医療ガバナンス学会 (2010年6月3日 07:00)
保険診療では、保険適用の検査や治療において、実施回数が多いことなどにより診療報酬の減額査定を受けることがある。この場合には、実施した診療に対する保険者からの支払額が減らされる。したがって、査定により減額された医療行為においては、診療報酬の支払いがあった部分となかった部分が共存することになる。これは、混合診療とはいえないのだろうか。
過去の保険診療に関する通達や事務連絡により、こうした保険の査定を受けた診療に関して保険診療を認める取り扱いの解釈があるのかもしれない。しかし、万一、査定により保険診療でカバーされない部分とカバーされる部分が共存した場合に混合診療と見なされるのであれば、患者の窓口負担が医療費の最高3割ではなく、10割と高いものについてしまう。こうなれば、査定による減額がない医療行為しか保険診療の対象とはなりえず、対象範囲は限りなく小さいものになってしまうはずである。
日本の健康保険制度は世界一のシステムであると筆者は考えている。アクセス制限がなく、医療費も各国と比較して安く、質も高いからである。混合診療を認めるかいなかは司法の場でも議論されてはいるが、健康保険制度を継続性のあるものにするためには、保険診療とは何か、保険外の診療とは何か、そして、両者が併存する条件は何であるかの定義が明らかでなければならない。診療報酬が減額された場合の保険診療と保険診療以外の併存を、健康保険法ではどう取り扱うのだろうか。詳細を読者の方がご存じであれば、お教えいただきたい。また、こうした定義がない場合、政治・行政がリーダーシップを発揮して定義付けをしてほしい。健康保険を維持するには、制度の透明性がなにより必要だからである。