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Vol.167 「お昼寝する子」は成績優秀? 注目の研究論文をママ医師が解説

医療ガバナンス学会 (2020年8月14日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2019年11月27日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2019112000051.html?page=1

Child Health Laboratory代表
森田麻里子

2020年8月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

お昼寝をしすぎると夜眠れなくなってよくない、というのはよく言われることです。赤ちゃんのときはもちろんお昼寝は必要ですが、3歳前後からお昼寝が必要なくなることが知られています。アメリカの2004年の統計では、1歳半~1歳11カ月の子では98%の子がほとんど毎日お昼寝をしていますが、3歳のときにはその割合は57%にまで低下しています。

日本では、3歳以上の子どもはお昼寝をすることで就寝時間が遅くなってしまうという研究もあります。例えば2011年には、3~6歳の幼稚園児と保育園児を同年齢同士で比較すると、保育園児の方が寝る時間が30分以上も遅いという調査結果が発表されています(※1)。このような研究結果から、子どもが成長したらお昼寝はなくしていくのが良い、というのが一般的な考え方になっています。現在では保育園でもその子の発達に合わせてお昼寝を調節してあげられるように、保育指針の記述が改定されました。4~5歳クラスの一律のお昼寝をとりやめる保育園も、少しずつ増えてきているようです。

しかし、お昼寝が文化として許容されている国では、様子が少し違います。シエスタといえばスペインが有名ですが、実は中国もお昼寝をする文化です。小学校でも長い昼休みが設定され、お昼寝をとる子どもも多いようなのです。今年春に発表された論文では、中国の小学校4~6年生の子どもたち約3千人を対象として、お昼寝と学業成績等の関係が調べられています(※2)。その結果、お昼寝を30分~1時間程度している子の方がおおむね成績が良く、幸福度も高く、問題行動も少ないことがわかりました。

この論文では、子どもたちの夜の睡眠時間はおよそ9時間~9時間半でした。さて、この数字をどう解釈したら良いでしょうか? アメリカ国立睡眠財団が発表している1日の睡眠時間の推奨は、6~13歳で9~11時間です。9時間~9時間半というのは、非常に少なくはないのですが、決して多いわけでもありません。30分~1時間のお昼寝を加えても、推奨時間内におさまります。では、夜に10時間寝てお昼寝をしなかったとしたら、成績はどうなるでしょうか? この研究から知ることはできませんが、興味深いところです。

日本では特に睡眠不足の子が多いという背景もあり、私自身は、小学生の子が日中に眠いなら、まずは夜の睡眠時間を増やしてほしいと考えています。昼行性の人間にとって一番大切なのは、夜に十分眠ることです。

しかし、夜の睡眠時間が変わらないのであれば、お昼寝をプラスするのは良いのではないかと思います。日本の小学生で言えば、塾通いでどうしても寝る時間が遅くなる子もいるでしょう。医師として、決してそれが良いと言うことはできません。しかし、保護者の方が、その子の人生にとって総合的にそれがベストと判断することはもちろんあると思います。そんな場合は、休み時間に10分でもお昼寝をすれば、多少ではありますが睡眠不足を補うことができるでしょう。

子ども本人の希望やお昼寝が可能な環境かどうかも関わってきますが、夜の睡眠時間が変わらない程度なら、お昼寝は精神面でも学業面でも良い影響があるかもしれません。

(※1)大井晴策, 福田一彦. 幼児の昼寝と生活習慣について. 日本家政学会誌. 2011;62(10):677-9.

(※2)Liu J, Feng R, Ji X, Cui N, Raine A, Mednick SC. Midday napping in children: Associations between nap frequency and duration across cognitive, positive psychological well-being, behavioral, and metabolic health outcomes. Sleep. 2019.

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