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Vol.221 現場からの医療改革推進協議会第十六回シンポジウム 抄録から(13)

医療ガバナンス学会 (2021年11月20日 06:00)


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( https://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/ )

2021年11月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【Session 13】ワクチン接種の現場 16:40~17:40(司会:上 昌広)

●新型コロナワクチン:世界の状況と相馬モデル
渋谷健司 (東京財団政策研究所 研究主幹、相馬市 新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター長)

相馬市では7月17日までに16歳以上人口の約85%に2回のワクチン接種を行い、また、夏休み中に12歳〜15歳にも積極的に接種を行い、その迅速さと高い接種率から「相馬モデル」として全国的に注目された。震災を乗り越えた市民・行政・医師会の連携に加えて、相馬市長・副市長のリーダーシップのもと、綿密な準備による総力戦が功を奏した。さらに、「新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター」を設置し、科学的対応と透明性を担保することを推進した。特に、副反応情報を徹底的に公開し、多くの市民にワクチン接種に関する安心感と納得感を育んでいくことができたことは特筆すべきであろう。
また、ワクチン接種の加速化のために、1)接種間隔の3週間縛りの緩和、2)異なるワクチンの組み合わせ(ミックス・アンド・マッチ)、3)標準量の半分の接種など、科学的なデータに基づく提言も行ってきた。現在、3回目のブースター接種の準備を行うとともに、2回接種後の市民や医療従事者の抗体価の測定を行い、いつ誰がブースター接種を受けるべきかという分析を行っている。
本来、国の専門家会議や分科会がこうした指針を出すべきであるが、残念ながら科学的というには程遠く、有効に機能していない。相馬市では世界的な情報を科学的に分析し、必要であれば実証的なデータを収集している。そして、情報を全て公開することで、市民からの信頼と新型コロナへの対応への支援を得ることができている。本講演では、新型コロナウイルスワクチンにおける世界的な情勢と相馬市の対応、そして、専門家の役割について検討する。
●ワクチン接種、日米の状況を比較する
大西睦子 ((内科医、星槎グループ医療・教育未来創成研究所・ボストン支部研究員)

米国は世界で最もワクチンの供給が充実している国の一つ。そのため、2020年末から急速にワクチン接種が高まった。ところが2021年春以降、接種のペースは大幅に遅くなっている。
歴史を振り返るとワクチン開発当時から、米国では、副作用や安全性、義務化やいわゆるワクチンパスポートなどの倫理的な問題について論争が続いている。やはり新型コロナウイルスのワクチンについても、専門家、国民、政治家などの間で議論が炎上している。特に現代の米国社会は、メディアの二極化、ソーシャルメディアであふれる「真実と嘘の情報」などにより、米国人が「共通の事実に同意する」ことは、もはやできなくなった。
ただし、ワクチン接種率と雇用の創出の間において相関関係は明らかである。そのため、米国では新型コロナウイルスのパンデミック前から広がっていた格差が悪化し、豊かな地域はより豊かになり、貧しい地域はより貧しくなっている。例えば、マサチューセッツ州は、新型コロナウイルスのパンデミック初期は、感染者、入院と死亡者が増える中、厳しい外出禁止令のもと経済が低迷した。ところがワクチン接種が始まり、早く高い接種率に到達し、学校や経済再開、回復が進んでいる。
私は2021年6月から現在まで、ナビタスクリニックや上昌広先生の医療チームの仲間とともに、東京都で集団接種に従事した。帰国時、日本は先進国では最もワクチン接種が遅れていたが、今や米国の接種率を追い越した。ところが、依然として国は閉鎖されたままで、経済の低迷が続いている。パンデミックによる経済的不安で、世界中でメンタルヘルスの悪化が問題になっているが、日本は今後どうなるのだろうか。
ここでは、そのような日米の状況をお伝えする。
●吉住健一 (新宿区長)
●新型コロナワクチン接種事業の契約における課題
島津久崇 (医療法人社団鉄医会 ナビタスクリニック新宿 事務長)

ナビタスクリニックは、今回の新型コロナウイルスワクチン接種において、新宿区が実施する地域でのファイザーワクチン接種、および企業が実施する職域でのモデルナワクチン接種の両方を受託し、実施した。
地域接種について新宿区から打診があったのは1月末で、そこから交渉および契約準備が始まった。弊院に依頼が来たのは、かつて巡回診療届けを提出し、ワクチン集団接種の実績があるのが理由であった。接種は5月中旬から始まり、本格的には6月から、新宿区内の3箇所の地域センターを担当して、週ごとに2箇所で実施した。当初は9月末までの契約だったが、11月末まで延長を打診されたため、医師や看護師のスケジュールを急遽確保した。ところが、接種希望者が急減すると一転、10月末で終了と通告された。予定を空けていただいていた医師や看護師の方々にご迷惑をおかけすることとなった。
職域接種は、当初6社から打診を受け、ワクチンが配分された4社を担当した。ワクチンが配分されなかった企業は、早々に中止を決定した所があった。企業によって、実施方法が異なり、個別の対応が必要であった。
今回の新型コロナウイルスのパンデミックにより、ワクチンの効率的な接種には集団接種が適していることが改めて認識された。しかしながら、地域接種も職域接種も、ワクチンがいつ届き、開始できるのかが直前まで決まらず、契約締結が接種開始後となった。実施後の契約は、費用支払いについて揉めることとなった。
行政や企業との直接契約の経験を共有し、医療機関が今後のパンデミックに対応する上で、どう備えるべきか論じる。

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