医療ガバナンス学会 (2021年6月16日 06:00)
この原稿は中村祐輔の「これでいいのか日本の医療」からの転載です。
https://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2021/06/04/231058
中村祐輔
2021年6月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
今回の分科会長の発言は、オリンピックを励みに頑張ってきたアスリートの気持ちを傷つけるものだ。彼らは日の丸を誇りに頑張ってきたのだ。国民の多くは過去のオリンピックで日の丸が掲げられた場面に勇気づけられた思い出があるはずだ。多くがオリンピックの意義はわかっている。ただ、コロナ感染が収まらない中でオリンピックを迎えることに不安を覚えているのだ。否定的なのはオリンピックそのものの意義ではなく、この状況下で開催されることに対してだ。
常識的に考えて、分科会の責任の一つに「無事にオリンピックを迎えるために、どんな対策を取るのか」があったはずだ。今頃、責任を政府に押し付けるのではなく、オリンピックを開催するために何が必要なのかを提言し、それを政府が聞き入れないのであれば、辞表を胸に体を張ってでも提言すべきことを提言するべきだったのではないのか?「感染症対策の専門家」として、オリンピックという目標に対して、感染対策の強化を求めるべきではなかったのか?PCR不必要論は彼らが決めたことなので、方針を変えられなかったのだろうが、それは自業自得だ。現状を客観的に見れば、オリンピックを開催することによって、国内、国外にコロナ感染が広がり、日本という国の誇りが傷つけられるリスクは非常に高い。しかし、こんな日本にした責任は彼らにはないのか?
分科会の責任は、オリンピックの意義を問うことではない。政府と分科会には共同責任があるのだから、ここに至っても政府がオリンピックを開催すると決めたなら、どのようにして感染拡大を最低限にするのか、もしもの時に、何をすべきなのかを提言すべきなのだ。責任を取る覚悟がなく、これまで対策を提言してきたのか?他人事ではなく、自らどのように感染を封じ込めるのかを提言し、それでうまくいかなかったら、責任を取る覚悟を持って欲しいものだ。
PS: C36株が見つかったという。日本のニュースを見ても何のことかわからなかった。そこで、ネットを調べたところ(SARS-CoV-2 variants of concern as of 3 June 2021 (europa.eu))、スパイクタンパク質に、インド株=デルタ株の特徴の一つであるL452Rに加え、D614GとQ677Hが存在するものが、C36+L452Rとリストアップされていた。D614Gはイギリス株(アルファ株)、南アフリカ株(ベータ株)、ブラジル株(ガンマ株)、インド株(デルタ株)にも共通である。Q677HはC36に特異的で、スパイクタンパク質の677番目にあるグルタミン(Q)がヒスチジン(H)に変わっていることを意味する。2020年12月にエジプトで初めて見つかっている。イギリス株は2020年9月に報告され、インド株は2020年12月だ。