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Vol.104 コロナウイルスの流行が止まらない、今、東京都福祉保健局がやるべきことは何か

医療ガバナンス学会 (2021年6月2日 06:00)


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わだ内科クリニック
和田眞紀夫

2021年6月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1.「積極的疫学調査」の存在を改めてアピールするのはなぜなのか。

東京都福祉保健局が作成して発行・印刷したパンフレット、これをPCR検査を受けた患者さんにお渡しするようにとの通達があり各診療所に配布された。コロナウイルスが流行しはじめてから今でちょうど500日あまりになるのだが、これまでこのようなパンフレットを配布されたことはなかった。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/pcrjukensha.files/quickguide20210517.pdf

発症の2週間前までさかのぼって感染の状況や濃厚接触者がいるかどうかの聞き取り調査をするので、保健所の調査に協力してほしいという内容だ。感染流行当初からこのような調査はずっと行われてきたわけだが、東京でも毎日500人もの新規感染者が出ている状況の中、今どうしてパンフレットを作ってまで改めてこのような「積極的疫学調査」の存在をアピールしようとしているのだろうか。

国立感染症研究所が作成した「積極的疫学調査実施要項」によれば、「さかのぼり調査」を行って「範囲を囲み込む」ことによって「次なるクラスターの連鎖は防がれ、感染を収束させることが出来る」という仮説をもとにこの行動調査が行われてきた。しかし1年以上に渡ってこのような調査が続けられてきたにも拘わらず感染源不明の感染者が急増していて感染は収束していない。積極的疫学調査では感染の拡大は抑えられていないことは今や明らかだ。
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/COVID19-02-210108.pdf

そもそも積極的疫学調査の対象は、基本的には確定例の患者さんと濃厚接触者に限定されているのだが、濃厚接触者に認定されなかった接触者からも少なからず陽性者が確認されていて、濃厚接触者の定義自体が適正でないことは明らかで、このことがかえって対象外に置かれた隠れ陽性者の数を増加させてしまっている。さらには感染者の数があまりにも増えすぎてしまって濃厚接触者と認定された患者さんでさえも放置され始めている。こうなると今行われている接触的疫学調査は感染拡大抑制の効果がないばかりが、ただ保健所業務の逼迫を招いて現場を混乱させているだけだ。にもかかわらず今ここにきて「積極的疫学調査」の存在を改めてアピールするのはなぜなのか。「あくまで軌道修正はするつもりはない」という頑なな意思表明にしか映らない。このような指示を出した発信源がどこなのかは不明だが、彼らが守ろうとしているものは市民の命なのか、それとも研究者としてのプライドなのだろうか。

2.インド株の検査をなぜ速やかに行わないのか。

風雲急を告げるというか、アジア全域でにわかにコロナ感染者が急増している。特にマレーシアでは都市封鎖が必要なほどで、ベトナムでは感染者の急増に加えてインド型と英国型のハイブリッド変異株が発見されていて、さらなる感染拡大が懸念されている。
*ロイターの提供する世界240か国の感染状況(マレーシア・ベトナム):
https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/malaysia/
https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/vietnam/

さらにはタイ・カンボジア・ネパール・ブータンでの感染拡大も深刻だ。インドで発生したインド型変異株が一機にアジア全土に拡大している可能性がある。
*ロイターの提供する世界240か国の感染状況(タイ・カンボジア・ネパール・ブータン):
https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/thailand/
https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/cambodia/
https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/nepal/
https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/bhutan/

地上波テレビの報道によると、 東京都のインド株検査件数は、検査が始まった4月30日以降、24日間でたったの300件、感染者全員の0.02%に過ぎないとのことだ。すでに都内でもこの感染力が強いインド型変異株のクラスターが検出され、すでに日本中にインド株が入り込んでいる可能性がある。PCR検査等陽性者に対して広くインド変異株のスクリーニングを行って、感染の拡大を抑え込まなくてはいけない。

筆者がMRIC前稿でも記述した通り、民間の検査会社の多くはすでにインド変異株を検出する検査のノウハウを確立している。民間に頼ることを拒絶して検査の結果を出すのが滞るようなことは決してあってはならない。東京都は「自費検査の適正実施のための措置」として、自費検査のみを提供する医療機関(保険適用検査も提供している場合は対象外)、自費検査のみを提供している医療機関以外の者に対して、自費検査の実施件数及び検査結果が陽性となった件数を1週間ごとに報告することとしている。すでに自費検査のPCR検査数と陽性者数もある程度把握しているはずで、行政検査へのこだわりは捨てて、自費検査を含めた感染者総数、変異株の広がりの実態を公表して感染状況を明らかにしてほしい。
http://medg.jp/mt/?p=10298

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