医療ガバナンス学会 (2021年8月20日 06:00)
永井雅巳
2021年8月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
【県庁閉庁後の感染者の行方】
現感染症法下において、PCR検査にてCovid19陽性と診断されれば、医療機関は保健所に報告することが義務付けられている。報告を受け取った保健所は県に報告し、入院適応があると判断されたものは、県が感染症指定医療機関への入院調整をするのが法である。ただし、これは平日、日中の行政が開いているときの話である。ひとたび、Covid19陽性と診断されたが、その時点で入院適応がないと判断されたものの夜間に具合が悪くなる場合もあるだろう(No.153 http://medg.jp/mt/?p=10445 松本先生の投稿に詳しい)。夜間に不安が強くなり、医療機関の受診を希望する人も多くいるだろう。この人たちは、救急車を呼ぶ。救急隊は断れないので、夜間Covid19陽性者を抱えて、受け入れてくれる医療機関を捜さねばならないが、この作業は決して楽ではない。
千葉県はCovid19専用の夜間救急輪番制度があるらしいが、良く周知されているものではなく、また機能しているとは思えない。夜間だけではない。先日は、平日の午後1時に救急隊が発熱患者を搬送してきた。PCR陽性で酸素飽和度は室内空気で88%であり、午後3時には保健所に報告したが、入院調整はできないので、当院で見るようにとの指示であった。これでは、救急患者を受けた(指定医療機関でない=資源の乏しい)病院は大きなリスクを抱え込んでしまう。とりわけ、夜間・休日におけるCovid19患者には調整担当がなく、政がガバナンスを果たしていない。例えば、小児救急の#8000のような統一したシステムを作り、救急隊にお任せではなく、行政が24時間ガバナンスを果たさないかぎり、閉庁後の無法地帯は解消できない。
【Covid19にはカレンダーがない】
急に容態が悪くなり、治療を急ぐ患者がいる。Covid19感染者には注意が必要だ。その場合、現在できるのは酸素投与にベクルリーとデキサメサゾンの併用療法である。刻一刻を争う場合もある。ただ、現在、使用可能なロナプリーブにしろ、オルミエントにしろ、(買い占める悪い輩を防ぐためか?)、全て、厚労省に届け、必要な本数だけいただくことになる。配置薬としておくことはできない。然るに、例えば金曜日の午後3時に発熱・呼吸困難を主訴に救急搬送された患者がCovid19陽性とすると、原則、この患者にベクルリー投与を行えるのは月曜以降となる。その間患者の肺ではSARS-CoV2は増え続けているに違いない。製造・販売のギリヤード、卸のスズケンも土・日は休み、もちろん厚労省も休みだ。医療現場ではなるべく早く治療を開始したくてもできない。
出血死しそうな患者を輸血が届くまで待っているようなものだ。是非、24時間安定した供給体制を構築してほしい。買い占める悪い輩がいるとしたら、その輩を罰するような制度にしてほしい。
以上、千葉県の現場で感じたことを記したが、千葉県だけのことでもないだろう。予防接種、発熱外来、入院治療と日夜、頑張っている全国の医療従者・県庁・保健所の職員には感謝の言葉をささげたい。Covid19には時計もカレンダーもない。緊張感をもって頑張ろう。