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Vol. 165 出産育児一時金直接支払制度に代わる新たな制度を作りましょう

医療ガバナンス学会 (2010年5月13日 14:00)


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弁護士 井上清成
2010年5月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


出産育児一時金等直接支払制度は、その実態が妊産婦の利益に反しているという点で非常に問題です。
緊急少子化対策という主旨は素晴らしいのですが制度設計にミスがあるのです。

名実共に真に妊産婦に役立てるため、制度変更というより、新たな制度が必要です。
新たな制度作りにご賛同いただいた方(妊産婦344名と一般の賛同者193名)の署名と共に、下記の要望書を作成しました。これは4月30日に厚生労働省・民主党・日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会・日本医師会・新日本のお産を守る会 に送付しました。

引き続き、新たな賛同者の募集を再開する予定です。ご賛同いただける方は、お名前、ご住所(妊産婦の方は明記ください)をお送りください。
署名の送り先及び問い合わせ先は、井上法律事務所まで。
電話番号:03-3509-1711、FAX:03-3509-1707

署名よびかけのウェブサイトが完成しましたら、またお知らせいたしますので、ご協力お願い申し上げます。

**********
「出産育児一時金直接支払制度に代わる新たな制度」の要望書
-出産育児一時金42万円を出産直後にもらって自由に使えるようにー
平成22年4月30日
長妻昭厚生労働大臣   殿
小沢一郎民主党幹事長  殿
関係団体        各位

妊産婦344名及び賛同者193名合計537名代理人
弁護士  井上 清成
出産育児一時金等直接支払制度は、制度設計にミスがあり、妊産婦のための緊急少子化対策としての成果が挙がっていない。そこで、出産育児一時金42万円を出産直後にもらえるように、今までの事後申請制度のみでなく、事前申請制度を導入してもらいたい。また、出産育児一時金42万円の使い途を妊産婦が自由に選択できるように、代理受領制度ではなく、振込指定制度に改めてもらいたい。このようにして、本当の意味での「手ぶらでお産」を実現し、妊産婦が出産育児一時金42万円を出産直後にもらってすぐに自由に使えるようにしてもらいたい。

1 名称
講学上の名称は、「出産育児一時金等事前申請自由選択型振込指定支給制度」と言う。
但し、法令上の名称または通称は、「出産育児一時金の事前申請・即時給付制度」などのもっと短くわかりやすい名称がよい。

2 事前申請自由選択型振込指定の申請書書式
従来の事前申請に基づく代理受取制度の書式をアレンジすることが便宜である。
違いは2点あり、1点目は「妊娠証明」の欄を設けたことで、2点目は受取代理人を「振込指定先」と呼び名を変えたことである。

3 申請書の提出者と提出先と提出に伴う手続き
(1) 提出者
申請書の提出者は、あくまでも妊産婦(被保険者)であり、分娩機関ではない。但し、分娩機関が使者(代行)〔代理人ではない。〕として、事実上提出することは認めてもよい。
(2) 提出先
提出先は、被保険者の資格確認のために必要なので、個々の保険者とすべきである。提出先である保険者は、提出を受けたら全件、国保連に事務連絡をすることとし、また、提出者たる妊産婦に対し受付印を押捺した申請書控えを交付することとする。
(3) 提出に伴う手続き
妊産婦は、受付印を押捺した申請書控えを受け取ったら、それを予定分娩機関に提出することとし、そして、分娩機関は提出された申請書控えをもとに国保連に対し分娩機関となる予定である旨の予めの連絡をしておく(これによって、国保連が出産事実の通知に即時対応できる準備をできるようにする)。

4 一旦提出した申請書内容の変更
(1) 変更の自由
申請書の誤記訂正も含めた変更は自由であり、これを制約してはならない。
(2) 変更の手続き
申請書内容の変更の手続きは、妊産婦(被保険者)がその旨を分娩機関に通知すると共に、妊産婦(被保険者)〔もしくはその使者・代行者としての分娩機関〕が個々の保険者と国保連に通知することとする。

5 出産と出産育児一時金支給
(1) 出産に際して
出産したら、分娩機関は国保連に対し出産事実の通知書(モデル文例を参照。但し、書式や通知方法を問わない。)を提出する。なお、出生証明書の作成提出や戸籍上の記載は、あくまでも戸籍法上の手続きであり、出産育児一時金とは関連させない。
(2) 国保連よりの支給
出産育児一時金の支給窓口は、国保連に統一する。異常分娩・帝王切開であろうとなかろうと、支払基金は出産育児一時金とは関連させない。
(3) 国保連よりの即時支払い
国保連は、分娩機関より出産事実の通知があれば、通知の翌日または翌々日には指定口座(妊産婦もしくは世帯主または分娩機関名義に限定。これら以外の場合は、国保連は払わず、個々の保険者が支給事務を取り扱う。)に即時支払いをする。

6 その他
(1) 過誤調整
本来の妊産婦(被保険者)への出産育児一時金支給と同じく、支給過誤の返還は保険者と被保険者の間で完結する。
(2) 非典型担保
振込指定は振込完了前はいつでも変更可能とするが、変更のためには手続き上、妊産婦(被保険者)から分娩機関と国保連と保険者への変更通知を必要とする。これにより、代理受領と同じく、非典型担保としての機能を営む。
(3) 未収金対策
退院前の振込みを可能とすることにより、事実上、病院の未収金対策となる。非典型担保として、振込指定の変更に手続き的制約があるので、これも未収金対策の機能を営む。
(4) 事後申請の場合
事前申請・出産後即時払いは、出産2ヶ月前の申請をリミットとする。2ヶ月前から事後にわたる申請も当然に可能であるが、支給まで申請後1~2ヶ月を要することとなる。事後申請でも分娩機関への振込指定は可能とする。
(5) 統一書式
申請書式(事前申請用と事後申請用)はいずれも統一書式とし、分娩機関においても用意しておくことにより、事前申請を告知して勧める。
(6) 母子手帳シールの廃止
直接支払制度のような母子手帳シールは不要となるので、廃止する。各分娩機関によって告知・説明・手続き補助をする。
(7) 支給遅延の場合
2ヶ月以上前の事前申請にもかかわらず出産通知後2日以内に支払いがない時には、年5%の割合による遅延損害金が発生する。
(8) 出産育児一時金等の受給資格
「妊娠4ヶ月以上」とすると法改正の有無が議論となりうるので、早期実施のために、従来通り、「出産時」の資格とする。但し、実際上、妊娠4ヶ月以上時点となる(健康保険法第106条「1年以上被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後6月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができる」)。
(9) 産科医療補償制度との関係
産科医療補償制度とは全く切り離し、制度的関連は持たせない。
(10)現物給付化との関連
出産育児一時金はあくまでも現金給付であり、分娩費用の現物給付化との関連は一切ない。
(11)専用請求書の廃止
専用請求書のシステムは、分娩機関にとって事務負担が大きいので、すべて廃止する。
(12)国保連に支給窓口を一本化
直接支払制度での支給窓口一本化はそのまま維持するも、支払基金は窓口から一切外す。

*****
出産事実の通知書(書式)
平成  年  月  日
東京都国民健康保険団体連合会 御中

医療施設の名称・所在地
医師・助産師名   印

平成 年 月 日受付に係る別紙の「健康保険出産育児一時金支給申請書(事前申請用)」記載の妊娠証明に関し、次のとおりに出産事実を通知いたします。

出産した年月日   平成  年  月  日
生産又は死産の別  生産・死産
生産児の数     単胎・多胎(  児)
死産児の数         人(妊娠  ヵ月・週)
備考

添付書類
1 健康保険(被保険者・家族)出産育児一時金支給申請書(事前申請用)〔受付日付印 付き〕写し 1通

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