最新記事一覧

Vol.117 コロナ感染拡大を抑えて社会活動をコロナ禍以前の状態に戻すための施策の提言

医療ガバナンス学会 (2021年6月21日 06:00)


■ 関連タグ

内科医
和田眞紀夫

2021年6月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

コロナ感染拡大を抑制するためにこれまで行われてきた施策は、(1)クラスター対策(濃厚接触者の追跡・隔離)、(2)緊急事態宣言(まん延防止等重点措置)の大きく2つだけだ。

クラスターを探して濃厚接触者の行動制限をしてもコロナが社会に蔓延することは阻止できなかったし、緊急事態宣言やそれに続くまん延防止措置を繰り返し発令しても感染拡大を繰り返すばかりで、今に至っては宣言発令中に感染が拡大し始める始末だ。どちらの施策もコロナ感染拡大を抑えるのに有効な施策ではないことが明らかになったのだから今すぐすべての施策から完全に撤退すべきである。根拠なく飲食店や劇場・スタジアムの規制を続けることは慎むべきだ。

それに代わるコロナ感染拡大抑制およびさまざまなコロナ禍を最小限に抑え込むための有効な方法は、(1)免疫獲得者の開放と(2)免疫非獲得者・弱者の徹底した保護である。

1.コロナワクチン接種者、既感染者の行動抑制はしない
国民全体に一律の行動制限を加えるのではなくて、コロナワクチンを接種したもの、すでにコロナに罹患したものには免疫パスポートを発行・所持させて通常の生活に戻ってもらう。これらの人たちは基本的にはお酒を含めて飲食のために集まってもいいし、旅行をしてもいいはずだ。スタジアムでスポーツ観戦をしてもいいし、ライブハウスや劇場で演劇や音楽を楽しんでもいい。すでに免疫を獲得しているのだから大きく感染拡大に寄与することはない。当面は居酒屋に入店できるのは免疫パスポートを持ったひとだけ、スタジアムや劇場に入れるのも免疫パスポートを持ったひとだけに限定するなどの過渡的な措置をとることは仕方がない。一律に営業時間の短縮を強いたり、入場者数を減らすというような科学的な根拠が曖昧な施策を漫然と続けることに比べたらはるかに理にかなっている。

そのために行わなければならない具体的な対策は、2つ。一人でも多くの人にコロナワクチンを接種してもらうことと、もう一つはコロナ抗体検査を無料で受けることができるようなシステムを作ることだ。ワクチンを打ったことの証明やコロナに既感染の証明書をもらえば行動制限が解除されるとなったら(インセンティブの付与)、多くの人がワクチン接種を受けてみたいと思うだろうし、既感染の証を得たいと思うだろう。職域接種・未成年者の接種(その良し悪しの議論は別稿に譲る)が開始された今こそ、このような方針に方向転換する絶好の機会なのだ。是非すぐにでも具体的な実施要綱を打ち出してほしい(もちろんこのような対応を取る場合には、同時に飲食店等も免疫パスポートを確認する条件で通常営業に戻ることになる)。

2.徹底的なPCR検査の拡大実施によって感染者を洗い出す
PCR検査を無料で実施できるようにして、PCR検査実数を現在の100倍以上にすることを提案したい。感染拡大を抑えるために最も重要なことは、今更ながら、PCR検査をいつでも誰でもどこでも行えるようにすることだ。無料でいつでも実施できるなら多くの人が検査を受けるだろうし、陽性者はインフルエンザと同じように一定期間の自粛を甘んじて受け入れてくれるだろう(現行の決まりでは10日間、場合によっては8日間に短縮することも可能かもしれない)。コロナウイルス流行の特性(季節性の変動)を考えたときに、夏にコロナウイルスの流行が再燃することは避けられないことかもしれないが、感染拡大の規模を抑え込むことはできる(早期のPCR検査で感染者をいち早く割り出して、自粛を促す)。

そのためにはすべての医療機関、さらには薬局などが検体回収に協力するシステムを構築することだ。当初限定されていた鼻咽頭拭い検体とは違って、今は唾液検体でのPCR検査が一般的となっておりこれに意義を唱える人はいない。唾液検体の回収は極めて簡単で本人に容器を渡して自分で採取してもらえばよく、検査実施者の感染リスクは限りなくゼロに近い。

そこでネックになるのが、感染症法による縛りだ。エボラ出血熱のようなタイプの感染症ではないのだから、いつまでも感染症法で規定される隔離必須のウイルスのままでいいわけがない。インフルエンザのようなものと片付けられるものではないが、感染症法での扱いはインフルエンザと同等レベルでよい。その方がすべての医療機関、民間病院がコロナ対策に参入し安くなるのも確かだからだ。

PCR検査とは別に自分でできる自宅用の抗原検査キットを幅広く普及させることも感染拡大防止には大いに役立つ。自分でできて10-15分で結果が出るのが利点だ。自分で実施する場合でも唾液を使った抗原検査となるとかなり感度が下がる可能性があるが(このほかに鼻腔拭い検体と言って鼻腔2㎝ぐらいの浅い位置を拭う検査方法がある)、とりあえずすぐに結果を出ることのメリットは大きい。このような簡易検査をなぜもっと普及させないのか、理解に苦しむ(欧米では安価な自己診断検査キットが普及している)。ただし、確定診断には感度の高いPCR検査を実施すべきだし、病院や高齢者施設での緊急性がないようなスクリーニング検査は感度の高いPCR検査を選ぶべきだ(それを安易に抗原検査で済ますべきではない)。医療機関や高齢者・福祉施設におけるPCRスクリーニング検査を徹底して行うことを怠ってはならない。また、一般市民に対しては頻回の検査を実施することで免疫パスポートに準ずる扱いにすることも考えられる。

3.入院施設の充実
このまま大きな感染拡大がないことだけを望むが、万が一第4波に匹敵するかそれ以上の大きな第5波が起きる可能性がゼロではないなら、万全の体制をとっておかなければならない。そもそも緊急事態宣言を出さなければならなかった理由は医療の逼迫を避けるためだ。ならば医療が逼迫しないような体制を整えておくことが何より大切なはずだ。入院が必要なコロナ患者さんがいつ増大してもいいように大学病院や都立病院の受け入れ態勢を今のうちに整えておくべきである。政権与党の幹事長は「これ以上やりようがありますか」と発言してはばからないが、やらなくてはいけないことは山積みで、手付かずで放置されていることだらけなのではないだろうか。

4.最後に
国際社会と協調していくためには、世界と歩調を合わしていくことも重要だ。世界基準のコロナ対策に歩み寄ることは国際社会との関りを断たないためには絶対必要なことで、でなければ世界の中で孤立してしまう。このような視点が日本のコロナ対策では全く欠如していた(オリンピックの時だけ世界基準を採用しておかしなことになっている)。日本独自のコロナ対策を頑なに固辞せずに、世界で示されるエビデンスにもきちんと眼を向けて新たなコロナ対策に取り入れることができるようなエキスパートが新たな諮問機関に加わっていただけることを切望してやまない。

まとめ
クラスター対策・緊急事態宣言(まん延防止等重点措置)からの完全撤退
(分科会の解散、総入れ替えした新たな諮問機関を設定、危機管理、数理統計の専門家も加える)
コロナワクチンの普及・促進
無料の抗体検査(コロナ既感染の証明)
免疫パスポートの発行、行動制限の段階的解除
無料のPCR検査・自己診断抗原検査の拡大・普及(感染者の割り出し、自粛)
感染症法の改正もしくは取り扱いの是正
入院施設の拡充と十分な準備
世界基準のコロナ対策に歩み寄る(国際社会との関りを断たないため)

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ