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Vol.218 現場からの医療改革推進協議会第十六回シンポジウム 抄録から(10)

医療ガバナンス学会 (2021年11月18日 15:00)


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( https://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/ )

2021年11月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【Session 10】震災10年での健康課題の現状 13:30~14:30(司会:坪倉正治)
●コロナ禍での大学1年目、私が福島県の現場で学んだこと
杉浦蒼大 (東京大学理科三類一年)

私はこの春に上京してきた大学1年生です。コロナ禍の影響で、入学以来、大学の授業はほぼ全てオンラインで開講され、鉄門運動部も活動が休止されてきました。同級生と顔を合わせる機会が非常に少なく、大学生活は私が高校時代に思い描いていた華やかなキャンパスライフとは程遠いものでした。
しかし同時に、ここ半年間の大学の活動制限が私の学業に多大な恩恵をもたらしたと実感しています。キャンパスへの通学の必要が無くなったため、学期中にオンライン講義と並行して医療現場に赴くことが可能になりました。実際に、様々な御縁を賜り、私はこの半年間福島県を中心に多岐にわたる医療現場に足を運ぶことができました。
5月と7月には、日本随一の接種スピードを誇る相馬市でワクチン集団接種をお手伝いさせていただき、実務を通してその見事な進行に驚嘆しました。この経験から今後の新型コロナウイルス感染対策に強い興味を抱いた私は、9月から坪倉先生と小橋先生に師事し、主に福島県のひらた中央病院でワクチン接種間隔に関する医学研究をお手伝いしています。
また夏には長期休暇を活かし、抗体検査に用いる採血スピッツの作成や問診表データベースの入力などの事務作業に取り組んできました。今後抗体価などの検査結果が判明し次第、論文執筆にも参加したいと考えています。他にも半年間で数々の貴重な経験をしましたが、これらを通じて、震災とコロナ禍という同じ緊急事態に共通して浮上する医療課題が存在することも学びました。
キャンパスを飛び出して実際の医療現場を訪れたことで、コロナ禍での大学生活は結果的に他では得難く非常に充実したものとなりました。まだ高校生に毛が生えたような大学1年生の私がコロナ禍の下で何に取り組んできたのか、そして何を学んだのか、約半年間の等身大の学業経験をお話しさせていただきます。
●相馬市におけるこころとからだのガバナンス
原田文植 (相馬中央病院 内科医長、福島県立医科大学 災害医療支援講座 助教)
●私が福島でやりたいこと、福島にできること。―たんぽぽプロジェクト―
五月女康作 (福島県立医科大学 保健科学部診療放射線科学科准教授)

震災から10年が経った。次の10年をどう創造していけばいいのか。
福島に行くことが決まってから、そんなことをなんとなく考えておりました。診療放射線技師として、教員として、一人の人間として、何ができるだろうか、そして何をしたいだろうかと。福島が抱えている課題を学生と一緒に考えて動いてまた考えて……まずはそんな場を作ることから始めようと思いました。
そんな折、私が監修をやらせてもらっている漫画『ラジエーションハウス』(集英社)で、放射線を日常的に使用する診療放射線技師に向けられる偏見や誤解を取り上げました。その偏見や誤解は福島の住民に向けられたものと共通するものがあることがわかりました。その繋がりから派生して、環境省が進めている”ぐぐるプロジェクト”のキックオフミーティングで坪倉先生や環境大臣と一緒にお話する機会を戴きました。これからライフイベント(交友、恋愛、就職、結婚、出産)を迎える世代へ向けられた偏見や差別を払拭するために、私ができることは何か。その1つの答えとして「たんぽぽプロジェクト」を提案しました。
偏見の払拭、診療放射線技師の活用、学生との活動、福島から発信、これらをキーワードとしてこのプロジェクトを動かしていきたいと考えています。まだ動き出したばかりですが、本会を福島で長年活動されている多くの方々と繋がる機会にしたいと思っています。
●被災地での新型コロナウイルスに関係した抗体検査
小橋友理江 (ひらた中央病院 非常勤医師、福島県立医大大学 放射線健康管理学講座 博士課程)

私が福島と関わりを持ちはじめたのは数年前だ。福島にゆかりがあった訳ではなく、福島で継続的に地域医療に従事することになるとは思っていなかった。ただ、元々興味があった途上国での勤務や調査の経験を経て、自分はあまり役に立っていないのではないかという思いと共に、社会を良くするような仕事をできるようになりたい、という思いが非常に強くなった。また、以前から、臨床現場を離れることなく、かつ、病院の外にも出て地域の健康問題を改善したい、という思いがあり、そうした仕事の仕方に憧れを持っていた。
このような背景のもと、カンボジアから帰国後の2020年4月より、誠励会ひらた中央病院で勤務をさせていただいている。ひらた中央病院は、震災後にホールボディーカウンターの検査を行うなど、必要な医療のニーズをいち早く拾い上げ医療を提供してきた病院であった。
それはコロナへの感染対策にもついても同じで、発熱外来やPCRセンターの設立、ワクチン接種などが精力的に行われてきた。また、病院と行政の連携が強いのも平田村の特徴であり、そのことが、早くて高いワクチン接種率の達成につながり、住民に利益をもたらした。加えて誠励会は、昨年度のコロナの影響による混乱の中、職員の感染状況を正確に知る為に、継続的に抗体検査を行ってきた。今年のワクチン接種後にも抗体検査が行われ、結果はワクチン接種について不安を持つ住民への説明に利用された。これらの検査は、福島県立医科大学の事業として福島県内の市町村にも拡大され、来年度まで継続的に行われることとなった。
本講演では、「福島県の被災地域における医療者と高齢者の、ワクチン接種間隔と抗体保有率についてのコホート研究」として行われる予定の5回の抗体検査の初回結果を発表させていただきたい。
●福島原発事故に伴う長期的な健康影響とコロナ感染症の類似点について
坪倉正治 (福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座 主任教授)

東日本大震災および福島原発事故から10年以上が過ぎた。これまでの様々なデータから、放射線災害による住民への健康影響は、放射線被ばくによるものにとどまらず、生活・社会環境変化に伴い多面的となることが多くの国際機関でも共有されるようになり、2次的影響(secondary health issues)もしくは間接的影響などと言われる。
事故から時間が経つにつれ、福島原発事故による健康影響は様相を変え、現場は刻一刻と変わっていく課題への対応を余儀なくされた。1)直後の避難対策 2)糖尿病をはじめとする生活習慣病の悪化、高齢化介護需要の増大といった、現在でも長期的な影響が懸念され具体的な対策の継続を必要とするもの 3)避難指示の解除に伴い、今後新たに考慮しなければならない健康の課題 などである。
これらの状況は、新型コロナウイルス感染症が蔓延する現在と重なる。特に発生直後の避難対策は、クラスターや患者が大量発生した病院でのロジや患者さんへの対応の問題と、多くの教訓が共通している。
本講演では、原発事故の様々な影響を俯瞰しまとめ、新型コロナウイルス感染症の現状と比較することで、これまでの教訓と今後の長期的な課題について議論したい。

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