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Vol.220 現場からの医療改革推進協議会第十六回シンポジウム 抄録から(12)

医療ガバナンス学会 (2021年11月19日 15:00)


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( https://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/ )

2021年11月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【Session 12】コロナの医療現場から 15:20~16:40(司会:上 昌広)

●銭は示す コロナ禍の会計分析
上田和朗 (ウエキ税理士法人監査部 部長)

コロナで医療従事者の方々の現場は大変だと思います。JCHO(独立行政法人 地域医療機能推進機構)、国立病院機構、医学部を持っている大学等も実際はどうなっているのか、財務諸表を分析して、実際のところを確認したいと思います。
●コロナ禍における訪問看護
坂本諒 (訪問看護のビジナ 代表)

今夏の首都圏では、新型コロナウイルスに感染し入院できずに自宅療養を強いられた患者が後を絶たなかった。その様な状況下で、感染症法の規制が在宅医療の現場を混乱させた。
8月中旬の土曜の夜、筆者の訪問看護ステーションに、新型コロナ感染によって高熱が続いている患者から電話がきた。「コロナ陽性となり、病院では保健所からの電話を待つように言われたが、一向に連絡はなく、電話をしてもつながらない」とのことだ。東京都が委託している夜間休日コロナ初診のサイトを確認すると、混雑のために受付は全面停止されていた。
医療職として、この依頼は断れないと考えた筆者は訪問し、医師の診察が必要と判断した。普段連携している医師に連絡したところ、心よく訪問診療を引き受けてくれた。その後、容体は悪化し、家族が救急車を呼び、時間はかかったが入院できた。感染確認から6日目だったが、この間に保健所からの連絡はなかった。
ところが、入院が決まった後、保健所の担当者は「誰の指示で、勝手に訪問診療を使ったのだ」と、患者に語気強く問いただした。新型コロナは、感染症法で二類感染症に指定されている。そのため保健所は、医師からの発生届出を受け、全ての陽性者を監視下に置き、自宅療養や入院の調整などを行う義務がある。担当者は、そのルートから外れたことを責めたのだ。
しかし、これは保健所の機能がパンクしているから起きたことだ。感染症法の規定に従
えば、訪問看護ステーションは患者からの直接の求めに応じることはできない。とはいえ、規則だからと電話を切ることは、筆者にはできなかった。
新型コロナとの戦いはしばらく続く。患者から訪問看護ステーションに直接連絡があった場合に、その要請に応える訪問と在宅医療の導入、入院調整等について、訪問看護ステーションから保健所への事後報告を明文化してもらいたい。
●コロナ診療最前線の現場から
大橋浩一 (都立墨東病院 循環器内科医)

2020年2月12日、都立墨東病院は初めての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を、ダイアモンドプリンセス(DP)号から受け入れた。それ以来、度重なる大小の感染の波に揉まれ続けてきた東京都内の数少ない感染症指定医療機関である墨東病院の中で起こっていることを、実際の症例をもとに振り返り、そこから見えてきた今後の課題と地域の感染症診療を含む医療体制のあり方について考えたい。

●コロナを診なければいけないのはいったい誰なのか
和田眞紀夫 (わだ内科クリニック 院長)

医療従事者や高齢者のワクチン接種が進んで一般病院や高齢者施設のクラスターはあまり起こらなくなったが、今度はあらゆる年齢層に感染が拡大して感染者数が増大し、医療体制を整備せずに見過ごしてきたことが改めて浮き彫りになった。来るべき冬のコロナ感染拡大を前に、コロナを診なければいけないのはいったい誰なのか。ここでは「外来」と「入院」に分けでコロナ診療に当たるべき医療を考えてみたい。
町医者がリモート診療で検査や処置が必要と判断しても実質的にはほとんど何もできない。筆者が考えるコロナを診る一番理想の診療所は、病院の外来だ。必要があればすぐにCTを撮ったり、血液検査の結果を出したり、点滴治療や酸素吸入もできるし、さらに必要に応じてすぐに入院に回すこともできるのだから、こんな理想的な「コロナ外来」はない。ところが病院というところは(コロナに限らず)ベッドの空きがない時は、重症患者さんを外来で診ることすら断るのが一般的だ。病院全体が満床になってしまうと救急車の受け入れさえストップするのが慣習だ。だが、自宅療養中に亡くなるようなケースなどでは、在宅訪問の対応ではとても間に合わない。救急車がすぐに来てくれてすぐに入院させてくれることにつきる。そのためにもコロナ診療に特化した病院のコロナ病床の増設が急務だと考える。
民間病院ばかりにコロナ病床の増設を押し付けずに、既存の公共性のある病院や大学附属病にこそ積極的に、特化したコロナ専門病棟を広げるべきだ。また医療が逼迫した時は、入院ベッドとは別に外来で検査や治療ができる野戦病床を増設することも考慮すべきだ。
町の診療所は誰でもが迅速にコロナPCR検査が行えるようにさらに検査体制を整備すべきだし、コロナ以外の疾病の対応と同じように、病院の外来と密に連絡を取り合ってスムーズな病診連携が行えるようなシステムを作ることが必要だ。

●新型コロナワクチン接種は何故手間取ったか?
岡本雅之 (医療法人倫友会岡本内科医院 院長)

東京五輪が終わり10月に入ったというのに、新型コロナワクチン接種2回目は59.8%と残念な状況である。いろんな原因があるだろうが、
(1)ワクチンの扱いづらさ
(2)満足できる予約システムがない
(3)125,000,000人という対象数の多さ
(4)7月下旬よりのワクチンサプライ停止
(5)接種手順の徹底がなされなかった
などが主原因であることは間違いない。どうすれば良かったか、今回のシンポジウムで述べたい。

●診療所における医療体制の目詰まり
坂根みち子 (医療法人櫻坂 坂根Mクリニック 院長)

100年に1度と言われるコロナ・パンデミックが始まってすでに1年半以上経ちました。この間、結果的には医療崩壊をギリギリで回避できた一地方都市の診療所の医師として、日々の診療以外に、発熱外来、オンライン診療、ワクチン接種業務と、極めて効率の悪い手間暇かかる業務を国の指示に従い受け入れてきました。スタッフ含め心身ともに疲弊しました。残念ながら、何度荒波を乗り越えても、未だに指示は一方通行で現場からのフィードバックができず、根本的な問題は解決されないまま、次は第6波へと向かいます。
例えば、私たち診療所には、連携のないいくつものシステムへの膨大な入力作業が課せられていますが、情報のフィードバックは全くと言っていいほどありません。検査が陽性になった患者は保健所と県の管理となり、私たちはその後の治療に関与することも経過を知ることさえもできません。抗体カクテルは軽症のうちになるべく早く使うことが肝要ですが、その決定にも関与できません。
臨床医としての職業規範の1丁目1番地である、「何人からの干渉も受けずに、自らの判断で患者の最大利益を基準に診療する権利」が侵害されているのです。これでは、Patient Firstになるわけもなく、当然の帰結として第5波では在宅死する方がたくさん出てしまいました。
また、コロナの患者を診る為には、医療安全の側面からも、自らとスタッフの感染対策が確保されていることが前提になりますが、診療所の医師やスタッフの多くが加入している医師国保では自院で自身の検査をすることが未だに認められていないのです。コロナ罹患による労災認定も、診療所の医師は特別な手続きを踏まなくてはならず、知らずに手続きしていない医師がたくさんいるはずです。このような基本的な医療安全対策さえ各地の医師国保任せになっており、国は積極的に指導する事もなく放置しています。
ここまでくると、災害に備えたシステム作りが出来ないための「人災」です。
診療所の医師として1年半どのように対応してきたのか、どこに問題があり、どうすべきなのか、お話ししたいと思います。
(2021年10月3日時点での抄録であり、発表内容は変更になることがあります)

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