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Vol. 177 参院選を間近に今再び「医療事故無過失補償制度」の創設実現を!(その4)

医療ガバナンス学会 (2010年5月25日 07:00)


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第4回 ここにきてどうして無過失責任なのですか?
いままでどおりの過失責任ではどうしていけないのですか?
ノーロス・ノープロフィット とはどういうことですか?

猪又治平
2010年5月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


みなさんこんにちは。お読みいただきこころより感謝申し上げます。熱心な読者から上記のような根本問題をつきつけられました。一瞬ドキッとしました。「過失が無いのにどうして医療者が負担しなければならんのか」とお叱りをいただきました。

民法第709条不法行為は次のように規定します。「この資本主義自由市場社会にあっては基本的に個人・企業の活動の自由を保証しなければならない。自由な活動は社会の進展活性化に不可欠である。従って、故意または過失がないかぎり賠償の責めを負わせない。」こうして民法は個人の活動の自由を高らかにうたったのです。

ここで少し歴史をふりかえります。みなさんが既によーくご存知のとおり産業企業による水質汚濁、大気汚染などの「公害」環境汚染、航空新幹線騒音、広範囲かつ重大な健康損害をもたらす数々の薬害、アスベスト損害など、これらは企業の自由な活動の結果もたらされました。監督官庁の許可した企業活動のいわば許された危険から悲惨な重大な被害が生じました。これらの重大かつ広範囲の損害を当事者間だけの問題として民法709条にその解決を委ねておいてよかったのでしょうか。

甚大な被害者の救済のため加害企業への適正な行政規制など民法を超えて社会保障法、行政法、保険法など総合的な対策が迅速かつ強力に求められました。
残念ながらこれらはみな後手後手の混迷に満ちた事後対策に終始しました。その結果被害は拡大の一途でした。(どうして前もって予防出来なかったのでしょうか)

翻って労災、交通事故をみますとこれらの分野では、諸外国に先例もありまさに先人の叡智・先見性は遺憾なく発揮されました。予め広範な被害を予測し早期から諸対策とセイフテイーネットが周到に用意されました。そして安全衛生規則、道路交通法、道路法など行政諸規制にもいち早く手を打ちました。今日われわれはおおいにその恩恵に預かっております。あらためて先人に感謝したいと思います。
さて、ここまでお読みいただいて現在進行中の医療崩壊のなかで医療事故医療損害についても、いわば「コップのなかの嵐」だから医師と患者との当事者間に任せておけばよいといった安易な考え方が誤りであり、ますます医療崩壊を加速させているのだということがご理解いただけることとおもいます。つまりこの問題も同様に民法709条に放擲任せきっておいてよい問題、過失責任だけでよい問題ではないということです。
医療は、医師と患者との間の単なる商売ではありません。教育同様重要な国策。単なる経済・利益の追及ではありません。今更申し上げるまでもなく健康維持確保促進病気予防治療回復など生命身体・最高価値を追求するなくてはならない公共財です。
もうおわかりでしょう。過失責任の追及といった私人間の問題に放置しておけない国家的課題なのです。過失が無いのに「何故ワシガ払ワニヤーナランノカ」というような矮小化されるような問題ではないことがご理解いただけたことと存じます。
われわれは人類人間の叡智をもって、ここにあらたに「医療事故補償制度」を創設しようではありませんか。世界に先駆けて。孫からいいものをつくっておいてくれた。じいさんありがとうといわれたい。

再び本論に戻ります。ノーロスノープロフィットってなんですか。これは制度運営上のことです。労災保険、自賠責保険同様に余分な利益の追求はないということです。いただく拠出金(保険料などファンド)と支払い金がイーブンである(無論制度運営費初期費用など若干は必要)ということです。業務仕分けを受けても大丈夫どこからでもいらっしゃい明々白々の明朗会計を行うということです。おわかりいただけましたでしょうか。
次回は、第5回 具体的な制度制定プロセスと日程、それから残りの疑問点についてお話させていただく予定です。どうかよろしくお願いいたします。

(著者略歴)
一橋大学法学部卒(指導教官好美清光教授・堀部政男教授)、某保険会社勤務、聖マリアンナ医科大学病院勤務、如水会医療薬業研究会会員、「医療事故無過失補償制度をつくる会」事務局長兼推進員
(著者論稿)
「公害の私法的救済」「海外輸出製品に係る製造物責任の一考察」「被害者救済制度の課題」「薬品食品とPL」「医師賠償責任と保険の今後の在り方について」「賠償と保険」

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