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Vol.256 サイエンスミステリー小説『モテ薬』著者インタビュー(前編)

医療ガバナンス学会 (2020年12月23日 06:00)


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コメニウス大学医学部6年生・医療ガバナンス研究所インターン
妹尾優希

2020年12月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2020年9月に発売されたサイエンスミステリー小説『モテ薬』(小学館)。誰もが欲しがる奇跡の薬が開発できるというネイチャーの論文は、一時は世紀の大発見と称され、一世を風靡します。ところが一転、研究不正疑惑が持ち上がり、日本中が大騒ぎに。発見者は名門大学医学部に所属する、美貌の女性若手研究者の水澤鞠華。モテ薬は本当にあるのか、ないのか?

著者の旺季(おうき)志ずかさんは、『ストロベリーナイト』、『Wの悲劇』『屋根裏の恋人』など誰もが知るテレビドラマの脚本家です。本書の執筆の背景や込められたメッセージについて医学部生の立場からインタビューしました。

◆小保方晴子さんに取材されたのですか?!

妹尾:物語は、「モテ薬」の論文を発表した医学部研究室の主任教授の変死から始まります。ライバル教授、共同研究者、投資する製薬会社関係者、主人公・水澤の出身女子校の同級生など事件関係者やその周辺人物のインタビューをする科学誌の女性記者の視点から、次々と壮絶な周辺事情が明かされていきます。読んでみると、ラストまで文字通り「モテ薬」の世界観の魅力に引き込まれました。

小説では、新薬を巡る論文不正、捏造疑惑、大学研究室内外の人間関係、出入り業者と研究者の利益相反など、現代の医療研究界隈の問題がリアルに描かれています。特に、記憶に新しいSTAP細胞事件がモチーフになっていることに気付きました。

ご著書を読んでいて、上司の変死だったり、リケジョの星でもてはやされた後のネイチャーの論文取り下げ、あのときの記者会見のシーンだ!と感じたりと、実際の事件とかぶる部分が多々ありました。関係者の取材はどこまでされたのでしょうか?

旺季:まず、そもそもこの本は、STAP細胞事件に刺激を受けて、というよりも、知れば知るほど小保方さんっていう人間にすごい興味を惹かれて書きました。(本作を執筆するにあたって)STAP細胞について調べたり、その関係者に当たったり、その他にも別の分野の研究をされている方にもお話をうかがいました。関係資料を読みこんで、そこから全くのフィクションのミステリー小説にしたので、かなり取材はしましたね。

妹尾:小説執筆のための取材の仕方についてなど、私はよく分からないのですが、どのようにしてSTAP細胞の関係者につながったのでしょうか。

旺季:若山照彦教授には直接取材は受けていただけなかったのですが、お手紙を書かせていただいたりしました。小保方さんには、彼女が執筆された手記『あの日』の出版社の関係者を辿ってコンタクトを取りました。

妹尾:ずばり、小保方さんとは実際にお話されたのですか?

旺季:小保方さんとは直接は話していません。代理人の男性の方にお目にかかったのですが、「小保方の味方をしていただけるのであれば取材を受けます」と言われまして。小保方さんの味方をして物語を作るっていうのは、作家として窮屈な感じがありましたし、あくまでも中立な立場で書きたいと思い、会わない選択をしました。

私にとって、STAP細胞があるかないかは、正直どっちでもよいのです。現在取材をした結果からも、あるともないとも言えないので、私がそんなの味方はできません。(小保方さんに)すごく会いたかったですし、今でもお会いしたいですけどね。

妹尾:資料の読み込みをされたり、関係者と取材を重ねたりされたそうですが、それでもあんなに細部まで科学的な話、サイエンスとして実際にありそうなお話を小説に盛り込めるのはすごいと思います。旺季さんは元々理系の専門を学ばれていたのでしょうか?

旺季:いいえ!!医学部とかではもちろんないですし、理系でもありません。ただ、テレビドラマでいろんな脚本を書いてきて、様々な職業の世界を取材したことがあります。また、今回のモテ薬では、妹尾さんと同じ医療ガバナンス研究所の谷本哲也先生にも、医学的な見地からSTAP細胞のことを取材させていただきました。

妹尾:なるほど!!そこで谷本先生に繋がるのですね。私も医学論文の指導でお世話になっている先生です。だから、今回のモテ薬のテーマの一つとして扱われていた製薬会社と研究者・医師の利益相反(COI)問題に関する詳細が書かれていたのですね。エンタメドラマを見る感覚で読んでいたのが、『ディオバン事件』*や『COI』の文字が文中に出てきた時、急に緊張して背筋がピーンとしてしまいました。(後編に続く)

*ディオバン事件
日本だけで1兆円以上も売れた高血圧治療薬ディオバン(一般名バルサルタン)に関わる臨床研究論文不正事件。日本各地の5つの大学(京都府立医科大学、東京慈恵医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学)の医師らが臨床研究を行い、国際的な医学論文でディオバンが効果的に血圧を下げるだけでなく、血管障害の予防にもなると発表した。しかし、後に研究不正が発覚し、上記の5つの大学で発表されたディオバンに関する論文のすべてが撤回された。さらに製薬会社元社員が逮捕されるも、一審二審は無罪、最高裁で係争中。

インタビュアー紹介
妹尾優希
東欧スロバキアのコメニウス大学医学部6年生。英語で医学を学ぶ。2年時より医療ガバナンス研究所で学生インターンとして論文発表にも取り組む。昨年から、製薬会社と医師の利益相反に関する研究チームに加わる。第一著者として、2019年に公表された『高血圧治療ガイドライン2019』の著者の利益相反について調査した論文を投稿中。

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