医療ガバナンス学会 (2021年1月28日 06:00)
この原稿はAERA dot.(2020年11月18日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2020111600044.html?page=1
山本佳奈
2021年1月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
私も、そんな一人です。コロナが流行し、休日に外出することも一切なくなってしまい、通勤で歩く程度になってしまいました。「このままでは、ますます体重が増えてしまう」と危機感はあったので、ヨガを自宅で行うものの、リフレッシュにはなるけれど体重は次第に増えていきました。
今年の7月末のことでした。クリニックを受診した際に採血をしたら、なんとコレステロール値が正常値を超えているではありませんか。大学生の頃から高めだったので気にしなかったのですが、9月末に再度採血したところ、さらに値が上昇。これはまずいと思い、興味のあったピラティスにトライすることにしたのです。
「ピラティス」とは、ジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスが開発したエクササイズです。もともとからだが丈夫でなく、喘息やリウマチ熱など病気に悩まされたピラティス氏は、病弱な自分を鍛えることに興味を抱き、体操・ヨガなどありとあらゆるジャンルのスポーツやエクササイズを積極的に試し、自身のからだをどのように強くしたらいいかという研究を続けたといいます。第一次世界大戦の際、ドイツ人の従軍看護師として負傷した兵士のリハビリを行っていた時には、からだを自由に動かせない負傷して兵士でもベッドに寝たまま、短時間で効果的に運動不足を解消できるエクササイズを考案しました。これは、マシンピラティスの種類の一つであるベッド型の器具の基礎になったと言われています。
第一次世界大戦後、米国に渡ったピラティス氏はニューヨークでスタジオをオープン。彼のエクササイズは、次第にアスリートやダンサーに認められるようになり、ビジネスマンや医師、音楽家や学生など多くの人に愛されるようになりました。同時に、弟子への指導も熱心に行なった結果、弟子たちが世界中でピラティスを広めることに繋がり、さらにはリハビリから、アスリートまで幅広いニーズにこたえることができるようピラティスは発展を遂げて、今に至るというわけです。
ピラティスの様々な効果については、ランダム化比較試験が行われ、論文として発表されています。例えば、トルコのイスタンブールメディポール大学のEsraAtilgan氏らが肩に痛みのある患者に対するピラティスの効果を確かめた報告によると、ピラティスを行う群とストレッチなど従来の運動を行う群に分けて週5日間の計10日間のエクササイズを行なったところ、ピラティスを行なった群は肩の痛みや痛みによる障害を軽減・改善を認めたと言います。
また、トルコのパムッカレ大学のRaziye氏らが座りっぱなしの肥満女性の体組成に対するピラティスエクササイズの効果を調査した結果によると、週3回の8週間のピラティスを行う群といかなる運動もしない群(対照群)に分けて体組成の変化を確認したところ、ピラティス群では、体重・BMI・体脂肪率・ウエストや腹部、ヒップ周りの長さがトレーニング後に有意に減少し、対照群では腹部と股関節の長さが有意に増加したと言います。
幸福度とうつ病に対するピラティスの影響を調査した論文もありました。イランのラフサンジャーン医科大学のAli氏らが62歳以上の高齢の女性を対象に毎週3回、8週間ピラティスを行う群と対照群に割り当て、介入から1ヶ月後と2ヶ月後に評価したところ、平均幸福度は対照群と比較して有意に増加し、抑うつ度のスコアは対照群と比較して有意に改善したことがわかったのです。
ピラティス氏は、「10回で違いを感じ、20回で見た目が変わり、30回で身体のすべてが変わる」という言葉を残しています。ピラティスを始めた当初は半信半疑でした。最初はマシンの操作になれるのも難しかったのですが、10回ほどピラティスのレッスンを受けたあたりから、肩こりがなくなりました。そして、15回ほどしたあたりからでしょうか、前傾だった姿勢も改善されてきました。有酸素運動もしたくなり、今では毎日30分程度ですが、ウォーキングも始めました。そのおかげもあってか、冷えを感じることは少なくなり、身体が軽くなってきた気がします。
「身体のすべてが変わった」と感じるまで、ピラティスを含めた運動習慣を続けてみたいと思っています。