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Vol.088 PCR検査・隔離による再生産数低減への直接的効果の推定ー広島市・福岡市・北九州市の比較

医療ガバナンス学会 (2021年5月10日 06:00)


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メディエコ研究開発(株)
槇 和男

2021年5月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私はこのMRICのVol.7において、北九州市と福岡市のPCR検査体制の比較を報告した者です。その後、広島市を加えて、今年の2月までの比較解析を行いました。
人口は、順に、96万人、160万人、120万人です。
PCR検査にはさまざまな意義がありますが、この解析では、感染者の検査・隔離による二次感染確率の低減という「直接的な効果」のみを、発症に関する公表データに基づいて、推定しました。詳細は( http://www.asahi-net.or.jp/~aw7k-mk/efPCRHFKmaki.pdf )をご覧ください。簡単に要約致します。

(方法)
文献的に知られた「発症日から二次感染までの日数分布」によって、「発症日から何日目に隔離すると二次感染の確率がどれ位の割合で下がるか(二次感染実現確率)」が得られます。
例えば、全感染者を発症日に隔離すれば、二次感染の確率は41%まで下がりますから、再生産数も41%まで下がります。具体的な発症についてのデータ、つまり、発症から陽性確認までの日数の分布を使って、感染者が隔離されるまでの日数の分布を求めます。ただし、隔離は陽性確認日に行われると仮定します。その分布で二次感染実現確率の期待値を求めれば、隔離が無い場合に比べての再生産数の低下(縮小)比率が得られます。なお、不顕性感染者については、発症する感染者と同じ振る舞いをするものと仮定しています。

(結果)
隔離によって変化する再生産数の比率(縮小率)で表現します。公表データには不明な点が多い為に、最大許容範囲と思われる解釈の幅で結果を計算しています。
広島市では0.79から0.83の間、福岡市では0.86から0.9の間、北九州市では0.63から0.81の間となりました。このような都市間の差が生じた原因は二つあります。福岡市と広島市の場合、発症から陽性確認までの日数の平均がそれぞれ、4.7日と3.7日となっており、この一日の違いが再生産数縮小比率の7%の相違になっています。北九州市の場合は発症から陽性確認までの日数の平均は4.6日となり、福岡市とほぼ変わりませんが、陽性者中の無発症者数比率が高い為に再生産数が低下しています。ただし、北九州市の場合にはデータに不明な点が多い為にデータ解釈として他の可能性が考えられます。これについては上記論文をご覧ください。

(考察)
再生産数での7%の低下の意味する処を調べる為に、福岡市における感染第3波において、「もしも再生産数が一律に7%低下していたらどうであったか」という計算を行いました。
結果として、総感染者数が44%になり、これは広島市と同じレベルであることが判りました。PCR検査の効果には社会的行動制限のような即効性はありませんが、長期的には同等以上の意味があり、社会生活への副作用も無いことから、積極的に活用すべきであると考えます。とりわけ、感染の危険性の高い集団への定期的検査は再生産数の低下に極めて有効であることが、同じような計算方法で判ります( http://www.asahi-net.or.jp/~aw7k-mk/books/regPCR.htm )。

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