割について、医療のあり方の抜本的な制度設計が行われるまでのつなぎとして、独立性を持ち、より柔軟な運用と規模の拡大を急ぐべきであると考えます。

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