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Vol.111 「副反応」一つの真実 …起立性調節障害は“ワクチン禍”ではない!

医療ガバナンス学会 (2021年6月11日 06:00)


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リン カイロプラクティック(神戸市)
林 碩虎

2021年6月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

新型コロナワクチンの接種が進むとともに、「副反応」とされる症状の報道も日々聞かれるようになりました。気になるのは、「起立性調節障害」と思われるケースが多く散見されることです。

私はカイロプラクティックを専門として30年以上のキャリアを持つ柔道整復師です。加えて近年は全国から、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)接種後不快症状の方々や、起立性調節障害や体位性頻脈の子を持つ全国のご両親方から相談・依頼を受け、医療忌避しがちな方々と医療機関の先生方との橋渡し役になるべく、務めてきました。

今回は、私の経験から、起立性調節障害はどんな方に起きやすいのか、子宮頸がんワクチンを打った打たないに関わらず起立性調節障害とは何か、どんな方に多く見られるかを、改めて広く知っていただきたいと考えました。時系列から言えば予防接種後に起きえますが、それも決して「ワクチン禍」ではないことを知っていただきたいのです。
【 起立性調節障害とは何か? 】

2021年5月末日現在、子宮頸がんワクチン接種後不快な情動に苦しんできた述べ96名を施術して85名の回復に尽力して来ました(11名は他疾患の方々やワクチンとは無関係と思しき中止転医)。

起立性調節障害は、自律神経の機能が低下し、循環器系の調節が不調をきたすものとされ、起立時にめまいや動悸がして、失神したり、食欲不振や顔面蒼白、倦怠感などの症状が表れたりします。よく「貧血で倒れた」と言われるのは、実際には医学的な意味での「貧血」ではなく、この起立性調節障害と呼ばれる現象のことが多々あります。

思春期に多く見られ、大人になれば自然寛解や回復が見られることもありますが、それも約4割未満にしか過ぎないようです(小児心身医学会から)。また、高齢者でやや増加します。

新型コロナワクチン接種後の体調不良との報道を見ていても、この起立性調節障害の1つ(血管迷走神経反射)と考えられるケースが目立つように思われ…。接種への不安や痛みなどから、自律神経に不調を生じた結果でしょう。

例えば「大規模会場で接種を受けた60代女性が、経過観察中に冷や汗をかき顔面蒼白になったため、会場内の救護室へ搬送された」という例などは、血管迷走神経反射の典型的と感じます。

新型コロナワクチンの接種対象が12歳以上まで引き下げられ、思春期の子供たちにも接種が進めば、同様の症例が多発する可能性もあります。

そこで以下、私が起立性調節障害と診断されたお子さんたちの相談を受けた経験から、見えてきた傾向などをまとめてみます。

【 起立性調節障害を発症しやすい子の特徴――8つの共通点とは?  】

まず、起立性調節障害を発症しやすい子のタイプとして以下に分類してみました。専門医・医師から「起立性調節障害」と診断あるいは疑いと判定された約570名の方々からの申告や面談、臨床を通して、経験的に多いと感じた特徴です。

1 自身の苦境を誰にも言えず、ずっと我慢し続ける子
2 急激な身長の伸びや体格の成長、変声期や初潮が起き、内臓や神経系の発育が未成熟→脳も未完成な発育段階
3 自我の確立が未完成なまま、成績不振や対人関係の問題を抱えている
4 目標の挫折や躓きを体験した、あるいはその状態が進行している
5 中長期間の外傷や内的疾患による療養後、あるいは熱中症感染症発症等の外的要因
6 溺愛され過ぎた一人っ子、または他の兄弟姉妹よりも寵愛を受けた子
7 家族関係を含んだ家庭内環境に居心地の悪さを感じている
8 中長期間の休み(5月の連休や夏休み等)を上手くペース配分できなかった子

上記に加え、医療機関(病院やクリニック)でも母親との関係性を指摘される例は多くあります。これについては部分的に同意しますが、ややその性質が違うため割愛します。

1〜8に共通するのは、結局のところ「自我の不完全さ、未確立」です。そうした二次性徴期特有の壁が幾多にも現れて来ますから、治療も一筋縄では上手くいきません。

二次性徴期は、人との関わり合いや色々な出来事を通して経験や体験を積み重ね、それらを上積みして行く時期です。ただし、幼児期の『あやふやな個』と違い、『個を確立、認識、確固たる物』へと地固めして行く時期でもあり、故に自信の喪失や目に見えない不安感にいとも簡単に襲われることは、当然ながら多々あることと思われます。

例えば子宮頸がんワクチンを例に挙げますと、「無料期間中だから、今のうちに早く」「みんな打っている、打とうとしている」といった風潮だけに押されて、そのワクチンを打つ利益をご本人が熟考しないまま母親に医療機関に連れていかれ、人生で初めての筋肉注射を打たれ(中には不慣れな医師もおられた事でしょう)、接種後の何かしらの不快な情動体験が長引いてしまえば……。

この場合の「情動体験」は極端な話、何だってよいのです。自身の意識の中で、それらに対抗あるいは太刀打ちし、処理することができない場合、迷走神経を通して不快な情動体験や痛み、だるさとして大脳側に記憶されていきます。ネガティブな事柄を考えれば考えるほど身体は動かなく、あるいは動かしづらくだるくなる。さっきまで確かに存在していたヤル気も欠落してしまうのも、当然かもしれません。

とりわけ1、3、4を満たすケースでは、更に回復や無症候までのハードルは上がりますから、ますます難治性になろうというものです。

【 “副反応騒動”はこうして出来上がった 】

子宮頸がんワクチン接種後や、起立性調節障害等の自律神経がもたらす現象において、恐怖や不安は多々、視覚情報からもたらされます。そして日々、不快な症状で辛そうにする娘を見ている母親が、まず真っ先に参ってしまう。母親はその呵責から医療機関通いを通して或いは、ネット検索にて、子の病状や状態を何とか把握しようとします。

しかし、医師は「医療人」の前にまず「科学者」でありますから、不確かな事や迂闊な発言は決してしません。他方、親御さん、特に憔悴しきった母親は、感情論ベースに物事を考え始めるでしょうから、医療者との意思疎通も図りづらくなって当然です。

すると、自らの要求を満たすがごとく医療機関のハシゴが始まり、自分たちの言い分だけを丁寧に聞き入れ、忖度してくれるような医師(医療人)を探し求め、初医や次医の正しかった診断・見解からは次第に解離して行きます。正しかろうと誤っていようと、満足のいく説明をしてくれた“忖度医”の下で、“明後日の方向の治療らしき物”や誤診を元に、思考と行動づけがなされるでしょう。

忖度医の下に居続ければ、行き過ぎた猜疑心や疑いや、甚だしい事例では過去助けてもらったはずの医療に対する怒りや不信感へと、容易に発展するのも自明です。その怒り感情は、表情や言動に現れて、更に娘にも伝播してしまうのです。

こうしてますます治らなくなる。まったくもって不幸な負のスパイラルに陥るのです。下手すると、「何もせずとも時間経過、自然経過が治していくものだ」といった、あたかも“悟り”を開いたような境地にもなるでしょう。

現実問題、2012年頃からの日本での子宮頸がん(HPV)ワクチン“副反応騒ぎ“は、そのほとんどが、医療側と母娘側とのコミュニケーション不足に端を発しているように見えます。

医療側と享受側の相互理解が未形成なまま、マスコミの奇をてらった(のかは分かりませんが)センセーショナルな連日の報道の中で、それら単なる自律神経の現象を「未知の副反応だ」「診ます」と謳う医師の方々まで登場することになりました。このようにして騒動の“舞台装置”が出来上がっていった感がするのは、私だけでしょうか。

この段階まで来てしまえば、市中に限らず“まともな普通の医療人“が何を言っても、聞く耳を持たれないのは想像に難くありません。

【 柔道整復師として何ができるか、何をすべきか 】

全国からの相談に対し、私が徒手療法家として実践してきたことは、初見から患者さんに「自覚、認識、客観視させる」スイッチをやんわりと入れた上で、カイロプラクティック的施術にて不快な症状の緩和、改善、解消に全力を注ぐことでした。

過去にも書いて来たように、我々徒手療法家が尽力すべきは、様々な不快な症状群から、丁寧に1つ2つと症状を解消・緩和させていくことです。「数十回、数年と施術者から言われるままに通ってみるも、何一つ症状が変わらない、治らなかった」というのでは目も当てられません。

ただしその入り口で心掛けたのは、医療色を前面に出さないことです。あえて白衣の類は着ず、問診の手順すら無視しました。何故なら「2度と医療や施術の類いは行かない」とか、「信用できない」と言う方々が、相談者の半数以上を占めているためです。

そうしてまず十分に時間を取って相手の話や言い分を聞き、「お辛かっただろうことは痛いほど理解します。大変でしたね」と受け止めます。その後、必ずそれとなく聞くようにしているのが、「それで今後、あなたはどうありたいのでしょうか?」ということです。

その上で行った施術は、その光景を見る者、つまり同伴しているご両親まで何十回も頷かんばかりに納得、得心させ得る、ということを経験的に分かっているからです。何よりご本人の実感として、体が楽になっていく。その実感が得てこそ私の言葉にも次第に心を開き、その結果として体も脳も心理面もますます好意的に反応していく。そのような現象が起きているとしか思えません。

何てことはない。子宮頸がんワクチン副反応騒ぎも、ごくごく初期の接種医から次医、次々医らへと、もし初動体制や連携、通達がしっかりとされていたなら、ここまでの“社会現象“に発展していなかったはずです。

無論、初期の半年ほどは私も混乱しました。それでも私の師から父から、いつも教わり言われて来たことを、目の前で辛い思いをしている方々に、その通りに実践する。そうすれば確かに良くなって行く。そう実感した後からは、治療成績も上がって行ったのも事実です。

私の臨床でのモットーは、「鍵は患者の内にあり、内なるチカラを引き出してあげる」ことです。

子宮頸がんワクチンを打った後に体調不良を訴えた娘さんや、沢山の起立性調節障害、体位性頻脈のお子さん達を目の当たりにした時、そうしたいと感じ、その通り実践してきました。結果を見れば、それで間違っていなかったと考えています。

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