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Vol.003 民間救急病院院長の憂鬱

医療ガバナンス学会 (2021年1月5日 06:00)


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都内民間病院院長 匿名

2021年1月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

当院は都内にある民間の救急病院である。駅前にあるため地代が高く、経営のため病室は最低限の広さとし最大限の病室数を確保している。
民間病院は地域医療構想による急性期病床削減と診療報酬改定で経営的余力は無い。余剰スペースなどあり得ないのだ。

先週土曜日の昼に濃厚接触者が発熱で受診した。PCR希望であったが担当医はPCR検査に加えCT検査と採血を行った。
胸部CTではわずかだが肺炎像を認め、炎症反応が増加していたが白血球数は正常であった。新型コロナ肺炎を疑い抗原検査を追加したところ陽性と判明した。
この時点で通常回線からひまわりに連絡したが通話もなかなか出来ず保健所への発生届は遅れた。
酸素飽和度は93%~96%と変動があったが酸素吸入は不要であった。しかし70歳以上の高齢者で大腸癌に対し抗がん剤治療中であったため悪化リスクが高いと判断した。
当院では人工呼吸管理が可能な個室が無かったため転送が必要と判断し、重症患者治療が可能な病院に当院から連絡した。
しかし受け入れ先は見つからなかった。週明けまで当院で経過を見ることにし入院治療を開始した。2時間後、発熱とともに酸素飽和度が85%を切るようになった。
直ちに酸素吸入を開始しデカドロン、アビガン、ナファモスタットを投与した。転送先を探しつつ緊急事態として狭い病室で人工呼吸管理を行うべく準備した。
この個室では人工呼吸器は置くことが可能だが看護師1名しか入室出来ず細かな処置などは行えない。しかし当院にはこの個室しかなかったのだ。
転送先はなかなか見つからず、担当保健所の協力のもと何とか夜遅く転送となった。

その前の週にも同様の厳しい状況があった。
患者の年齢は60歳未満だが糖尿病等の基礎疾患を持つコロナ肺炎患者を受け入れた。
入院時酸素飽和度97%と正常範囲だったが夜間に低酸素状態となった。自力では転院先が探せず、保健所の協力のもと夜半に転送可能となった。

今、保健所から年末年始は夜間の転送は困難であり、抗原陽性患者でも同日は自院で入院させ翌朝に転送依頼をかけて欲しいと言う依頼が来ている。
我々も厳しい現状は理解しているので協力したいと思っているが実際には本当に厳しい。
我々の病院には広い個室は僅かしかない。その病室には入院患者が入っているが患者にお願いして病室を開ける以外に受け入れる方法は無いのだ。
広い個室は個室料金を高く設定している。これをコロナ専用に変更しなければならないことは経営を考えると民間病院には非常に厳しい。
個室料金など不要な公的医療機関と異なり、我々には個室料金でさえも重要な収入源なのだ。
我々も公的病院のように協力したい。しかし経営不可能な状況を作ることは民間には出来ない。
ハードウェアが無い民間病院に公的病院同様の協力を依頼されても、経営破綻を来す選択は取りえないことを理解して欲しい。

12月29日

 

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