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Vol.193 顔面半分が真っ赤に「痛くてマスクは無理!」 それでもマスク着用が重要なワケ 

医療ガバナンス学会 (2020年10月1日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2020年8月26日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2020082400037.html

山本佳奈

2020年10月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

8月半ばを過ぎても全国各地で猛暑日を記録。最高気温が40度を観測した地点もあるほどの暑さとなっており、気象庁と環境省が連日、熱中症警戒アラートを発表しています。

炎天下の中マスクを着用している今年の夏は、肌荒れに悩まされているという方も多いのではないでしょうか?

先日、定期的に内科を受診されている方が、マスクではなくハンカチで目から下の部分を覆って診察室に入ってこられました。どうしたのですか、と尋ねたところ、「新型コロナウイルス感染が流行し始めてからずっとマスクをしていたら、梅雨頃からマスクで覆っている部分が真っ赤になってしまい、痛くてマスクをつけられなくなってしまった……」とおっしゃるではありませんか。

マスクで覆う目から下の部分は真っ赤に腫れてしまい、炎症が起きてしまっているのが一目瞭然でした。皮膚科にはすでに受診されていて、「接触性皮膚炎」と診断されたとのことでした。

私も、診療時や通勤中を含め、ほぼ一日中マスクを着用しているせいか、お盆明けごろから、マスクが触れるあたりの肌荒れが次第にひどくなりました。気がついたら、顎のあたりには汗疹(あせも)ができてしまいました。

医療用マスク(サージカルマスク)は鼻の形に沿って着用するため密着度が高く、使い捨てのため、感染予防の観点からは優れています。その一方で、サージカルマスクの内側は不織布が使われており、手触りはガサガサしているため、擦れることによる肌への刺激も大きいです。

結果として、真夏の外をほんの少し歩くだけで、マスクの中は熱気でこもり蒸れてしまい、また肌と触れている部分は擦れが生じて、肌トラブルが起きやすい環境であると言わざるを得ないのです。

こうしたマスクによる肌トラブルは、「接触性皮膚炎」と「にきび(ざ瘡)」が多くを占めています。「接触性皮膚炎」とはいわゆる「かぶれ」のことで、マスクが肌にあたり刺激となることで、炎症を起こしてしまうものです。肌の赤みやかゆみ、痛みを伴います。マスクのストラップのあたる耳の後ろの部分がかぶれてしまう方も、今年の夏は多いようです。

「にきび」は、毛穴に皮脂が詰まってふさがることで、アクネ菌と呼ばれる常在菌が過剰に増え、アクネ菌が皮脂を分解して皮膚に刺激を与える物質を作りだす結果として炎症が生じ、皮膚が隆起してくるものです。マスク内の温度と湿度が上がることにより、皮脂の分泌が増えるため、今年の夏は特に「にきび」に悩まされる方も多くなっています。

日本のように、新型コロナウイルス対策としてのマスク着用は義務ではなく任意としている国がある一方で、ニューヨーク州やワシントン州などアメリカでは公共の場でのマスクの着用を義務化が広がっています。フランスやイタリアなど欧州では、早い段階からマスクの着用を義務化している国もあります。

実際に、義務化による効果を示唆する論文も発表されています。アメリカのテキサスA&M大学のRenyi氏らは、イタリアでは4月6日に、ニューヨーク市でも4月17日に公共の場でのマスク着用が義務化された結果、イタリアでは4月6日から5月9日までに78,000人以上、ニューヨーク市では4月17日から5月9日までに66,000人以上の感染者数が大幅に減少したことから、公共の場でのマスクの着用がヒト同士の感染を防ぐための最も効果的な手段である、と主張しています。

つい先日、世界保健機関(WHO)は、18歳未満の子どものマスク着用に関する指針を発表しました。その指針によると、5歳以下の子どもはマスク着用を義務づけるべきではない、6~11歳については、地域での感染の広がりや、重症化するリスクが高い高齢者と同居しているかなどを考慮してマスク着用するかどうかを判断する、12歳以上の子供は大人と同じ条件でマスクを着用し、特に、他の人との距離が1メートル以上確保できない場合や、その地域で感染が広がっている場合には、マスクを着用すべきである、と助言しています。

一方で、WHOは、医療用マスクと布製マスクの使い分けについても指摘しています。医療施設での布製マスクの使用を評価した研究では、綿の布製マスクを使用している医療従事者は、医療用マスクを着用している人と比較して、インフルエンザのような病気のリスクが高いことがわかったことや、布製のマスクは医療用マスクと比較して隙間が大きいこと、さらに布製マスクの使用は効果についてエビデンスが乏しいことから、医療従事者の保護には適切ではないと考えられる、と指摘しているのです。

街中や車内でマスクを着用しない人を探すほうが難しいくらい、皆がマスクを着用するようになった一方で、マスクから鼻が出ていたり、顎を覆っていたり、頬のあたりに隙間ができているような方も多く見受けられるような気がします。

炎天下の中でのマスクの着用は、熱中症のリスクや肌トラブルの元になるので細心の注意が必要ですが、適切に着用できていなければ、そもそもマスクをつけている意味がなくなってしまいます。

サイズが自分に合っているか、マスクがずれてしまって鼻が出ていないか、頬のあたりに隙間はないか、など適切に着用できているかを今一度確かめる必要はありそうです。

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