最新記事一覧

Vol.219 現場からの医療改革推進協議会第十六回シンポジウム 抄録から(11)

医療ガバナンス学会 (2021年11月19日 06:00)


■ 関連タグ

*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。
下記、URLからお申込みください。
( https://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/ )

2021年11月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【Session 11】日本の医薬品開発と承認審査  14:30~15:10(司会:谷本哲也)

●コロナ禍における医薬品開発
細田雅人 (インタープロテイン株式会社 代表取締役社長)

COVID-19パンデミック騒動が始まり3度目の冬を迎えようとしている。およそ100年前の1918年に起こったパンデミック、スペイン風邪は、1920年に収束したが、世界人口16億人のうち5000万~8000万人が犠牲になったと記録されている。COVID-19の本体、SARS-CoV-2は、RNAウイルスゆえに膨大な数の変異を繰り返し、Entryに必須なSpike Proteinが巧妙に変異、構造を変え、多臓器に存在するACE2受容体との親和性が増強され感染力が高まって現在に至っている。
致死率が高ければウイルス自体も生存の術を失うが、COVID-19の場合は、国やエリアにより大きな違いがあるものの総じて言えば致死率は極めて低く、スペイン風邪とは比較にもならず、収束には程遠い。特に日本は、ウイルスの生存戦略にまんまと嵌っているように映る。世界人口78億人弱の現在を16億人の100年前と比較しても仕方がないが、今の日本の惨状は、取り返しのつかないところまで来ており、過去何度も困難を乗り越えた国とは思えない程、急速に国力を失い、自信を失い、危険域に入り、出口が見えない。治療薬やワクチンがこの様相を変え得るのかさえも予見し難い。
とは言え、Replicationに必須のメインプロテアーゼ3CLproはその遺伝子がウイルス内で良く保存されており、この3CLpro阻害経口薬の臨床開発が複数企業により行われていることは福音である。一方でワクチンは、その抗原として選定されているのがSpike Proteinであり、ModalityはRNAやDNAなど種々あれどウイルスのEntryの鍵を握る配列、血管壁にあるACE2を蛋白質間相互作用の標的にしているために、短期にはワクチン接種後の血管病変由来の致死や副反応を、長期には重要臓器に発現するACE2との結合で何が起こるのかを、注意深く、世界の動向含め見て行くしかない。
治療薬とワクチンの現状、そして集団免疫はどうなのか、日本が海外と比べどう違うのか、失ったものは何か、その本質的な原因は何か、など、出来る限りマクロの視点で俯瞰的に述べてみたい。
●中絶薬にみる日本の「ドラッグラグ」の実情
辻麻梨子 (東洋経済新報社編集局調査報道部、Tokyo Investigative Newsroom Tansaリポーター)

2020年度、日本国内で行われた人工妊娠中絶は14万5340件に上った。だが、国内で主流の子宮内に器具を入れて胎児や胎盤をかき出す「そうは法」の手術は子宮内膜を傷つけたり、多くの出血が起こったりする恐れがあり、欧米ではすでにほとんど行われていない。費用も高額で、妊娠初期であれば自己負担で10〜20万円ほどかかる。
WHOは2012年に発表したガイドラインで、器具による「吸引法」か中絶薬の使用を推奨した。吸引法は2015年に認可されているが、中絶薬に関しては未だに国内での使用が認められておらず、個人での輸入も制限されている。2010年にはインターネットで購入した中絶薬を自ら服用した女性が、堕胎罪の疑いで書類送検された。
中絶薬は1988年にフランスや中国で承認されて以来、世界70カ国以上で認められてきた薬だ。オンライン診療で処方された薬が、自宅のポストに届く国もある。そうした世界の基準と比較すると、日本の中絶薬承認が恐ろしく遅れていることがわかる。実に30年以上にわたり放置され、日本の女性はより安全な中絶を選択することができない状況が続いているのだ。
治験体制の不備や当局の承認の遅れなどにより、海外で承認されている薬が日本では使用できるようになるまでに時間がかかる状況は、「ドラッグラグ」としてすでに問題視されている。だが制度手続き上の問題だけでなく、政治的な理由も薬の承認を大きく左右している。今回は中絶薬や低用量ピルを例に、その実情について考えたい。
今年に入り、国内でもようやく中絶薬の承認に向けた動きが出てきた。英国のラインファーマが日本で実施した第3相試験により9割以上の確率で中絶できることが確認されたとして、今年中にも承認申請を行う見通しだという。だが薬の価格や使用方法については学会などの関係団体の間で様々な要望も出ており、海外のように患者が主体的に選択できる事になるのかは不透明だ。
●日本の条件付き早期承認制度と「アキャルックス」の問題点
村山安寿 (東北大学医学部医学科4年)

2014年に医薬品の条件付き承認制度が日本で導入されてから、7年が経ちました。条件付き承認制度についてはかねてより、その承認条件の不確かさや薬としての有効性・安全性の検証可能性の低さなどからNatureやScience、Cellなど世界中の主要学術誌が論陣を張り、批判が繰り返されてきました。しかし、日本政府はそうした科学界からの猛烈な批判に一切取り合わず、17年10月、審査対象を再生医療から医薬品全般へと拡大する改変を行いました。この17年の適応拡大までに条件付き承認された再生医薬品はわずか一剤、今なお患者数が足りずに有効性を示せていない、かのハートシートのみでした。その一剤さえ正式に承認されないまま、適応拡大に踏み切ったのです。
抄録を執筆している2021年9月現在までに、条件付き早期/期限付き承認制度によって9つの医薬品が承認されています。9剤のうち、4つは抗がん剤です。その4つの抗がん剤、即ちローブレナ(ロルラチニブ、ファイザー社)、キイトルーダ(ペムブロリズマブ、MSD社)、エンハーツ(トラスツズマブ、第一三共)、アキャルックス(セツキシマブサロタロカンナトリウム、楽天メディカル社)について、日本、米国、欧州での承認状況や承認根拠となった臨床試験を比較しました。
その結果、承認後の安全性・有効性を確かめるための対応は、各審査機関によって様々でした。米国の場合、迅速承認後に検証的第Ⅲ相試験の実施を義務付けていました。また、検証的試験の実施を義務付けられない欧州医薬品庁は、安全性・有効性の評価を承認後に確実に行えるようにするため、第Ⅲ相試験の患者登録が完了した後に承認を行っていました。しかし、同じく検証的臨床試験の実施を義務付けられない日本では、欧州のような工夫はされておらず、アメリカと同時期の承認をすることで米国政府が製薬企業に課した検証的試験の結果を参考にする方式がとられていました。
本シンポジウムでは、日本の条件付き早期承認制度の問題点及び、昨年条件付き早期承認されたアキャルックスの問題点について説明します。

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ