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vol 13 EBM & PIR

医療ガバナンス学会 (2004年7月11日 16:01)


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今回は、EBM にまつわるお話(①)と最近出された nature immunology の解説
(②)の2報です。

①臨床研究~倫理性、科学性、信頼性~
②Paired immunoglobulin-like receptor :PIR 解説

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①臨床研究~倫理性、科学性、信頼性~

東京大学医学部附属病院 齋藤明子
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1. 背景
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近年、臨床研究への関心が急速に高まってきている。この背景には、
evidence-based medicine(根拠に基づく医療 以下EBMと略す)の普及と、新薬開
発の為の国際的ハーモナイゼーション活動の活発化が深く関与している。両者に
ついて概説した後、医師が主体となって行う臨床試験の必要性が生じた経緯と臨
床研究に必要な、倫理性・科学性・信頼性について紹介する。

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1-1. EBMとは
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EBMの起源は19世紀半ばに遡り、1990年代初頭にSackett D.L.らにより提唱され
た。著書Clinical Epidemiology 1)や論文2)が公表された後、指数関数的に広ま
り、2004年6月16日現在、文献データベースPubMed3)でEvidence-based medicine
[MeSH] で2004年の文献を検索すると、約半年の間に1361件の文献があがる程に
普及してきていることが分かる。
EBMは、原文において次のように定義されている。
「Evidence-based medicine (・・途中省略・・) is conscientious, explicit
and judicious use of current best evidence in making decisions about the
care of individual patients.
(和訳は筆者の私見によるもの、あくまで参考にされたい);個々の患者の診療に
関する意思決定を行うにあたり、現時点において、利用可能な最良の科学的根拠
(Evidence)を、良心的に(吟味して)、系統立てて(考え)、慎重に利用すること)」
Sackett DLは、EBMを医療現場で実践するために重要な5つのステップについても
紹介しており、大変興味深い。

Step 1
問題の定式化;患者の臨床上の問題点を抽出し、回答可能な質問形式に変換する。

Step 2
根拠の探索;問題に回答するために、文献、その他の情報源から、科学的根拠の
ある情報(evidence)を最大限収集する。

Step 3
批判的吟味;得られた情報について、妥当性(試験の質を含む)、有用性を批判的に評価する。

Step 4
問題への適応;検討結果を、自分の臨床専門技能と統合させ、患者診療場面へ適用する。

Step 5
事後評価;実行した内容を事後的に評価する。

すなわち、あやふやな個人の臨床経験や感覚に基づく医療ではなく、豊富な臨
床経験に基づく専門的技量に、科学的な実験や統計学的根拠を基にして批判的な
検討を加えて吟味された情報(Evidence)を加味し、これを統合させて実際の患者
に適用することこそが医師・医療従事者に求められているものであるということ
が理解できる。
では、Evidenceとは何か? これは、個人が所有する知識や経験、感覚などによ
らない全ての情報といえるが、最も身近なものから紹介すれば、指導医・専門医
などからの助言、教科書などに記載されている事柄、引用可能な文献等より得ら
れる最新の情報などがこれに相当する。特に、臨床現場で応用されるものが多い
為、臨床研究/疫学研究に関係するものが重要視されており、これらEvidenceの
Levelについては、米国の厚生労働省にあたるDepartment of Health and Human
ServicesのAHRQ4)(Agency for Healthcare Research and Quality、旧AHCPR;
Agency for Health Care Policy and Research)から提示されている以下の定義
が参考になる。尚、以下は’質が保たれている’ことが前提条件となっているこ
とは言うまでもない。

Ia システマティックレビュー/メタアナリシス
Ib ランダム化比較試験
IIa 非ランダム化比較試験
IIb その他の準実験的研究
III 非実験的記述研究(比較研究、相関研究、症例対照研究など)
IV 専門委員会、権威者の意見

EBMの実践の為に信頼できるEvidenceの確立は最重要課題であり、そのEvidence
を生成する為に質の高い臨床研究が重要な役割を果たすということが、以上から
お分かり頂けるかと思う。

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1-2. 新薬開発に関する国際的ハーモナイゼーションの動きについて
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臨床研究には、症例報告、ケースシリーズ研究、ケースコントロール研究、コホー
ト研究などの後ろ向きに行われる調査・観察研究の他に、医薬品、医療用具、外
科手術、放射線治療などあらゆる治療法、予防法の評価を目的とし、多くが介入
を伴う、主に前向きに行われる臨床試験がある。臨床試験は、企業主導の臨床試
験と、医師・研究者主導の臨床試験に大別できる。企業主導の臨床試験は、医薬
品などの開発段階により、更に細分化する事が出来る。未承認医薬品・医療用具
の開発、輸入承認を目的とした申請のための臨床試験が’治験(以下、企業主導
の治験と記す)’であり、既承認医薬品・医療用具の市販後の再評価、安全性情
報の補充を目的とした臨床試験が’市販後臨床試験(以下、企業主導の市販後臨
床試験と記す)’である。一方、医師・研究者主導の臨床試験においては、これ
まで保険医療機関(特定承認保険医療機関を含む)や保険医が保険診療を行う上で
守らなければならない基本的な規則を具体的に定めた厚生労働省令である、保険
医療機関及び保険医療養担当規則の第19条において、未承認医薬品などの研究的
使用が禁止されてきた為、未承認医薬品・医療用具を用いた治験(以下、医師主
導の治験と略す)を行う事はできず、既承認医薬品・医療用具を用いて標準的治
療法の確立を目的とした臨床試験、すなわち自主研究のみ、自主的に、あるいは
公的研究費を得て行われてきた。
近年、優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と、患者への迅速な提供
を図るため、承認審査資料の国際的ハーモナイゼーション推進の必要性が指摘さ
れ、品質、安全性及び有効性の3分野でハーモナイゼーションの促進を図るため
の活動として、1991年に日・米・EU三極医薬品承認審査ハーモナイゼーション国
際会議(International Conference on Harmonization of Technical
Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use、以下ICH
と略す)が組織された。三極各地域から政府・規制当局及び製薬工業界の専門家
を集め、様々な観点から医薬品の承認申請に係る諸問題を検討し、医薬品の臨床
試験実施基準に関する国際的標準化を図るための活動が行われ、各種共通ガイド
ラインが作成されてきている5-8)。ICHの流れから、我国においても臨床試験の
実施体制や基準が整備されてきており、各種省令や関連通知などが策定されてき
ている。しかし、これらはいずれも企業主導で行われる臨床試験のみに適用され、
医師主導で行われる臨床試験は、例え、研究の遂行や成果の発表に関わるデータ
の捏造、改竄、盗用などが行われた「科学的不正行為 (Scientific misconduct)」
に基づくものであっても、何ら法的な規制(罰則)を受けることなく、全て医師
・研究者の裁量に任された形で行われてきた。

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1-3. 医師主導の治験・臨床試験の必要性
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海外では治療に有効である事が認められながら、日本国内で承認されていない医
薬品は少なくない。造血幹細胞移植領域においても、移植前処置薬剤としての適
応が取れているものはメルファラン、エンドキサン、治療関連の予防投与薬剤と
しての、ゾビラックスや硫酸ポリミキシンなどごく一部に限られているのが実情
である。適応外使用の医薬品が多く、造血幹細胞移植領域の未承認医薬品の開発
に、企業が消極的であった可能性が考えられる。将来的に市場が確保されない領
域で使用される医薬品の開発を目的として、あえて多額の費用をかけて治験を行
うことは、企業にとって不利益に繋がる可能性が高いことがこの理由として考え
られる。未承認医薬品の開発を目的とした臨床試験を新地域で繰り返すことは非
効率的であるとの考え方から、新地域において未承認医薬品の承認の根拠をなす
データの全て、あるいは一部として外国の臨床データ受け入れるための方策も出
されているが、これは民族学的要因に差異がない事が確認されている場合にのみ
適用可能であり、必要な情報が不足している場合は、やはり企業主導の治験が求
められることになる9)。
このように医薬品開発に必要な臨床試験のうち、営利企業が行い難い臨床試験の
領域があることに着目し、この打開策として’医師主導の治験’の概念が生まれ、
この内容を盛り込んだ改正薬事法が、「薬事法及び採血及び供血あっせん業取締
法の一部を改正する法律(平成14年7月31日 厚生労働省発医薬第0731011号)」
10)として施行された。そこで、医師主導で行う臨床試験実施体制に必要な倫理
的事項をまとめた「臨床研究に関する倫理指針(平成15年7月30日 医政発第
07300009号)」11)、及び医師主導の治験を実施するための基準についてまとめ
た「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改正する省令の施行に
ついて(平成15年6月12日 医薬発第255号)」12)が策定された。
このように、国内外で臨床試験を行うための基盤が徐々に整備されつつある中で、
臨床試験の方法論に対する関心が高まってきていると考えられる。

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2. 臨床研究の倫理性、科学性、信頼性
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理想的な臨床研究は、臨床研究に組み入れられた患者一人一人の生命や健康へ
の配慮が十分になされ(倫理性)、将来の患者に有効性・安全性の面から最も適切
な治療法が何であるかを明らかにするために(倫理性)、十分に吟味され、科学的
に計画された臨床研究(科学性)が、しっかりとした組織において遂行され、解釈
され(信頼性)、世に出されることである。このことからも、倫理性、科学性、信
頼性が、臨床研究を行う上で重要な3要素であることが容易に理解できるであろ
う。

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2-1. 臨床研究の倫理性
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倫理性とは、臨床試験の被験者の生命や健康への配慮を意味する。つまり、十
分に練られたプロトコールを作成することに始まり、臨床研究の実施施設毎に十
分に吟味され、インフォームド・コンセント(臨床研究の目的や内容を十分に説
明した上で、患者自身の自由意思による同意を得ること)の手続きが適切に取ら
れ、臨床研究が真摯に遂行されることの全過程において配慮されるべきである。
歴史的には、第二次世界大戦下に行われたナチスの残虐人体実験に対し、米国が
裁いた「ニュールンベルグ裁判」を基に「ニュールンベルグ綱領」13) がまとめ
られたことが有名である。その後、世界医師会World Medical Association(WMA)
が「ヘルシンキ宣言(1964年)」14)としてその精神を受け継ぎ発展させ、以後
2002年10月の米国ワシントンでの総会までに計6回の修正、追加が行われて改良
が加えられてきた。「ジュネーブ宣言」において「私の患者の健康を私の第一の
関心事とする」ことを医師に義務付け、「医の倫理の国際綱領」において、「医
師は患者の身体的及び精神的な状態を弱める影響をもつ可能性のある医療に際し
ては、患者の利益のためにのみ行動すべきである」と宣言したという経緯からも
明らかなように、「ヘルシンキ宣言」では、「医学の進歩は、最終的にはヒトを
対象とする試験に一部依存せざるを得ない」と明示した上で、臨床研究に携わる
あらゆる研究者が遵守すべき倫理基本原則が述べられている。他にも世界保健機
構(World Health Organization ; WHO)と国際医科学機構協議会(Council for
International Organization of Medical Science ; CIOMS)によるCIOMSガイド
ライン15)や、ICHのガイドライン16)、ベルモントレポート17)などがあり、参考
になる。

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2-2. 臨床研究の科学性
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科学性とは、着目している治療法(あるいは予防法)の有効性・安全性を正しく評
価することを意味する。すなわち、臨床研究の計画段階から、最終結果の公表に
至るまでのあらゆる作業過程が、論理的に組み立てられ、客観的に妥当であり、
信頼性の保たれたものであるということが必須条件となる。目的に合致した方法
論を採用しなければ結果の解釈が困難になるし、正しいデータの収集管理がなさ
れなければ、正確な結論が得られないということは容易に想像がつくであろう。
今回は紙面の都合上、筆者がデータセンターで試験開始前にプロトコールを吟味
する際、多く遭遇する問題点に絞って紹介する。

1. 臨床研究を計画するに至った背景を、現時点での網羅的な知識に基づき、
論理的にまとめる。過去の類似のプロトコールに記載されている背景部分をその
まま貼り付け、これに数行追加して完成させただけのプロトコールをよく目にす
る。過去の研究に学ぶ所が多いことは確かだが、新たな知見や、過去の知見に関
する解釈など、改めて十分な吟味を加える必要があると考える。

2. 次に臨床研究の目的を明確に表現する。背景について十分な知見が確認
できれば、目的は自ずと明確になるはずである。Sackett DLに倣い、yes/noでの
回答が可能な問題の定式化を行うことが望ましいと考える。

3. 目的を達成する為の適切な評価項目を設定し、明確な定義と共に記載す
ること。例えば、血液領域でよく見られる白血球や血小板の回復日を評価する場
合、G-CSF製剤の使用有無、輸血歴、検査値のバラツキを考慮した明確な定義を
定めなければ、適切なデータが集められないことになる。

4. 評価項目を正確に把握するための適切な方法をプロトコールに明確に記
載する。例えば、評価項目に影響を及ぼす可能性のある併用禁忌医薬品などの規
定が明確に示されていなければ、得られたデータの評価が困難になる。

5. 評価項目の統計解析方法を生物統計家の協力の下に決定する。解析手法
の誤用は誤った解釈に結びつく為、専門家の協力は不可欠である。

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2-3. 信頼性
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臨床研究がヒトを対象としたものである以上、軽率に再試、追試が繰り返される
ことは避けなければならない。そこで1つの臨床研究から得られる結論が、十分
信頼に足るものであることを裏付ける為に、工業の分野で製品の精度管理の考え
方として採用された信頼性調査の手法が臨床研究の分野で応用されている。信頼
性調査には、大きく品質管理と品質保証がある18)。
品質管理は、「結論をゆがめるエラーを少なくするために、見つけたエラーの修
正・及び原因究明をすることで、以後の同じエラーを予防する事を目的とした同
時的・介入的活動」を指す。臨床研究進行中に問題点を明らかにし、以後同じエ
ラーが起こらないように各施設にフィードバックしつつ、臨床研究をプロトコー
ル通りに推し進める事が目的である。品質管理の具体的作業としてモニタリング
があり、登録の進捗・データの正確性・有害事象の頻度や程度・不適格症例やプ
ロトコール逸脱の監視などを行なう。モニタリングはさらに、データセンターで
データのチェックのみを行なう中央モニタリングと、実際に参加施設に出向いて
データをチェックする施設訪問モニタリングがある。
一方、品質保証は、「処理が正しくなされたことにより結論が正しい事を間接的
に示す」ことで、品質管理が正しく行なわれたことを保証するための、事後的、
観察的(非介入的)活動である。品質保証の具体的作業として監査がある。施設に
対する監査では、調査票と原資料を照合し(調査票に記載されたデータが患者の
正確なデータに基づくものであることを確認する作業)、インフォームド・コン
セントの書類や倫理委員会の書類の確認などを行う。データセンターに対する監
査では統計解析部門でのデータ修正履歴や解析プログラムなどが監査の対象とな
る。臨床試験グループの監査は、問題点をフィードバックすることにより、試験
の質向上にもつながるとされ、品質管理の側面も有する。

参考文献
1)Sackett DL, Haynes RB, Tugwell P, Guyatt GH: Clinical Epidemiology: A
Basic Science for Clinical Medicine, 1991
2)Evidence-based medicine. A new approach to teaching the practice of
medicine. Evidence-Based Medicine Working Group.  JAMA. 1992 Nov
4;268(17):2420-5
3)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/
4)http://www.ahrq.gov/
5)International Conference on Harmonisation of Technical Requirements
for Registration of Pharmaceuticals for Human Use. ICH Harmonised
Tripartite Guideline. CLINICAL SAFETY DATA MANAGEMENT: DEFINITIONS AND
STANDARDS FOR EXPEDITED REPORTING. Recommended for Adoption at Step 4 of
the ICH Process on 27 October 1994 by the ICH Steering Committee, 1994.
(ICH-E2A)
6)International Conference on Harmonisation of Technical Requirements
for Registration of Pharmaceuticals for Human Use. ICH E2BM EWG. DATA
ELEMENTS FOR TRANSMISSION OF INDIVIDUAL CASE SAFETY REPORTS. Revised E2B
Step 4 dofument Version4.4.1 – 5 February 2001 (ICH-E2B)
7)International Conference on Harmonisation of Technical Requirements
for Registration of Pharmaceuticals for Human Use. ICH Harmonised
Tripartite Guideline. CLINICAL SAFETY DATA MANAGEMENT: PERIODIC SAFETY
UPDATE REPORTS FOR MARKETED DRUGS. Recommended for Adoption at Step 4 of
the ICH Process on 6 November 1996 by the ICH Steering Committee, 1996.
(ICH-E2C)
8)International Conference on Harmonisation of Technical Requirements
for Registration of Pharmaceuticals for Human Use. ICH Harmonised
Tripartite Guideline draft. POST-APPROVAL SAFETY DATA MANAGEMENT:
DEFINITIONS AND STANDARDS FOR EXPEDITED REPORTING. Recommended for
Adoption at Step 2 of the ICH Process on July 18, 2003 by the ICH
Steering Committee, 2003. (ICH-E2D)
9)International Conference on Harmonisation of Technical Requirements
for Registration of Pharmaceuticals for Human Use. ICH Harmonised
Tripartite Guideline.ETHNIC FACTORS IN THE ACCEPTABILITY OF FOREIGN
CLINICAL DATA. Recommended for Adoption at Step 4 of the ICH Process on
February 5, 1998 by the ICH Steering Committee, 1998. (ICH-E5)
10薬事法及び採血及び供血あっせん業取締法の一部を改正する法律について(厚
生労働省発医薬第0731011号、平成14年7月31日)
11)臨床研究に関する倫理指針(厚生労働省告示第255号、平成15年7月16日)
12)医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改正する省令の施行に
ついて(医薬発第0612001号、平成15年6月12日)
13)http://onlineethics.org/reseth/nuremberg.html
14)http://onlineethics.org/reseth/helsinki.html
15)World Health Organization: International Ethical Gudelines for
Biomedical Research Involving Human Subjects. ’93., World Health
Organization, Geneva, 1993
16)国立医薬品食品衛生研究所 ICHガイドラインと関連情報
http://www.nihs.go.jp/dig/ich/ichindex.html
17)津谷喜一郎、栗原千絵子訳:ベルモントレポート. 臨床評価26 : 387-390,
1999 (Office for Protection from Research Risks :
http://ohrp.osophs.dhhs.gov/humansubjects/guidance/belmont.htm)
18)福田治彦 : 臨床試験の方法論 総論:臨床試験の倫理と科学.  分子がん治
療 1(1) : 63-68, 2000

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②PIR 解説
九州大学 豊嶋崇徳
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同種造血幹細胞移植は白血病・リンパ腫、再生不良性貧血などに治癒をもたら
しえる有効な治療法であるが、最大の問題のひとつは、致死的な合併症である
graft-versus-host disease (GVHD)の発症を移植前に予測できず、いったんおこっ
てしまうと治療が困難で、生活の質が低下し、致死率も高いことである。このG
VHDは、ドナーT細胞がレシピエントの抗原提示細胞上に発現された非自己抗
原を認識し、レシピエントの組織を攻撃する免疫学的な反応である。輸注された
ドナーT細胞は、レシピエントのリンパ組織に存在する抗原提示細胞に出会って、
接着し、お互いに活性化しあって、キラーT細胞へと分化するのだが、このステッ
プでの刺激の強弱により、その後のGVHDの発症の有無とその重症度が規定さ
れると考えられる。これを規定する因子として、リンパ組織での局所的なサイト
カイン環境や、T細胞―抗原提示細胞間における多数の副刺激系がしられている。
数年前、ハーバード大学のグループを中心にして、T細胞上のCD28分子と抗
原提示細胞上のB7分子の副刺激系相互作用をブロックするためのCTLA4-
Igの投与がHLA不適合間移植における臨床試験として実施されたのも記憶に
新しい。しかしその効果は不十分であり、単一の経路の遮断だけではGVHDの
コントロールは困難と考えられ、さらなる研究が続けられている。

最近、これに関する新たな可能性が東北大学のグループによって報告された[1]。
免疫グロブリン様受容体(Paired immunoglobulin-like receptor :PIR)は抗原
提示細胞などに発現されている分子であるが、その生理的な意味はこれまで、よ
くわかっていなかった。この受容体はAとBとのペアで存在し、PIR-Aを介する
刺激は抗原提示細胞を活性化し、PIR-Bを介する刺激は抑制する。東北大学のグ
ループは、主要組織適合抗原(MHC)クラスI分子がこれらのリガンドである
ことを発見した。すなわち、MHCのリガンドとして従来からしられていたT細
胞受容体(TCR)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)につぐ第三のリ
ガンドが見つかったわけである。次に、この相互作用が生体で意味のあるもので
あるかどうか、マウスの骨髄移植モデルにおいて検討された。PIR-Bの欠損マウ
スではPIR-Aを介する刺激のみが伝達されるため、ドナーT細胞上のMHCクラ
スI分子とホストDCのPIR-Aとの相互作用により、ドナーT細胞はより活
性化された。その結果GVHDの重症化が観察された。この結果からPIR-AとMHC
分子の相互作用を抑制すること、あるいはPIR-BとMHC分子の相互作用を強化
することが新たなGVHD抑制法になる可能性が示された。その臨床応用のため
には、今後、さまざまなGVHDモデルでその効果を確認する必要があると同時
に、効果的な相互作用を阻害する薬剤の開発が必要となると考えられる。わが国
からこのような重要な知見が世界に発信できたことは素晴らしいので、さらなる
研究の継続が望まれる。

1 Nakamura A, Kobayashi E, Takai T; Exacerbated graft-versus-host
disease in Pirb-/- mice.Nat Immunol. 2004 Jun;5(6):623-9. Epub 2004 May
16.

 

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