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Vol.213 現場からの医療改革推進協議会第十六回シンポジウム 抄録から(5)(6)

医療ガバナンス学会 (2021年11月13日 06:00)


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( https://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/ )

2021年11月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十六回シンポジウム

11月27日(土)
【Session 05】震災から十年 16:10~16:25(司会:上 昌広)

立谷秀清 (福島県相馬市長、全国市長会会長)
【Session 06】ポストコロナを考える I -日本の未来をどう構築するか- 16:35~17:45(司会:久住英二)
パネルディスカッション形式

●あなたの知らないFemtechの世界
杉本亜美奈 fermata株式会社Co-founder/CEO)
●人の命に、病の区別も、男女の区別もない ―現場・当事者の悩みに寄り添って、日々前進していきたい―
三原じゅんこ (参議院議員、前厚生労働副大臣)

私はかつて子宮頸がんを患い、子宮を摘出した。がん患者の会や家族の会に支えられて「いのち」を頂いた。自分もみんなを支え、いのちを守りたいと考え、国会議員になった。現場や当事者の悩みに寄り添い、政府に提言を重ねた。昨年9月からは、厚生労働副大臣として、初めて政府の中に入った。
コロナに明け暮れた一年間だった。非正規雇用かつサービス業での勤務が多い女性の生活不安、男女役割分業慣行が根強い中で学校休業やテレワークで生じた女性のストレスなど、コロナ禍にしわ寄せられた女性の悲痛な声を絶え間なく聴いた。平素の課題がコロナで顕在化したとも言え、非正規雇用や孤独・孤立、ひとり親家庭がホットイシューになった。
女性の苦悩は、以前から私達のそばに横たわっていた。女性活躍の波に後押しされて一生懸命働きながら、出産の期待も、不妊の責任も背負う女性たち。不妊治療には膨大な費用。補助があっても、仕事を休めず、治療断念か退職か。不妊治療でやむなく生じる流産。手術のガラパゴス・スタンダードが、子宮を金属で掻き出す掻爬法。身体が傷つき、いよいよ不妊になる悲劇。産みたくても産めない女性の苦しみは、自分も痛いほど分かる。
そして、将来産もうと思っても産めなくなる若年女性を量産する恐れのある、日本の学校・スポーツ、職場。中高の部活でスポーツを頑張る女子は、根性論の指導の中で月経痛を我慢。アスリートのトップですら、いや、トップこそ、無月経が勲章になる世界。低栄養、骨粗鬆症など、一生の健康に大きなリスク。職場の女性の半分も、仕事に影響する月経痛を我慢。養護教諭やスポーツ指導者、産業医でも、女性特有の健康課題について知らない人が多い現状。痩せが多数の女性でも、メタボ健診は義務的実施の一方で、月経痛の問診は医師次第。
さらに、子宮頸がんは毎年、罹患者1万1千人、死者3千人。この病気で、女性だけが毎日8人亡くなっている。命に病の区別はない。コロナが最重要課題だからといって、コロナに「全集中」では国民のいのちは守れない。
子宮頸がんに限らず、がんの治療で生殖能力が落ちる。抗がん剤治療の前に卵子や精子を凍結保存する技術がある。費用は膨大。自費で精子を凍結し、抗がん剤治療を乗り切ったがんサバイバーの若者が、助成制度の新設を私に訴えてくれたときの表情は忘れない。
命に男女の区別もない。「ジェンダー・フリー」と言う前にすべきことはまだまだ多い。厚生労働副大臣としての一年間で実現したことと、宿題として今後取り組みたいことをお話ししたい。

●ポストコロナ時代の働き方とダイバーシティ
浜田敬子 (ジャーナリスト、前Business Insider Japan統括編集長、AERA元編集長)

新型コロナウイルスの感染拡大で日本に起きた大きな変化は、リモートワークの定着だ。最初は緊急事態宣言下でやむを得ず始まった部分も大きく、IT環境整備の遅れから生産性の低下などが指摘された。1年半試行錯誤してもまだマネジメントなども難しさ、若手社員の教育などコミュニケーション面でも課題もある。しかし、これまで進まなかった働き方の改革がコロナを契機に一気に進んだことも確かである。
リモートワークはまず子育てや介護などで時間的制約のある人たちにプラスに働いている。取材した中では、子育てのために時短勤務で働いていた主に女性たちが通勤時間がなくなったことでフルタイム勤務に戻したり、リモートワークができるならと管理職登用試験を積極的に受けるようになったという事例がある。ある大手通信系企業ではこれまでさまざまな施策を試しても男性に比べ女性の方が数ポイント低かった従業員満足度が、リモートワーク定着後は女性の数字が一気に改善したという調査もある。つまり時間と場所に縛られた働き方がこれほど主に女性たちのキャリア、モチベーションに影響していたということでもある。
ある調査によると、若い世代では約7割がリモートワークができる職場で働きたいと答えている。上記のようなワーク・ライフ・バランス上の利点もあるが、それ以上に「主体的に働きたい」という欲求があると感じる。若い世代はコロナ前から「一生一社」という日本型雇用のあり方に懐疑的で、自分でキャリアを考え選択したいという潜在的な欲求が広まっていた。リモートワークによって浮いた時間を副業・複業に当て、収入面の補填だけでなくキャリアの腕試しをしたいという人も増えている。

これは結果的に何を生むのか。例えば、都市で働く人が地方の企業の仕事を複業的に請け負ったり、渋谷区の副業人材のように民間で働く人が公で働くことにもつながり、職場、場面で人材の多様化が進む。今後労働人口が減少していく日本にとって、積極的に促進していくべきことではないだろうか。

●コロナ禍で変化する在住外国人の医療ニーズ
澤田真弓 (メディフォン株式会社代表取締役CEO)

私たちは国内における訪日及び在住外国人患者の対応を支援するため、2014年から医療機関向けに17言語の遠隔医療通訳サービスを運営している。コロナ禍に入り、訪日外国人の対応は激減したものの、新型コロナウイルス感染症拡大により、在住外国人の通訳対応ケースが急激に増加し、現状の当社における通訳対応件数は10倍程度となっている。
医療機関のみならず、保健所や宿泊療養施設の健康観察、PCR検査等、コロナ禍で私たちの生活における医療にかかわる場面は多様になった。特にコロナ禍2年目に入り、企業や団体の予防医療活動において課題感は強まっている。増加する産業医面談、団体でのPCR検査要望、メンタル相談依頼など、当社が多言語という切り口で確認している本領域の変化について、報告する。

●ポストコロナの日本に求められる必要条件
伊藤孝恵 (国民民主党副代表、参議院議員)

新型コロナウイルス感染症は、社会の最も「もろい部分」をあぶり出しました。こういった危機の時、色々な所で引用される18世紀のスコットランドの哲学者トマス・リードの言葉があります。
「鎖の強度は、その一番もろい箇所の強度に等しい。何故ならその箇所が崩れたら、鎖全体がバラバラになって崩れ落ちるからだ」
日本社会のもろい部分とはどこか――。
ステイホームは“家の中の問題”を悪化させました。家計不安は生きる気力や尊厳を奪い、イライラが抑えられずに弱い子どもや家族に手を挙げる者を増加させました。児童虐待対応件数、DV相談件数はコロナ禍で過去最大となり、小中高生の自殺も1978年の統計開始以来、最大となりました。
偏りがちだった女性の家事育児介護の負担や、非正規雇用の雇い止め、シングルマザーと子どもの貧困は自助共助の域をとうに超え、公助の具体策を必要としています。
2019年、国民民主党は参院選の重点政策として「孤独対策」を掲げました。当時はユニーク政策として面白おかしく紹介されましたが、あの時も今も、孤独対策は時代の要請なのだと私は信じて疑いません。
望まない孤独を認識することも、声を上げることもできない子ども達。思春期独特の羞恥心から周囲に助けを求められない、求め方を知らないヤングケアラーたち。孤育による産後うつ、外国人労働者・児童生徒や独居高齢者、不登校、ひきこもり……。今、必要なのは、崩れ落ちそうな彼らに一目散に駆け寄って対策を講じることです。その一人ひとりの命に繋がる糸を、政治が作れない国に、連なる未来はありません。
先ずは、コロナで傷ついた個人や経済を救済するため緊急経済対策を実施すると共に、1996年より実質賃金指数が落ち続ける我が国を、給料が上がる国、子ども達にめいっぱい投資する国にする。自分の国は自分で守る国、正直な政治を行う国にすることが、ポストコロナの必要条件だと思います。

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