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Vol.211 現場からの医療改革推進協議会第十六回シンポジウム 抄録から(4)

医療ガバナンス学会 (2021年11月11日 06:00)


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2021年11月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十六回シンポジウム

11月27日(土)
【Session 04】コロナと医学教育 15:20~16:10(司会:尾崎 章彦)

●医療ガバナンス研究所での活動を通じた東京・福島での出会い
田中愛翔 (東京大学理科三類1年)

私は今年の春に東京大学理科三類に入学しました。新型コロナウイルス感染症の流行により、当初から授業の多くはオンラインで行われており、体育の授業とサークルの練習に出席するために週2~3回程度のみキャンパスに行っていました。そして空いた時間で、高校・大学の先輩である上昌広氏が代表を務める医療ガバナンス研究所に顔を出すようになりました。
医療ガバナンス研究所においては、様々な分野の一流の方々の講義を聞くことができました。また、福島県相馬市へも新型コロナワクチン接種の手伝いに合計3週間ほど行き、相馬中央病院や相馬市役所の様々な方にお世話になりました。現地では一人で、海、街、山それぞれの地域の住民の方から震災当時の話を聞きました。接種の手伝いを行った経験については、福島民友新聞の読者投稿欄において紹介していただくことができました。
今回の私の発表では、これまでの5ヶ月間にわたる医療ガバナンス研究所での活動を通して、東京・福島で出会い、私の印象に残った方々についてご紹介したいと考えています。

●COVID-19パンデミック下のオンライン医学教育についての医学生の認識調査
鈴木智也 (秋田大学医学部医学科5年)

医学部に編入して以来、集団授業による詰め込み医学教育に対して、疑問と関心を抱くようになった。そこで、医療ガバナンス研究所の調査したコロナ禍における医学教育に関するインタビュー結果の解析を担当し、「COVID-19パンデミック時のオンライン医学教育に関する各国の学生の認識」というテーマで論文を書かせていただいている。以下にその要旨を記します。
COVID-19が流行する中、教育機関は対面からオンラインへと移行している。本研究では、COVID-19パンデミック下の日本と海外におけるオンライン医学教育についての医学生の認識を調査した。
調査方法は、日本の医学生13名と、スロバキア、ノルウェー、ハンガリーの医学生5名を対象に、オンラインインタビューを実施した。インタビューは2020年9月23日から10月3日にかけて、スノーボールサンプリング法を用いて行われた。主に1)オンライン教育の種類、2)オンライン教育の利点と欠点、3)教師、友人、家族とのつながりの変化、4)オンライン教育のさらなる改善に関する意見、5)特定の大学への所属の必要性、について質問が行われ、テーマ分析を行った。
テーマ分析の結果、テーマ1は、通学時間のなさや録画授業の繰り返し視聴などの意見から「時間の節約と学習時間の柔軟性」となった。テーマ2は、インターネット環境不備や教員の不慣れなどが目立ったことから「技術的な問題とデジタルスキル」となった。テーマ3は、授業の質にばらつきがあったことから「標準化されていない教育」となった。最後はテーマ4、「医学部での講義以外の経験の喪失」である。特に研究活動や部活動などの人的交流が止まってしまい、本来の大学在籍の意義に疑問をもつ学生もいた。
コロナ禍でオンラインや対面授業が一般化していく中、本研究を通して今後のオンライン教育のあり方を考えるきっかけになることを願っている。

●学生、経験し、感じ、そして考える。
大本優花 (広島大学医学部医学科5年)

大学1年生の時、このまま講義とテストの繰り返しで学生生活の6年間を終えて医師になることに、ふと恐怖と焦燥感を覚えた。
そんな中、学生自らでフィールドワークを行うサークルを立ち上げた先輩の「大学の外に出よう」というテーマのプレゼンを聞き、それらを解消したくて、なんとなくそのサークルに入ることにした。学生だけで興味を持った施設にアプローチし、実際に見学をさせてもらう。この一連のフィールドワークによって、とても世界が広がった。実際に様々な施設を見学させてもらえたことで、自身の無知を知った。そして全てを学生だけで行うことで、案外なんでもできるかもしれないという感覚を得た。今までなんとなくで物事を捉え、決めていたところに「考える」という作業を覚えた。考えられるようになると、医療というとても大きな領域の中で自分が何をしたいのかがわからないことに気づき、そのことにまた焦燥感を覚えた。
さらにCOVID-19の影響を受け、何もできずに時間を過ごしていたところ、知人の紹介でMNESの存在を知り、所属することになった。そこでオンラインでも活動できる手段を得てMNiSTという学生団体を立ち上げ、大人と交流する機会も得た。また、世界が広がった。
学生だけのサークル活動でも同様の体験をしたため、より鮮明に感じることがある。大人が傍にいる環境の方が、世界が広がる「加速度」が大きい。また、MNESの大人は夢を語ってくれる。それがとても楽しい。今までも大人の話を聞く機会はいくらかあったが、そのどれもが講義や経験談であった。大きな夢を持って前を歩いている大人の背中を身近で見ていると、焦燥感の代わりに期待感を覚えるようになった。これからもこの環境に対する感謝を忘れることなく、その背中に追いつけるように日々邁進していきたいと心の底から思う。
MNiSTでも学生だけで様々な企画をし、実行まで行なっている。一連の流れはほとんどサークル活動と変わらないが、MNiSTでは大人が傍にいて壁にぶつかったときには、必要なチップを与えてくれる。そのチップを受け取り損ね、失敗したり、遠回りをしてしまっても、受け止めてくれる。その程よい距離にある大人の視点は、自分たちが「学生であるからこそ」できることを明確にしてくれる。これらのサポートを受け、MNiSTで今私達が何をしているのかについての詳細をお話ししたい。

●診療主役型臨床実習のすすめ
徳田安春 (群星沖縄臨床研修センター長)

我々の調査で、コロナ禍の日本において、発熱外来の診療にあまり参加していなかった初期研修医がかなりいたことがわかった。一方で世界的には、コロナ感染症の診療現場はTeachable Momentになっていた。研修医も不確実性の中で医の倫理原則に従い、プロフェッショナリズム、医療の質、患者安全を目指して診療している。医学生の卒業を特別に前倒しして、希望者に限り診療に参加してもらった国もある。
リソース不足の危機的状況での医療資源の分配など、コロナ禍では生命倫理のジレンマも浮き彫りになり、現場での実体験となる。教育者はこのような倫理的なジレンマケースについて、医学生や研修生に積極的に教えることができる。100年に一度のパンデミック時に診療に参加できることは、同時代を生きた医療者としての一生ものの経験なのだ。
日本の医療レジリエンスは弱かった。保健所によるトリアージが厳格に行われた地域では自宅療養中の急変事例が続出した。救急搬送を含め、患者さんの受け入れは原則断るべきではない。入院病棟のベッドが満床だからとの理由で機械的に救急搬送を断るということはあってはいけない。
症状の程度によっては救急室の処置用ベッドがあればそこで初期の診断と治療を行うことができる。その後に入院が必要であれば、病院連携室から後方病院に医師同士で相互連絡し、入院をお願いすればよい。患者に受診遮断のリスクを負わせてはならない。保健所にトリアージを行わせるのではなく、地域医療の情報ネットワークを持つ病院間連携で診療を行うのだ。初期研修医のときに、患者受け入れを積極的に行う病院で訓練を受けると、その後の診療スタイルでも同じような姿勢が続く。
我々は全国で闘魂外来を実施している。救急外来で医学生も主役の一人としての役割を与える、リアル診療の実習だ。患者さんや医療チームと最大限に協働するために、自分自身との闘いを意味する闘魂が必要だ。体制は指導医1人、研修医1人、医学生3人で1チームのチーム医療である。フィジカルではリアルタイムに診察指導が入る。各患者さんの診察後には指導医や研修医とのディスカッションが行われる。医学生は鑑別診断と必要な検査を挙げ、その場で指導を受けてフィードバックを受け、検査結果が出たらその解釈もさせられ、検査結果に応じた治療方針も聞かれる。輸液療法では、どのような種類の輸液製剤を選択するか、そしてその根拠は何か、さらには投与速度も聞かれるのだ。
さあ、医学生のみなさん、このような世界標準の実習が受けられるように、我々と共に政府へ働きかけてみないか?

●大学入試の現在地 ~医学部人気が入試を変える?!~
藤井健志 (代々木ゼミナール 講師)
藤井聡子 (高校生1年生)

2021年1月、コロナ禍の中で共通テストが導入された。試験まで間もないタイミングで当初予定していた記述問題導入や民間試験活用を諦め、またコロナ禍の影響でその変更点について改めて試行試験等、具体的なかたちでの周知ができない中での実施は、大学側にも受験生側にも大変な負担を課すこととなった。
そもそも「極端な悪問、奇問を排すべきである」という議論の始まりは、団塊の世代が受験生であった1960年代。そこから10年以上の時を要し、共通一次試験が導入されたのが1979年。そのテストも「かえって受験生に過度な負担を強いているのではないか」との批判を受けてかたちを変えることになり、1987~1989年の3年間の「実験期間」を経て大学入試センター試験としてリニューアルされたのは、いよいよ第二次ベビーブーム、団塊ジュニア世代の大学受験が始まるという1990年だった。それから31年。猛烈な勢いで少子化が進み、今後さらに加速することが決定的ともなった今年が、共通テスト導入元年となった。
新テスト導入の度に様々な議論や混乱を招きはしていたが、今回の共通テストに向けての改革とそれへの批判の方向性は、前二者と決定的に違う部分があるように思われる。本シンポではその部分を中心にしながら、医学部受験に与える影響、また医学部進学者に与える影響、そしてそれらが今後全体に与えていくであろう影響についてお話しさせていただく。
また、まもなく受験生となるであろう現役女子高生に、そのような大人たちの思惑とは別次元で、さらに父親への「忖度」のないかたちで、進学を意識した高校生がどのような学びを実践し、それをどのように感じ、考えているかを話すお時間をいただこうと考えている。

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