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Vol.197 カンボジアの僻地の住民の間で蔓延する、非感染症性疾患

医療ガバナンス学会 (2020年10月7日 06:00)


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医師 小橋友理江

2020年10月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

途上国といえば、感染症や母子保健に関係した疾患が蔓延しているという印象を、カンボジアのサンライズジャパンホスピタルで働くまでは抱いていた。しかし実際は、非感染症疾患や高齢者医療が、カンボジアの首都においてはすでに大きな問題となっていたが、地方において、どのくらい非感染症疾患で住民が困っているかについては分からなかった。サンライズジャパンホスピタルの地域での活動の一環として、メコン河の中洲の島である、Kaoh Peam Reangにおいて、島民の無料検診を行った。その経験から学んだことについて報告させて頂きたい。

カンボジアはLMICsに分類される国であるが、都市部の発展は著しい。一方で、疾病構造は、感染症から非感染症生疾患や高齢者の医療へ、大きく変わりつつある。さらに都市地方格差が深刻な問題となってきており、タバコ・アルコール・家の中での固形燃料の使用・野菜や果物の摂取の低下などの非感染症性疾患のリスクファクターは、農村部の住民の間で特に深刻である事が報告されている。

Kaoh Peam Reangは首都プノンペンから86km南に位置し、約1,155人の住民が住む、7.14 km2の面積の島である。産業の主要なものは漁業と農業で、多くの住民の生活が貧困ライン以下である為、しばしば 社会奉仕活動の対象として選ばれる島である。島には公立の保健所が一つあるが、ほとんど機能していないという。本土への移動は船が必要など、生活が不便なのは否めないが、オーガニック野菜の栽培など、新しい取り組みも行われていた。

島民の無料検診は、有志のサンライズジャパンホスピタルのスタッフにより行われた。朝5時出発であったにも関わらず、数十名のサンライズジャパンホスピタルのスタッフが有志で参加した。島に到着すると、多くの住民が列をなして、無料検診を受けるのを待っていた。静かに待つ様子は、慣れている様にも見え、この様な機会を度々経験しているのだろう、と推測した。当日は体重・身長・血圧などの基本項目に加え、希望した住民には、医師の診察が行われた。208名の、健康に問題を抱えた住民が医師の診察を受けた。処方が必要な場合は、無料で内服薬や栄養剤が配布された。

医師の診察を受けた、Kaoh Peam Reangの208名の住民の間では、慢性の痛みが一番の問題となっていた。最も多かった主訴は、頭痛(18.3%)、腰痛(14.4%)、足と手の痛み(13.9%)、関節の痛み(10.1%)、呼吸困難感(10.1%)であった。80人(38.5%)の参加者が高血圧を患い、44人の参加者(21.2%)がBMI25を超えていた。飲酒と喫煙習慣は男性の間でより多く認められた。

このように、カンボジアの貧困地域であっても、発熱や咳などの感染症疾患よりもむしろ、非感染症疾患や高齢化に伴う不調などで、住民が困っている事がうかがえる。首都で診療していても、高血圧や糖尿病などの非感染症疾患、また変形性膝関節症や椎間板ヘルニアなどの患者が多く、この傾向は変わらなかった。

このように、農村部や貧困地域であっても、非感染症疾患の治療を十分に受けられるようにするべきである。カンボジアの農村部において、感染症疾患の周知やワクチンの普及に、政府や国際組織が力を入れている一方で、非感染症性疾患の患者の増加に対する準備は不十分かもしれない。例えば感染症性疾患のCOVID-19については、カンボジア政府はメディアなどを通して、COVID-19の予防法や注意点についての住民教育を十分に行い、今の所感染者数を抑えている。非感染症性疾患についても、医療者の教育と、住民の教育が十分に行われる必要があると思った。

今回、非感染症性疾患などで困っている住民の相談に少しでものる事が出来て良かった。また、無料検診自体が、良い思い出となった。参加したスタッフのチームワークの素晴らしさといい、社会の役に立つ事を目的とした仕事というものは、グループ全体の能力を最大化するものだと、改めて感じる事ができた機会であった。

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