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臨時 vol2 薬剤師に期待されること、今後の教育

医療ガバナンス学会 (2004年6月15日 23:28)


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Vol. 5 2004年3月15日”To Err Is Human” 医療ミス防止システム構築の重要
性へのご意見をいただいた森様からです。2回シリーズです。

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第一回    薬剤師に期待されること、今後の教育
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医療法人財団 順和会 山王メディカルプラザ
薬剤室 森  玄

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① 薬剤師として
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日経DI(a)という雑誌があります。調剤薬局に無料で配布している薬剤師対象の
雑誌です。2004年4月号の特集は「ありがとう。薬剤師さん」という内容で、患
者は薬剤師に何を求めているのか、アンケートを基に理想とする薬剤師象を描い
ていました。自分達の仕事振りに対する客観的意見を聞く機会は少なく、自分の
行動を振り返りながら読みました。自分は患者に何が出来ていたのだろうか?と。
外来の投薬時では「使い方はご存知ですか?」「今回このお薬が増えましたね?」
といった1言2言の言葉と共に機械的に投薬している毎日です。私が卒業した薬科
大学における卒業後の進路は薬局が約1/4、次いで企業、病院、進学がそれぞれ
1/5(b)を占めていて、依然として臨床現場が中心となっています。その臨床現
場において、薬剤師は何を期待されているのでしょうか。

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② 薬学部における教育
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薬学部は2006年度より4年制から6年制へと移行します。移行の理由として、・
医療技術の高度化、・医薬分業の進展等に伴う医薬品の安全使用や薬害の防止と
いった社会的要請、・教養教育や医療薬学を中心とした専門教育及び実務実習の
充実(「薬学教育の改善・充実について(報告)要旨(c)」参照)が挙げられ
ました。また、モデル・コアカリキュラム(d)に基づく教育が推し進められる
のですが、その中には、D 実務実習教育[病院・薬局薬剤師](2)疑義照会、
(4)リスクマネジメントという項目があり、より臨床現場で実践できる教育が
盛り込まれるようです。

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③ 臨床現場での教育
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臨床現場の薬剤師は、どうやって知識を増やしているのでしょうか。大学で勉強
した知識がそのまま現場で通用することはそうそうなく、一からの勉強が必要で
す。しかしながら、入職してすぐに調剤の日々に追われ、薬剤名、薬効、使用法…
学ぶべきことは沢山あれど、仕事場に慣れるのが精一杯でただただ処方箋に応じ
た調剤を行う毎日。先人による教育も大切ですが、薬剤師という”師”の付く職
業である事を自覚し、自ら知識、見識を広げて勉強する…そんな事でさえ実践で
きていない薬剤師は少なくないと思います。医学書が売って無いから、勉強する
機会が無いから、先輩が教えてくれないから、忙しいから。と、理由は多々ある
ようですが。
私が最初に勤めた病院(e)では、院内外来調剤し、病棟に薬剤師が常駐してい
ました。病棟での服薬指導件数は3.6回/床/月(平成15年度)。医師や看護師と
の連携を密にし、入院時は病棟薬剤師によって服薬指導を行い、退院後は外来に
おいてフォローする。学校で臨床薬剤師に関する勉強をしましたが、卒業して初
めての職場でこういった取り組みを行っている事によって、勉強の必要性と医師
や看護師との関係の大切さ…私の中の臨床薬剤師の原点が作り出されました。

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④ 薬剤師の方向性
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糖尿病療養士(f)という資格があります。看護師・管理栄養士といった資格者
に対しての資格ですが、この受験資格には糖尿病患者に対する指導件数等の基準
があり、しかも、更新制となっているため常に指導、勉強の必要性が生まれてい
ます。薬剤師という資格自体には、こういった縛りを必要としないと考えますが
(と、思うところが既得利権に私も染まっている証拠でしょうか)臨床薬剤師と
いう更新性の資格はあっても良いのではないか?と、考えます。
また、ゼネラリストかスペシャリストのどちらを目指すのか?も悩みの種です。
製薬会社によっては、抗がん剤のみのMRがいたり、抗生剤、糖尿病と、それぞれ
専門性を持った活動を行っていたりする会社があります。しかしながら、同じ会
社の薬であっても他の分野に関しては全然分からないといった事態にも遭遇する
わけです。これが、薬剤師にも通用するのでしょうか。病棟患者の場合、病棟に
よって患者のカテゴリーが分けられています。そういう環境下では最低限の一般
知識と特化した各病棟の知識を持っているスペシャリストが必要でしょう。外来
投薬時では、他の科から処方されている薬や、OTC(g)との相互作用の知識に
豊富なゼネラリスト薬剤師が必要なのではないでしょうか。もっとも、理想は完
全無欠な薬剤師なのですが。

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⑤ 有床診療所の薬剤師として
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私が勤める山王メディカルプラザでは昨年より外来化学療法を開始しました。今
まで抗がん剤治療にそうそう関わったことが無かった私には猛烈な勉強が必要で
した。使用するレジメンの内容に始まり、ホルモン療法薬や分子標的薬といった
様々な薬効・薬理の知識から、”アジュバント(h)”といった基本用語まで全
然知らない状態でした。しかしながら、診療所サイズの外来化学療法を標榜する
オンコロジーセンター設立(i)に対して、私に何が出来るか、どう貢献できる
か?が、勉強する礎となりました。「何かあったら危険だから」といった自己防
衛だけではなく、患者のための努力が必要で、その積み重ねが自分に対しての自
信や周りとの信頼関係構築に繋がると考えています。抗がん剤併用療法検討会
(j)の傍聴や、文献等を読む事で知識を増やす努力を少しでもしていますが、
知らない治療法、知識はまだまだあり、勉強しても勉強しても終わらず、すれば
するほど勉強したい事柄がどんどん増えてしまって逆に困ってしまっている現状
です。

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⑥ 薬局より出でて他部署の人とも話そう。
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薬剤師は勉強する事を放棄してしまったのでしょうか?私はそうは考えません。
やはり、入職当時はやる気に満ち溢れていた事でしょう。それがいつの間にか忙
しさにかまけ、日々は流れ、勉強する機会を逸してしまっただけだと思います。
知識は、生かせる場所があっての知識です。薬剤師同士、先輩でも後輩でも。出
来れば医師を始めとした専門者と医療知識について話が出来る関係を構築するこ
とが出来たら。と、願います。なぜなら、私自身がオンコロジーセンター設立と
共に勉強を始めたようなにわか薬剤師なのですから。私は、医師や他のコメディ
カルに、薬に関して薬剤師と会話を交わして頂きたいと願っています。薬や造影
剤、検査薬について質問する薬剤師がいたら相手をし、ちょっとでもそれにまつ
わる患者の話をして頂きたい。その上、出来ることならその話に繋がるような別
の話か最新の話をして頂きたい。ついさっきMRから聞いた話でも、経験した話で
もネタでもいいのです。薬剤師が持っている頭の中でのみ存在していたバーチャ
ルな知識が、話をする事で現実と繋がり、次の新しい知識のために勉強しようと
いう意欲となるのです。そんな他愛も無いことで、薬剤師は自分が勉強して得た
知識に対して大事さを感じ、自信が持てるのです。

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⑦ 最後に
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薬剤師の職種としての必要性は多岐に渡っています。保健所といった衛生上の観
念から薬の管理、調剤といった直接薬に関わる職業まで様々です。その中でも時
代の必要性として求められているのが臨床薬剤師だと思います。危険性の低い薬
を扱う薬剤師に類した資格が作られる仕組みが検討(k)されているそうですが、
薬剤師は薬の専門家として自信を持って働いて欲しいです。薬剤師は患者へ情報
を伝えていますが、実際のところ私達は患者に教わる事が沢山あります。彼らは
実際に薬を飲んでいる薬の専門家なのですから。患者と接する時にも知識の種が
転がっていないかな?と、考えながら仕事をし、種が見つかったならば勉強によ
る肥料によって育ててつぼみとし、つぼみは現場で生かす事によって咲き誇り、
その経験は知識の実となるのです。その実の中から、ちょっとでも他の人のため
に種を分けてあげて下さい。その繰り返しが職業の発展に結びつくのです。薬剤
師に期待されている事は、こんな簡単で楽しく学ぶ事によって増やした知識を患
者に還元する事ではないでしょうか。
a 日経DI:日経BP社発行の月刊誌
b 明治薬科大学HPより、平成13年度の実績から。
c 薬学教育の改善・充実について(報告)要旨:中央教育審議会 大学分科会 資
料1
d モデル・コアカリキュラム:日本薬学会 薬学教育モデル・コアカリキュラム
e 横浜総合病院 横浜市青葉区 病床数300床
f 糖尿病療養指導士:日本糖尿病療養士認定機構
g OTC:ドラッグストア等で販売している、購入するのに処方箋を必要としない
一般薬のこと。
h アジュバント:adjuvant
i Mebio Oncology Spring Vol.1 No1/MEDICAL VIEW社刊 参照
j 抗がん剤併用療法検討会:厚生労働省医薬食品局審査管理課による検討会
k 2004年3月30日厚生労働省より発表

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