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Vol.127 新型コロナ流行の再襲来に備えて ~新型コロナ患者は「状況に応じて入院」になった~

医療ガバナンス学会 (2020年6月17日 06:00)


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この原稿はMMJ6月15日発売号からの転載です。

井上法律事務所 弁護士
井上清成

2020年6月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1 令和3年1月31日まで備え継続

新型コロナウィルス感染症について、5月14日には39都道府県の緊急事態宣言が解除され、もう少しで終息に向かいそうな見込みとなった(5月18日時点)。しかしながら、第2波・第3波もそうだが、本年の冬ころまでには再び流行が襲来しそうな気配はぬぐえない。

再襲来をあらかじめ予期したかのように、1月28日付け政令で、令和3年2月6日までの間は新型コロナを感染症法第6条第8項の「指定感染症」とすると定めてある(全体としては2類感染症相当だが、入院治療については1類感染症相当)。さらに、新型インフルエンザ等対策特別措置法も改正されて3月14日には施行され、同法附則第1条の2で新型コロナを同法第2条第1号に規定する「新型インフルエンザ等」に含ませて、令和3年1月31日までは同法の適用対象とした。

つまり、現行の各法律の定めからして、少なくとも令和3年1月31日までは、再度の流行を警戒して、現行法に定めた諸々の備えを継続していくべきなのであろう。
2 病院は旅館型からホテル型へ

新型コロナは、SARSとは異なり、さらには、新型インフルエンザとも異なり、想定外の大変な事態を惹き起こして来た。しかし、クルーズ船対処で貴重な知見を得て、その後の市中感染対応でも院内感染対応でも、新型コロナの知見を積み重ねて来たところである。

特に、再度の流行に備えて医療従事者への感染阻止のためにPPE(個人防護具)やN95マスクは十分に備蓄しておきたいし、広く院内感染防止のためにPCR検査等の検査体制の万全をも図っておきたい。

さらに、緊急事態宣言が解除された後も、特別措置法第48条の「臨時の医療施設」を事実上も法令上も存続させて、そのままに医療機能を維持しておきたいところである。「臨時の医療施設」については、それこそ多数のベッドのある野営病院から、たった1つのベッドしかない有床診療所まで、多岐にわたり配備しておくのが相当であろう。用途も、感染者の隔離・治療の仮設病院から、新型コロナ感染の有無の判別用の一時的・一過性の仮設戸建て有床診療所まで、様々である。ただ、総じて仮設病院・診療所の需要の傾向を言えば、大部屋中心の昔ながらのいわば旅館型から、個室中心の現代風シングルルームのいわばホテル型(個室や戸建て)にトレンドが変化しつつあるように思う。
3 患者は「状況に応じて入院」になった

新型コロナ対策については、初動段階では、入院治療についてだけはあえて強めの措置を選択しておいたように感じている。新型コロナは全体としては2類感染症相当なのにもかかわらず、当初は、新型コロナに感染したら軽症者であっても無症状病原体保有者であっても原則として入院しなければならない、と政令に定めたとおりの1類感染症相当の措置を額面通りに採用していた。その措置は、軽症者・無症状者は宿泊療養や自宅療養へ転換するように、と明瞭に打ち出した4月2日付け厚労省新型コロナウィルス感染症対策推進本部発出の事務連絡までは実際上続くこととなる。

もともと厚労省健康局結核感染症課監修に係る「詳解 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〔四訂版〕」(中央法規)56頁では、2類感染症の対人措置は「状況に応じて入院」となっていた。「原則入院」は、1類感染症の対人措置についてである。したがって、全体として2類感染症相当の新型コロナだったので、当初の「原則入院」を実情の変化に合わせて、「状況に応じて入院」に運用の面でも柔軟に変化させていったのである。(念のために付言すれば、同法第19条第3項は、1類についても2類(同法第26条で準用)についても同様に、「入院させることができる。」となっているが、自らその必要性・程度は異なる。なお、いずれも「入院させなければならない。」とはなっていない。)

このように考えると、感染症指定病院のベッド、一般病院のベッド、有床診療所のベッドを、いわば城の本丸のように見立てたとすると、それらを上手く有効活用したり、院内感染を防いだりできるように、いわば内堀や外堀として、「臨時の医療施設」たる仮設の野営病院の個室や仮設の有床診療所の戸建て、そして、借り上げたホテルのシングルルーム(や患者の自宅)を、柔軟かつ適切に組み合わせて配置し、今後も「状況に応じて入院」させていくことが相当であろう。医療現場の実情を尊重して、より効果的な医療が実施できるように、今後に向けてさらに巧みな備えと運用をしていくことが望まれる。

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