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Vol.023 民間病院が8割、医療崩壊の原因と必ずしもいえない

医療ガバナンス学会 (2021年2月3日 06:00)


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わだ内科クリニック
和田眞紀夫

2021年2月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1.日本では民間病院が8割で、コロナ診療にあまり寄与していないことが問題の本質なのか

日本医師会が2021年1月20日付で、声明を発表しました。
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20210120_1.pdf
その中で、「日本は諸外国に比べて病床数が多いにもかかわらず、なぜ『医療崩壊』が進んでいるのか」という疑問に対して病床数に関する説明をしています。要約すると、総病床数に精神科領域病床が含まれていること、急性期病床にはリハビリテーション病床が含まれていること、日本では長期居住型病床(介護老人施設)が少ない分を病院の療養病床が補っていることなどを挙げています。

この声明の中では書かれていませんが、日本は世界でも類を見ない高齢化社会(高齢化率25%)であることを考えるとその受け皿として必要な病床なのかもしれません。また、日本の民間病院の多くが中小病院であり(全体でも200床未満の病院が7割)、コロナ診療に適していないという事情もあります。
https://nk.jiho.jp/sites/default/files/nk/document/import/201106/1226556299727.pdf

さらに、この声明で欠けていることに民間病院と公立病院の割合の問題があります。「日本では病床数が多いうえに民間病院の比率が8割で、そこでコロナをあまり診ていないことが問題だ」と一部のメディアや経済学者などが指摘しています。この問題について舛添要一さんが記事を書かれていて同様の指摘をされています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/121e27e98c2d16bd69b0e2a6bdda4a9d2a2157ca
記事の中で、「人口1000人当たりの病床数は、日本13.0、韓国12.4、ドイツ8.0、フランス5.9、イタリア3.1,アメリカ2.9、イギリス2.5である。・・・東京の病院の89.1%は民間病院であり、病床数で見ると77.8%が民間である。したがって、民間病院の活用ということになる。」と書かれています。

東京では公立病院の病床が22.2%ということですが、全国レベルでみても28.6%という報告があります( https://www.soumu.go.jp/main_content/000501361.pdf  )。
そうすると日本の公立病院の病床数(人口1000人あたり)は単純計算では最低でも13.0の22.2%で2.88となり、アメリカ2.9と遜色なく、イギリス2.5より多いことになります。つまり日本の公立病院の病床数は絶対数で見る限り決して少なくはなく、単純に日本は民間病院の割合が8割でそこであまりコロナを診ていないから医療崩壊が起きていると簡単には結論することはできません。つまり公立病院であってもさらにコロナ病床を増やす余力が十分あるはずだということです。とくに「へき地における医療や、救急・災害・周産期などの不採算・特殊部門に係る医療の多くを公立病院が担っている」( https://www.soumu.go.jp/main_content/000501361.pdf  )と言うように、緊急事態下において臨機応変に動くことができるのはむしろ公立病院なのです。

2.これまで感染症指定病院にだけコロナ患者さんが集約されてきた理由

春ごろから筆者も言い続けているのですが( http://medg.jp/mt/?p=9551 )、
そもそも感染症法の2類扱いだからいけないのです。この法律では新型ウイルス感染者は完全隔離しなければならず、感染症指定医療機関に入れなければいけないのです。つまり、他の病院には入れておいてはいけなかったのです。しかしすぐキャパシティーがいっぱいになってしまって、仕方なくなし崩しでホテル療養や自宅療養でもいいと認めたのですが、その時点でもう(危ないウイルスなら)隔離するという法律の趣旨が守られなくなっているわけです。

「大したウイルスではないから5類にしてしまえ」という乱暴な意見が横行していますがそうではなくて、危険なウイルスであっても世の中に蔓延してしまってからは、もう施設隔離という方法は使えないということです。でもかなり危険なウイルスなので、それを一般病院で診るならそれなりの対策をしなければ危ないと思います。しかし行政は、民間病院や診療所にコロナを診るように依頼するだけで、安全対策を何もやらないのです。それでは危なすぎてコロナ患者さんは診られません。

行政が医療機関の安全対策を全くとってくれないので、自分らで対策を立てて何とかしているのが現状です。コロナを診る医療機関が増えなくても仕方がないでしょう。診察や検査時のアクリル製隔壁板をすべての診療所に配布すべきだし、医療従事者のPCR検査を毎日でも無料でできるような制度を作べきです。ドイツでは普及に努めているN95マスクなどもいまだに全く手に入りません。これを無視して安易にコロナの患者さんを診たら、一定数の高齢医師がコロナに感染して命を落とすでしょう。

開業医10万人の平均年齢はちょうど60歳で、半分近くは高齢者です。これは日本が世界に例を見ない高齢化社会(高齢化率25%)になっていることを反映しています。実際、初期の武漢や欧米、最近ではインドネシアでも医師が命を落としています。さらに中小病院のクラスターが多発して入院患者さんが亡くなるでしょう。今でも指定病院で亡くなる人の数よりも指定病院に入れずに亡くなられている人の方が多いのではないでしょうか。この辺は統計に出てきません。初期のイタリアでも病院に入れずにコロナの診断さえつかずに亡くなられた人が大勢いたのです。一番重要な対策は、高齢者や福祉施設、中小病院での感染蔓延を防ぐことなのです。それが行政もメディアもわかっていません。

3.最後にワクチン接種の問題点について

多くの人にワクチン接種をするのは大変なことですが、それぞれのひとのコロナワクチンの必要性とか、いくつかあるうちのどのワクチンをいつ接種するのがいいかとかはあまり議論されていません。コロナに感染した人も半年で免疫がなくなるといわれていますが、ワクチンだってどのぐらい効果が持続するのかは全くわかっていません。来年の冬の大流行に備えるなら、秋以降に接種すべきなのではないでしょうか。欧米はとにかく今の流行を止めたいから今ワクチンを接種しているのです。現在欧米ほどは感染が拡大していないアジアでは 流行が沈静化した夏にワクチン打つよりも、秋の方がいいかもしれないのです。早く打てばいいというものでもなさそうなので、このあたりの説明もきちんとしていただきたいものです。

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