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Vol.029 新型コロナワクチン集団接種訓練(上)見学・取材の記録

医療ガバナンス学会 (2021年2月8日 06:00)


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ロハス・メディカル専任編集委員
堀米香奈子

2021年2月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

[お詫びと訂正]
先に配信した、新型コロナワクチン集団接種訓練(上)(下)で、厚労副大臣と川崎市長のお名前が入れ違いになっていました。お詫びするとともに、訂正記事を再配信いたします。

1月27日、厚生労働省と川崎市の主催で「新型コロナウイルスワクチン接種会場運営訓練」が実施された。一般非公開で、報道関係者は事前申し込み制となっていた(厚労省のホームページ上にも告知等はなし、1月13日には開催予定がメディアで報じられた)。前々日になって詳細スケジュール等が返送されてきたので、電車とバスを乗り継いで出かけて行った。

同日、河野太郎規制改革担当相が、65歳以上の高齢者の接種開始は「早くても4月1日以降になる」との見込みを明らかにした。当初は3月下旬からとされ、早々に会場を押さえる必要があると考えられていただけに、ズッコケた自治体担当者も多かったのではないだろうか。

それでも、準備期間を考えれば、担当者としては早く情報が欲しいことと思う。1月13日の報道では、「訓練の様子は映像で記録され、厚生労働省が訓練の成果や判明した課題などを全国の自治体に伝えることになっています」(NHK)となっていたが、まだその様子はない。(2月6日現在)

そこで上下2回に分けて、集団接種運営訓練について報告しようと思う。今回は、訓練の概要と見学・取材メモをまとめておきたい。自治体や病院関係者など集団接種の運営主体となる方々に、少しでも参考にしていただける部分があれば幸いだ。
【配布資料より抜粋】

●名称
新型コロナウイルスワクチン接種会場運営訓練

●訓練主催者
厚生労働省、川崎市

●開催場所
川崎市立看護短期大学 体育館
http://expres.umin.jp/mric/mric_2021_029.pdf
(会場の様子)

●訓練内容
集団接種会場の設営及び運営(受付・予診・接種・観察・ワクチンの取扱い等)

●主催者挨拶
厚生労働省 山本博司 副大臣
川崎市 福田紀彦 市長

●囲み取材対応者
厚生労働省 山本博司 副大臣(欠席)
川崎市 福田紀彦 市長
川崎市健康安全研究所 岡部信彦 所長
川崎市立看護短期大学 坂元昇 学長(川崎市健康福祉局医務監)
【見学・取材メモ】

以下、名前の後に()で発言者を示した。(田)は川崎市健康福祉局・田崎担当理事、(福)は福田市長、(坂)は坂元学長、(岡)は岡部所長による。なお、坂元学長は厚生科学審議会予防接種基本方針部会委員を、岡部所長は内閣府参与を、それぞれ務めている。()書きのないものは筆者による。

●被接種者の基本動線
入口⇒受付(予診票受け取り、3人体制) ⇒予診票の記入・待機所⇒予診票確認(4人体制)⇒予診待機所(誘導スタッフ1名)⇒予診(3室、医師各1名)⇒接種待機所(誘導スタッフ1名)⇒接種(2室、接種担当の看護師が各1名、経過観察看護師が2室で1名)⇒接種済証※発行(2人体制)⇒接種後待機所(15~30分、看護師1名)⇒出口

※被接種者の持参する接種クーポンに、バイアル等のワクチン情報の入ったシール貼付けることで、接種済証となる。接種時刻の手書きメモ(待機時間の目安のため)を添えて被接種者に渡される。

●会場設定と人員配置について
・会場は奥行が「123歩」(田)と、体育館としては小さめ。バスケットコートが1面取れるだけの広さ。
・「思ったより小さい、ちゃちな施設」と思ったかもしれないが、どこの市町村でもできる標準レベルの訓練、ということ。(坂)
・体育館だったら何でもいいと思われるかもしれないが、小中高校の体育館は通常の授業で使う。いったん接種が始まれば、少なくとも半年など長い期間使わざるをえない。教育で日々使うような体育館等は使えないだろう。(坂)
・被接種者の動線(入口から出口まで)の長さは、98m。(田)
・会場スタッフは医師3名、看護師5名、事務方16名。訓練には20名の高齢者が被接種者役のエキストラとして参加。認知症などの設定を演じる人も。(田)
・救護室(看護師1名)、ワクチン調整場所(看護師1名)、ワクチン保管場所(ディープフリーザー設置、ファイザーより担当者派遣)が、被接種者動線と別に設置されている。
・被接種者は、会場手前で非接触体温計により計測、入口で手指消毒し、受付。
・予診ブースや接種ブースの出入り口、通路幅は、車椅子対応サイズ。付き添い者も想定。(田)

●感染対策について
・3密感染対策としては、換気、椅子の左右前後に間隔を充分とる、スタッフは不織布マスク着用、予診票チェックのテーブル(対面)は2列使って距離を取る、各被接種者への対応が終わるごとにスタッフは手指消毒、被接種者は入場時に検温と手指消毒など。(田)
・密を避けるため、待機場所等に設置された椅子の間隔は、前後左右1-1.5m。(田)
・古い施設の方が換気しやすいところが多い(窓などが多い)、との認識はある。(田)
・欧米ではオープンスペースで接種を実施しているが、プライバシーへの配慮が必要。そこで今回はパーテーションなどで工夫している。(岡)

●タイムマネジメントについて
・この規模の会場で、予診に各3分50秒、接種に各3分20秒、全体として1時間に30接種を想定して会場設定した。(田)
・本日の実測値では、会場に先頭で入った被接種者の所要時間(入口から、接種後待機所の手前まで)は計13分だった。人が溜まってくるとその倍の26分かかった。(田)
・被接種者は、予診で医師に色々な質問をしたいもの。今日は模擬患者だったが、それでも「アレルギーが怖いんですね」とか、接種に関わる基礎疾患項目などと違うことまで、延々と質問が続いた。現実の会場ではさらにアレルギーの質問などが多発し、流れが止まるのではないか。(坂)
・不安から、たくさん質問が来るのを、どうやって調整するか。予診の手前に相談コーナーなど設ける必要があるかもしれない。(坂)
・実際の接種では、基本は8時間稼働を原則に、現場の実情に合わせて調整する。(田)
・医師を倍にしたら時間が半分になる、というものでもない。スピードとクオリティはトレードオフだが、安全確実が基本。(田)
・ゆくゆくは被接種側の事に合わせて、接種スタッフの配置の調整を行ったり時間区分を設けたりするかもしれない(一般向けに接種が開始され、会社勤めの人が多くなったら夕刻以降を厚くするなど)。(田)

●副反応について
・副反応はやはり100%起きないわけではない。相談センターが必要だが、それを国がやつかどうか。ただ、集約することは必要で、そこは国に提言したい。(岡)
・会場での「医療行為」は想定していない。ただし、アナフィラキシーへのアドレナリンなど最低限の応急処置は当然行う。(岡)
・安全性については、血管迷走神経反射への理解と対応、アナフィラキシーはすぐ対応すれば大丈夫、ということを強調したい。(岡)
・帰宅後の副反応への対応については、接種者に連絡先を伝える。市のホームページなどでもお知らせする。(田)

●今回の経緯と今後の課題など[主催側の見解]
・川崎市は新型インフル等に関しても、ブラインド感染症患者対応訓練(疾患名も含め患者想定は、模擬患者役以外には明らかにせずに実施する訓練)を実施してきた。新型コロナワクチン接種に向けては、今年1月1日に、健康福祉局と危機管理部署の合同チーム10-15名を立ち上げた。だんだんチームの規模は大きくしたい。ただし、スペース借り上げ等はこれからの課題。(福)
・新型インフルエンザの研究班でシミュレーションは何度かやっている。各自治体で一度はやっていただいて、実情に合わせて調整するといい。そのプロトタイプと思っている。(岡)
・医師の配置やリクルートは、医師会や大学病院と相談しながら進めたい。医療従事者全員が今コロナを見ているわけではないので、交代などで応援に入れるか、求めたい。(岡)
・接種の進み具合は、どうしても数字(接種率や接種済数など)が出てくると地域ごとの競争のようになるが、そういう性質のものでないことも強調したい。(岡)
・接種実績と費用が見合うかどうか、国による統一価格(1接種当たり2000円)で賄えるかどうかは会場設定次第。公共施設かどうか、規模、人件費、会場ごとに追加で必要な設備などによる。(田)

●その他、観察されたこと
・筆者が計測したところ、ある被接種者の予診所要時間は約2分超、終了後に次の人が予診ブースに入るまで30-40秒だった(スムーズな例)。
・一方で、誘導ミスで違うブースに入ろうとした人や、予診中に医師がブースを抜け出して隣の医師に相談する場面も。そうした事情から長めの人は4-5分かかっていた。
・ある被接種者役の男性の例。予診の終盤、予診票に接種意思確認のサインする直前で「鯖アレルギーがあるので心配です」「いつも飲んでいる薬は影響ないですか」「イギリスで蕁麻疹だかなんだかの話があったので心配です」と言い出した。結局そこからプラス3分ほど、合計で予診に約6分かかった。
・持ち場の決まっていないスタッフは誘導の補助を行っていた。それでも、予診誘導係が予診ブースの空きにずっと気づかず、医師が待ちぼうけするシーン等もあった。
・接種済証の発行では、多くがスムーズに進行した。一人当たりの所要時間を計測したところ、約2分程度だった。
メモは以上だ。取材を通じて、予診や接種の場面における律速要素や、ファイザー製ワクチンの特殊性、副反応・有害事象への対応などの課題が見えてきた。集団接種というほぼ未経験のプロジェクトを、感染対策を徹底しながらいかに円滑に遂行するか。疑問や課題については追加取材を行ったので、(下)で紹介する。

なお、私の撮影した写真や動画は、公開を想定して撮影していなかったため、多くの個人が特定できる形で写り込んでしまっていること、資料としては内容が不十分なことから、ここでの公開は控えたいと思う。もしご要望があれば、MRIC編集部に問い合わせていただければ一部加工の上、転送・公開禁で提供したい。

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