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Vol.229 インフルエンザ予防接種をしません! 日本のワクチンへの信頼度は世界最下位レベル 

医療ガバナンス学会 (2020年11月10日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2020年9月23日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2020092200007.html

山本佳奈

2020年11月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

あと1週間もすると、多くの医療機関でインフルエンザの予防接種が始まります。今年は新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受けてでしょうか、「今まで接種したことはなかったけれど、今年は接種しようと思う」という声が多く聞かれます。昨年より、インフルエンザの予防接種の予約数も多いようです。

日本でも、接種希望者が増えると見込まれているインフルエンザワクチンですが、世界では様々な研究が進んでいます。例えば、インフルエンザワクチンの接種とアルツハイマー病発症率の低下の関連性が示唆されています。マクガバン医科大学のAlbert Amran氏らが、9066名の健康記録のデータを解析した結果、少なくとも1回のインフルエンザワクチン接種は、アルツハイマー病発症率の17%低下しており、年に一度、インフルエンザワクチンを接種することは、アルツハイマー病の発症率をさらに13%減少させることと関連していたというのです。もちろん、インフルエンザワクチンがアルツハイマー病を実際に防ぐのか、あるいは単なる交絡なのか、結論がでておらず、今後の研究が必要です。

一方で、「インフルエンザの予防接種を希望しません」という声も多く聞かれます。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛によって、小児の定期の予防接種率の低下や遅れが、日本小児科学会の分析によりすでに明らかになっていますが、多くの国でも、ワクチンの重要性、安全性、有効性に対する信頼の欠如が原因となって、接種の遅れや、接種を拒否される事例が増えていることが大きな問題となっています。

2019年には、世界保健機関(WHO)は、ワクチン拒否を最も心配な10の公衆衛生問題の1つとしました。今年の9月、インペリアルカレッジロンドンのAlexandre氏らによるワクチンの信頼度の世界的な傾向についての大規模調査の結果がランセットに報告されましたので、紹介したいと思います。なお、この調査は、2015年9月から2019年12月にかけて、世界149カ国の284,381人を含む290の調査から得られたデータを用いて行われました。

その結果によると、ウガンダは87%、米国も半数を超える61%がワクチンは確かに安全であると回答した一方で、日本では僅か17%のみがワクチンを確かに安全であると回答しました。ワクチンは確かに有効であると回答した割合も、小児にワクチンは確かに重要であると回答した割合も、日本は世界で最下位レベルでした。また、2015年11月と比較して、2019年12月時点で、ワクチンの安全性、重要性、または有効性に強く反対する回答者の割合が高い10カ国の一つに日本はノミネート。結果として、日本は世界でワクチンの信頼性が最も低い国の一つであることがわかったのです。ちなみに、この理由として、2013年にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的な推奨を控えたことが災いしているのではないかと、筆者は考察していました。

このようにワクチンの信頼性が低いと、たとえ、新型コロナウイルス予防ワクチンが開発されたとしても、普及しないでしょう。新型コロナウイルス予防ワクチンは、1日も早い開発を目指して世界中で開発が急がれ、臨床試験が行われている真っ最中です。そうした報道を受けてか、外来では、「新型コロナウイルスのワクチンができたら、先生は接種しますか?」と聞かれることがたまにあります。実は、新型コロナウイルス予防ワクチンを接種するかどうかの決め手として、「医師が推奨しているかどうか」が、ワクチン接種の決定において重要視する要因の一つであるようなのです。

オハイオ州立大学のPaul氏らが、2020年5月に2,006人の米国の18歳以上の成人を対象にオンライン調査を実施したところ、参加者の69%のうち48%は新型コロナウイルス予防ワクチンを間違いなく接種したいと回答し、21%はどちらかというと接種したいと回答していることがわかりました。また、ワクチンの接種を希望していた参加者は、希望していなかった参加者に比べて、ワクチンの効果や医師の推奨の有無、自身の健康状態などが、ワクチン接種の決定に重要であると示す傾向が強かったことがわかったといいます。

また、「2020年末までに新型コロナウイルス 予防ワクチンを接種する機会を得られると思いますか?」という問いが世界27カ国、2万人近くの対象者に対して行われたところ、世界の74%がワクチン接種を希望したのに対し、日本はなんと22%。中国では97%がワクチン接種を希望していた一方で、ドイツ(24%)やベルギー(23%)、ポーランド(22%)は日本同様にワクチンに対して懐疑的な態度であることがわかりました。

とはいえ、新型コロナウイルスには確立した治療法は依然としてなく、ワクチンも開発途中です。いま、私たちができることは、すでに行っている手洗いやマスクの着用に加え、インフルエンザウイルスに対する予防、つまりインフルエンザの予防接種を受けることが私たちにできる最大の備えであることには間違いないでしょう。

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