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Vol.202 コロナと戦う「医療従事者のお母さん・お父さん」に目を向ける

医療ガバナンス学会 (2020年10月14日 06:00)


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この原稿は幻冬舎ゴールドオンライン(9月26日配信)からの転載です。
https://gentosha-go.com/articles/-/29280?per_page=1

ときわ会グループ
杉山 宗志

2020年10月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●医療従事者を悩ます「医療以外の問題」

コロナ対応は短期的に盛り上がる場面がある一方、医療現場では、長期化することを前提として試行錯誤の日々が続いています。これから秋冬にかけて、感染が拡大する可能性があります。乗り切るには医療従事者の負担を軽減しなければなりません。

業務の負担軽減策を進めるのはもちろんですが、それ以外にも方法はあります。たとえばコロナ禍で改めて重要性が高まっているものとして、子育て部門の支援が挙げられます。

筆者の所属するグループでは、子育て関連施設を運営しています。2つの保育園(事業所内保育事業と企業主導型保育事業)と幼稚園、それから小学生の放課後児童クラブです。医療従事者・介護従事者を確保するための方策の1つとして取り組んできたものです。

実際に、「子育て部門が充実している」という理由で入職を決めた職員も数多くいます。0歳から小学校を卒業するまで面倒を見ることができ、また最近では、中学生の指導もできる体制が整ってきています。

保育園を利用しているほとんどがグループ内の職員の子です。幼稚園や放課後児童クラブには、グループとは関係のない地域枠の子も混ざっていますが、やはり多くはグループ内の職員の子です。医療従事者、介護従事者が数多く利用しているのです。

今回のコロナ禍で、子育て部門はどのような動きをしたのでしょうか。コロナが猛威をふるい始めてからの経緯は次のようなものでした。
●「医療現場×子育て施設」コロナ禍で報道されない問題

まず2月27日、新型コロナウイルス感染症対策本部にて、全国の学校の一斉臨時休業を要請する方針が内閣総理大臣より示されました。これを受け厚生労働省は、保育園などの施設について、感染の予防に留意した上で、「原則として開所していただくようお願いしたい」としていました。いわき市では、小学校は3月4日から3月23日までを臨時休校とし、公立の幼稚園は通常通り開園することになりました。

たとえば当グループでは、すべて子育て施設を開きました。ただ、幼稚園や保育園への登園は自由としました。児童クラブについては小学校がお休みであることから、普段は放課後のみ開設していたところ、朝からの開設としました。市内の他の施設も、同様の対応が多かったようです。

そのまま春休みを挟み4月6日からは通常通りの登校となりましたが、4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大され、いわき市の小学校は、4月18日から、再度一斉休業となりました。幼稚園や保育園についても、市から臨時休園の要請が出されました。ただし、要請されている休園期間内でも、医療従事者や社会の機能を維持するために就業を継続することが必要な場合については、特例的に保育を行うこととなりました。

施設は医療従事者、介護従事者の子がほとんどを占めており、休園要請があったとはいえ、日中の活動内容は変わるものの、普段と変わらない体制で開設していました。当初、5月6日までとされていた休業要請でしたが、5月20日まで延期され、5月21日から段階的に登校開始、6月1日、通常通りの登校に戻りました。

実際の利用状況を振り返ってみると、自由登園としての開設でも休園要請中の特例的預かり保育でも、全体としては普段の3割程度でした。事業所内保育では普段約90名が在籍しているところ約30名、企業主導型保育では普段約15名のところ約10名、幼稚園では約100名が在籍しているところ約30名、児童クラブでは普段約90名のところ約25名が継続的に利用していました。この期間にこれだけ多くの子を預かっていた施設はめずらしく、市内の他施設では、要請通り休園にするか、数人のみの預かりとすることがほとんどだったようです。

医療施設、介護施設との連携があったからこその対応でした。ただ、子どもを預けることができて仕事を続けられるので助かるという声もあれば、感染のリスクをどう考えているのか、という声もやはり聞かれました。
●「医療に専念できる環境づくり」が求められている

利用する子どもの数が少なかったため、通常通りスタッフが出勤すると手が余ってしまいます。そこで、子育て部門の職員は感染対策で使う物品を手作りしていました。

具体的には、マスク、フェイスシールド、介護用エプロン、医療用ガウンなどです。使い勝手は専用商品には敵いませんが、物品調達の先行きが不透明だった中、非常に助かりました。また、病院入り口での検温を、手の空いた子育て部門のスタッフが担当することもありました。病院側職員の負担も増えているなか、とてもありがたいフォローでした。子どもたちも応援メッセージを作り、病院に寄贈しました。

コロナ禍で、医療施設や介護施設の職員の負担が普段より増えているなか、子育てのフォローがあることで働けている職員がそのまま働けるというのは、非常に大きな力となっています。医療を支えているのは医療従事者だけでありません。子育て部門も、医療の重要な要素の1つです。

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