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Vol. 216 記事:夕張・村上医師「なぜ私は救急患者の受け入れを拒否したのか」

医療ガバナンス学会 (2010年6月21日 07:00)


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各新聞社へお願いしたいこと

北海道大学整形外科学講座 遠藤 香織
2010年6月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

以下の記事を読み、今回皆様にお伝えしたいこと、『この記事を読んだ若い世代の人間が何を思うか』を直接上の世代に知ってほしいと思います。その上で、もう一度この記事について考えてほしいと思いました。

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北海道新聞社:救急受け入れ、また拒否 夕張市立診療所 心肺停止の男性(06/02 07:40)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/234651.html

【夕張】医療法人財団「夕張希望の杜(もり)」(村上智彦理事長)が運営する夕張市立診療所が5月、自殺を図り心肺停止だった男性の救急搬送受け入れを断っていたことが明らかになり、夕張市の藤倉肇市長は1日、医師の村上理事長から事情を聴いた。男性は市内の別の診療所に運ばれ、死亡が確認された。

関係者によると、5月19日朝、同市内で首つり自殺で心肺停止となった患者がいると通報があり、救急隊は最も近い市立診療所に受け入れ要請を行ったが、村上医師は4月から常勤医師が1人となったことや、ほかに外来診療があることを理由に断ったという。

市立診療所は昨年9月にも、心肺停止の患者受け入れを断った経緯があり、市と協議した結果、心肺停止患者の原則受け入れを確認し、5月上旬の別のケースでは受け入れた。

藤倉市長は1日、夕張市役所で記者会見を開き、「昨年9月の事故を受け、二度とこのようなことがないようにと協議してきたので、今回のケースは誠に遺憾だ」と述べた。

村上医師は市に対し、「首つり自殺と聞いて緊急性が低い死亡確認のケースと判断した。常勤医が自分一人なので外来などに対応しなければならなかった」と話しているという。

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地域医療を実践するロールモデルとして有名であり、信念を持って走り続ける村上医師。以前よりずっと当直を毎日続け、妥協しない診療を継続されている医師として学生から見る彼の姿は地域医療への挑戦者として目指すべき目標の一人です。薬剤師であったときの経験も生かして、いらない薬品の処方を決して行いませんでした。また、瀬棚町診療所長を行っていたときには、肺炎球菌ワクチンの実践で予防医療により、医療費抑制へと貢献したとも言われています。しかし、その陰で村上医師がどのくらい過労していたのか、どのくらい時間外勤務を続けていたのか、想像を絶するものがあります。

そんな医師が救急を受けるには資金も人材も不足している旨を訴えながらも、受けざるを得ない毎日を過ごし、その末に、自殺を図った心肺停止患者を断ったことが今とりざたされています。

この問題は大きな問題を含んでいるように考えられます。現在の財政と規模ではいくら村上医師のように良心のある医師が活躍したとしても、24時間365日対応の救急もできる診療所には一人医師勤務の場合には実行不可能である。このことは、どの地域でも同じように問題として取り上げられていると思います。

私はこの記事で同新聞社が何をしたかったのかを問いたいです。誤解があるなら早く続報をしっかりとした形で出してほしいです。問題の本質を報道してほしい。それは違う新聞社にも等しく呼びかけます。(知りませんでしたが、道新以外でも多くの新聞社で報道されていました。)

北海道の医療は一蓮托生であり、がんばろうとする気概のある病院、診療所が一つでも欠けると周囲の医療機関に波紋がすぐ広がります。夕張が病床を減らしたことで診療所にも患者が流れ込みました。そのたびに、私達も危惧を感じていくこととなります。法律で決まっているとか契約で決まっているとか、そういう次元の問題ではなくて、自分と同じ土俵にある問題です。

私は夢を見たいわけではなく、絵空事をのたまうのではなく、今できることを実行していきたいと思っています。この記事は続報がなければ、事実であろうと『ただの駄文』です。駆け出しの地域医療志願者である自分がそのように感じたことを報道関係者には伝えたいと思います。北海道を愛しているので決して譲りません。

この記事を通して早く『患者側の救急への理想』がどれだけ現実と離れているか。今まさにしっかり把握していただく必要があります。その中で、「じゃあ、どうしようか?」と、皆で話し合う必要があります。

今まで医師の良心に任せていたことをこれからもできると思って、押しつけていく流れをそろそろ打ち切らないと、どれだけ政府が僻地医療への対策を打ち出そうと、どんどん志願者が減る一方となります。

私達若い世代も自分でできることを考えて、実行し続けています。それが道内に残る研修医の数にも比例してきているのはデータで見れば一目瞭然です(ただし、札医と旭医のみ)。具体例として、自分が知っている中でも優れた活動をしている学生がいました。

1.小樽市立病院に研修医一号として勤務し続けたS
http://www.med-otaru.jp/
病院長や学長に掛け合って教育カリキュラムの調整なども全て行ってくれていました。

2.道内に研修医が残らないことで地域の医療崩壊を招くことに、いち早く気づいて同期に大学プログラムのすばらしさを訴えたS
http://www.mclabo.com/diary.cgi?mode=comment&no=114
彼は総合診療科のHPまで作ってます!

3.大学内での*治システムを構築したN、彼のおかげで課外活動における学生の意見をしっかり上に通しやすくなりました。

4.家庭医療学会の学生部会で委員長として家庭医療のすばらしさを説明し続けるN、私と同意見で北海道で働くモチベーションが下がりました。

私自身も上記の学生時代の友人に刺激され、北海道内での医師・コメディカルが連携をとり、もっと効率的に同じ目標を持って仕事ができるように、学校や学部の枠を超えて交流できる機会を学会形式で一年に一回行うよう企画を作りました。同じ世代が社会のために貢献する姿を知ることで、自分もがんばろうとする気持ちが生まれてくるものです。それは医療に限らなくても、報道関係に進んだ友人でも同じでした。

地域医療を考えて皆で一緒に歩んでいこうと思っている若い世代がどんどん増えている良い循環の中で、医療者側以外の人間が医師だけのせいにするのが、本当にいかがなものかと思います。どれだけ苦労して人材を配分しようと努力しているか。世間の流れを全く無視しているように感じられます。『責任のなすりつけ』から、協働して解決策を模索していけないものでしょうか。
このような微妙な問題を一方的な記事で『一報目で』出すのであれば、人間のやることなので許されると思いますが、続報でもう少し建設的なことへと昇華はできないものでしょうか。

生意気なことを言いますけれども、どなたか聞き入れていただけないでしょうか。重ねて、懇願して、お願いします、報道関係者様は問題の本質を是非突いてください。一緒に考えて行動してくださるような方にしかお願いできません。

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