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Vol.110 日本の新規感染者数のグラフと世界の新規感染者数のグラフが酷似していることの偶然と必然

医療ガバナンス学会 (2021年6月10日 06:00)


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内科医
和田眞紀夫

2021年6月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1.日本の新規感染者数のグラフと世界の新規感染者数のグラフが酷似していること

新規感染者数のグラフは国によってまちまちなのになぜか日本の新規感染者数のグラフと世界全体の感染者数のグラフが酷似していることに気が付いた。

「新型コロナウイルス感染症まとめ」
https://news.yahoo.co.jp/pages/article/20200207
<出典>
「新型コロナウイルス 日本国内の最新感染状況マップ・感染者数」(日本)
https://newsdigest.jp/pages/coronavirus/
「WHO Coronavirus (COVID-19) Dashboard」(世界)
https://covid19.who.int/

この1年のあいだ感染者数は増減を繰り返して4回の感染拡大期(ピーク)を認めているが、なんとそのピークの時期が日本と世界全体でどんぴしゃりで一致しているのだ。4月12日ごろ、8月10日ごろ、1月10日ごろ(1~3期)そして5月5日ごろ(4期)だ。そんなことはどこの国も同じだろうと思われるかもしれないが、ピークの時期はそれぞれの国によってかなりずれている。1期、4期はどちらも4-5月なので1年間でみた場合は、4-5月、7-8月、12-1月の3期なのだが、実はピークが2回しかこなかった地域も多い。ヨーロッパでは7-8月に相当する2期がなかったし、東南アジアでは12-1月の3期がなかった(日本は西太平洋地域に分類されていてこの地域には含まれていない)。日本同様に三峰性のピークを認める代表的な地域はアメリカで、アメリカのピークの時期もほぼ世界のピークに近い。詳しくは以下を参照していただきたい。

「WHO Coronavirus (COVID-19) Dashboard」(世界) > Situation by WHO Region
(Weeklyに表示されているものをDailyをクリックして変換してみるとより詳しい)
https://covid19.who.int/

アメリカは累計の感染者数が世界で一番多い(6850万人)のだから世界全体に近似しているのは当然に思えるが、2番目に感染者が多いヨーロッパ(5462万人)が二峰性なのだからそれだけでは説明しきれない。

2.「人流」が感染拡大の主要因であること

日本では当初は「3密」と盛んに言われていたのに、このところははやりのように「人流」といわれ始めた。感染症の専門家でなくても医学・生物学を少し学んだものであれば、ウイルスは基本的にはヒトからヒトへ感染するものであることをみんな認識している。ウイルスは半寄生性の生き物(生物とは言えない)なのだから基本的には宿主から離れたら生きていくことはできない。そこが細菌と大きく違う点であることを一般には理解していない人も多い。

コロナウイルスは冬に流行する風邪の原因となる代表的なウイルスだが、夏にも小流行を引き起こすことが知られている。もう一つの冬の厄介なウイルスがインフルエンザだが、インフルエンザのワクチンはその直前に南半球で流行したウイルス株をもとに毎年作製されることからもわかるように、現代においては世界的な人の流れによってウイルス感染の流行が循環して移動するのだ。そう考えるとコロナウイルスの夏の小流行は南半球からの人流によってもたらされているのかもしれない(ならばなぜ夏にインフルエンザが小流行を作らないのかというと、それぞれのウイルスの感染力の差によるものかもしれない。コロナ対策でインフルエンザは抑えられたのにコロナは抑えられなかった)。

新型コロナウイルス感染のピークが地域によって少しずれているのは世界の気候変動の違いによるものかもしれないが、それではなぜ日本とアメリカの2地域は三峰性のピークを示しているのか。そのヒントは日本とアメリカに共通する感染対策による可能性がある。すなわちこの両国は新型コロナ感染が流行し始めた当初から海外からの人の流れを全くと言っていいほど規制してこなかった。ヨーロッパと東南アジア、アフリカの二峰性のピークは微妙にずれているのだが、それぞれのピーク時に絶えず日本国内へ人流が続いたため、世界の異なるピークのすべてを吸収して同期したピークを作った可能性がある。日本にとってはアメリカからの人流が継続して続いていたことも大きな要因かもしれない。そうなると日本の新規感染者数のグラフと世界の新規感染者数のグラフが酷似していることは偶然ではなくて必然ということになる。

それでも世界の感染ピークの時期が概して似通っているという事実からは、コロナ流行のピークは実は起こるべくして起こり、収束すべくして収束しているのかもしれない。すなわち一見、世界中で試行錯誤して行われてきた人為的なウイルス対策が、多少なりともウイルスの流行を操作できているように見えても実はそれはすべてウイルスの季節性による自然な増減をみているだけかもしれない(これまで毎年繰り返されてきたインフルエンザの流行でさえ思い切った対策をとらずに自然に消退する。そのピークは2週間と続かないのだ)。そこに国家間の人流による修飾が加わり、世界全体の感染曲線をより複雑なものにしているのかもしれない。

世界全体のグラフではこれまでの感染拡大第3期(12-1月)まではほぼ欧米を中心にした感染拡大を反映していたのが、第4期ではこれにアジアの感染拡大が加わり欧米と半々になった。感染が先行した欧米でワクチン接種が進んでいる状況を考えると、第5期があるとするならば今度はほぼアジアだけを中心にした感染拡大(7-8月)になる可能性もある。欧米がかつて経験したような巨大な感染爆発の再現とならなぬよう、アジア全体のワクチン接種を急がなければならない。

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