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Vol.087 コロナ禍、その対処方法の誤り 4-4

医療ガバナンス学会 (2021年5月7日 15:00)


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一般社団法人医療法務研究協会
副理事長 平田二朗

2021年5月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

8.現在の危機を打開するための方策

一番目に挙げられるのは政治の原理を改めることである。「市場原理主義」と「新自由主義経済」を政治の基本にすることをやめ、「社会的共通資本」を基本に置いた経済と政治に変換すべき。

二番目にあげられるのは、医系官僚に任せないこと。自分たちの権益拡大しか念頭にない。彼らの使い方は判断するための材料提供にとどめるべき。厚生労働省のキャリア官僚を中心とした体制に変更すべきであろう。社会的な資源や医療界の資源と感染症村の集団を上手に使えるのは、多分彼らしかいない。

三番目に必要なのは当面の重点としてPCR検査体制の的確かつ大幅な体制整備であろう。変異ウイルスの検査体制もお得意の診療報酬などの誘導策を実施すれば即座に体制が整う。PMDAなどが検査機器や検査試薬の審査で妨害しない限り実現できる。

四番目に必要なのは医療界の整備再編成と診療報酬制度の改革と減収差額補償制度の早急な実施。医療界と医療保険体制は第二第三のパンデミックが襲来しても対応できる体制整備が必要である。硬直した医療保険体制を改め、養成機関や研究機関の体制変更も必要である。

五番目に必要なのは医薬行政の在り方の改革。官僚機構を守るためのPMDAの在り方を変え、新規医薬品の開発は国を挙げてバックアップする体制が必要である。審査だけを厳しくして参入障壁を作っている現行制度を改め、研究開発と製造を民間だけにゆだねる構造を、国や大学も研究開発する体制へと移行すべきであろう。医学研究の機関である大学に対して文部科学省は研究開発費用を医療費と同様削減し続けてきているが、このことが国産ワクチンの開発を妨げてきたこと、そして結果としてOECD参加国最低のワクチン接種率を生み出したこととなっている。一般国民はワクチン開発や治療薬としての医薬品開発に関するそれぞれの背景を知らない。

ただ、あまりにもひどい政権の対応に不信感を抱いているのみである。

六番目に必要なのは、地方自治体単位で新型コロナウイルス感染症対策を決定し、効率的で的確な体制を構築させること。行政機構と保健所、地域の医療機関、介護福祉施設、医療職能団体、検査機関が有機的かつ相互連携した体制で臨めば、地域の総力を挙げた形となりうる。これまでの感染症村と公衆衛生部門である保健所や地方衛生研究所が主体となった体制では、今日の感染蔓延の事態に対処できるわけがない。そして積極的なPCR検査体制でのぞみ、いち早く感染症をとらえ的確な判断と対応を生み出すべきである。
また二類感染症に指定することによって、感染症村による権限独占を許している。感染予防機関、保健所、検査機関、配送機関、医療機関などが相互に有機的な連携を組める、法的な裏付け措置を取るべきである。自宅療養者、宿泊療養者に対するケアも開業医やかかりつけ医、訪問看護部門などとの連携を図るべきである。硬直した感染症指定制度により、検査や診断をめぐって開業医などの第一線医療機関と保健所が連携どころか、患者対応をめぐって対立する事態となっていた。

七番目には感染症診療体制の司令塔を変更すべきであろう。ただし日本医師会には当事者能力がないことが判明している。各職能団体や病院団体、学会などの協力を得ながら日本医師会も含めた協議体を持つべきであろう。その調整役には厚生労働省のキャリア官僚が担うべきである。

八番目に最前線で頑張っている医療従事者やエッセンシャルワーカーに対して特別報酬を出すべきである。あの感染防御策をあまりとらないとして世界的に有名になったスウェーデンですら、医療従事者に対してそのリスクと貢献に報いるために給与を特別に増額している。本来診療報酬減収差額補償と給与増額の措置を取れば、効率的な財政出動で済んだはずだが、現場を知らない司令塔のおかげで不適格で無駄な支援、支出が続いた。「医療崩壊」という事態まで生み出した。医療現場が壊れてしまったら再建はよほどのことがない限り不可能である。そのことによって一般医療を含めた医療全体が壊れてしまい、一番の被害者となるのは患者国民である。医療従事者が辞めない環境を作る必要がある。飛行機を飛ばして感謝したりするよりやめない報酬と待遇を国が保証することが、一番の医療機関と医療従事者支援策である。鼻面にニンジンをぶら下げて感染症に対応したら奨励金をあげますという構図は、現場知らずで現場を馬鹿にした施策である。

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