医療ガバナンス学会 (2021年6月18日 06:00)
伊沢二郎
2021年6月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
一波以来、市中の感染実態が分からぬまま今に至っている中、全国的に唯一感染実態が把握できるのは日々発表されるコロナ新規陽性者数や重症者数、そしてコロナの犠牲者数だ。
その上で地元に目をやり自分が感染したら即座に入院できるのか、自宅待機させれるのか、誰もが一番気になるところでしょう。
医療従事者にしても、本来なら入院させるべき患者が診療さえ受けられずに重症化したり、亡くなる方さえ出ている入院待機者の把握は欠かせないことでしょう。
只でさえ見えにくい或いは見えない様にしているのかとさえ思う感染実態が、ます々見えにくくなる新方式に換える理由が有ると言うのか。
新方式に換える理由らしきことを、入院先が決まっているのに準備の為に自宅にいる人まで集計する今までのやり方により、病床の逼迫度が正確に把握できていないとしている。
まるで患者の個人的都合が病床使用の実態把握を妨げているとでも言いたいかのように聞こえるが、この程度は僅かな時間の問題で逼迫度合を把握する上でどれ程影響を及ぼすと言うのだ。
一般市民にとっては、入院先が決まっている人はまだラッキーだ。逼迫度が高くなる程、直ぐにでも入院したいのに出来ずにいる人が増えてくる。
入院先が決まっている人は当然のこと、このような人達をも集計してこそ意味のある逼迫度合いだ。
このような人達を把握しないで病床の逼迫度合いを云々することに意味が有ると言うのか。
ところが入院先が決まっていて、準備中の人達を集計から除外するだけで取り巻く状況は同じなのに、緊急事態宣言発出相等の最も深刻なレベル4の都道府県は20から11に減る。
ゴールポストを動かせば黒い物も白と言えるよになる、何処かの国に対してゴールポストを動かす国などと言えたことか。
それにしても何故こんなにおかしな事をやるのか。病床逼迫度がより現実を現す方向に持っていくなら分かる、そうすべきだ。しかし誰が見ても理解し難い幼稚なことを厚労省はやろうとする。それまでして病床逼迫度合いを低く見せようとするのは何故だ。
考えられるのはオリンピックを前にして緊急事態を解除すべくその要素を減らしておきたい、だろうくらいしか思いうかばない。
何処からどの様な圧力が有ったとしても、国の役所として最もやってはならない事の一つは、統計資料を意図的にいじることだ。
国民共有の財産だから当然のことだが、先の政権ではこの問題で、自らの政策の妥当性を言いその評価を上げる為に統計数値をいじったと野党は追及した。
病床逼迫度の新方式も実態を粉飾しようとする点では同じことか。しかしこれにより実態が見えにくくなったり、軽くみられた結果、医療体制を整えることに影響が出たとしたら国民の健康と生命に係わる大問題だ。
コロナを完全にコントロールしている鳥取県では陽性者は、症状が有ろうが無かろうが入院が基本です。二次感染や重症化を考慮すれば当然のことでしょうが、他県ではそれを許さない現実も有る。
だからこそせめて、入院先が決まっている人は当然のこと、入院出先も決まらずに余儀なく待機させられている人をも集計すべきだ。
厚労省は国民の健康と生命を守る役所として、やるべき最低限の責務だ。
これさえ出来ないとしたら国民の信頼は更に地に落ち、自ら厚労省解体の道をひたすら歩むことになるだろう。もう既にその道に在るかも知れない。
幾らかでも信頼を取り戻す気があるなら、病床逼迫度の新方式を止めるか、これ迄よりも更に実態を現す方式に換えることを勧める。