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Vol.222 日本におけるコロナ感染者数激減の本質を理解できない専門家や報道の無惨

医療ガバナンス学会 (2021年11月22日 06:00)


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東京理科大学基礎工学部名誉教授
山登一郎

2021年11月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

韓国や欧州ではまた感染拡大と騒がれています。それらの国では無症状者の無料PCR検査も行われており、市中無症状感染者を含めてすべての感染者数情報を新規感染者数として公開しています。一方日本では、その同じ新規感染者数という名目でも、行政・保険適用による有症者主体の検査情報であり、市中の無症状感染者数は調べも公開もされていません。

そんな日本でコロナ第五波が激減、その理由について世間では喧しい。報道やネット上では各種の可能性が議論されています。例えば、
https://news.yahoo.co.jp/articles/67898d318463057700252651b3e8e2ba7d8d7280
ワクチン接種の寄与が大きいことは確かでしょう。中にはウィルス自滅説なども飛び出しています。一個体の中では起こり得るとしても、集団の中では広がりません。進化の原則ですから。またもちろん日本人の国民性や生活習慣も重要な要素でしょう。

しかし、日本では未だに誰も市中無症状感染者数の重要性に気づかないのです。まるで公表新規感染者数だけがコロナ感染者全数だとでも信じ込んでいるようです(MRICVol.167  http://medg.jp/mt/?p=10483  記載)。このメルマガでは、これまでずっと大規模モニタリング検査実施や民間自費検査情報の収集公開を訴えていました(例えば、MRICVol.181 http://medg.jp/mt/?p=10524 記載)。その陽性率から市中感染者数を推定できるはずなのです。

激減理由における市中無症状感染者の重要な役割を例示しましょう。
ワクチン接種の感染予防効果は90%くらいです。だから感染率は従来の1割と見積もることができます。さらに感染者数のうちの有症割合を、従来は半々の5割程度だったと考え、一方ワクチンにより重症化が抑えられるので有症割合が5分程度に抑えられると考えてみましょう。丁度11月11日感染研による調査を報道していました。2回のワクチン接種で発症阻止効果が87%とのこと、解析の詳細と十分な基礎データがないため感染者のうちの有症割合に換算可能なのかさえ判断できかねますが、概ね0.5~1割と見積もっても良さそうです。(今後日本での有症割合を個々の医学的調査研究で明らかにして欲しいと願います。)
すると韓国や欧州など諸外国では、ワクチン接種後の感染確率が1割に減少するとすると、人流増加に伴い、市中無症状者も含め従来の1割程度のスピードで感染拡大がみられると予想されます。
さて、日本ではどうでしょうか。ワクチン接種で感染確率が1割に減少します。従来はその感染者のうちの5割が有症になって検査受診・陽性特定されたのに対し、ワクチン接種後では感染者のうちの5分程度が有症なので、日本の検査受診での陽性者数は従来の0.05/0.5、つまりさらに1割に減少します。これが従来の感染拡大スピードの1割の1割、つまり1%のスピードになったように見える秘密だと考えられます。この無症状者情報無視が感染激減理由の最大の要因であり、見落とされ続けているのです。
想像してみて下さい。激減中、行動抑制やワクチンによる感染率低下のおかげで感染者数が減っています。そのほとんどは無症状で市中に滞留し、検査では特定されません。だからまずこれまで通りのペースで感染者数が減少している上に、さらにワクチンでの感染率低下効果での減少加速が加わり、その上日本の検査制度に由来するワクチンでの有症者割合の減少スピード分がさらに追加加算されて、結局公表新規感染者数情報では激減に見えたのです。でも公表新規感染者数としては見かけ上減少していても、市中には無症状感染者がどんどん溜まっているのです。その溜め込み容量が11月10日頃までは余裕があり、人流増加で実際の市中感染者数が増加していても、公表情報では見かけ上減少し続け、その後ついに一杯になり、溢れるようにして公表新規感染者数としても増加傾向になってきているのでしょう。だから市中無症状感染者も検査特定する努力をしていれば、その以前から韓国や欧州並みに人流増加に伴う感染者増が観察されたはずです。もちろん、感染拡大スピードはワクチン接種のおかげで従来の1割程度に減っているでしょうが。

ちなみに山形大の加納先生から、各国で発表されている新規感染者数、PCR検査数およびコロナ死者数の相関を調査解析・分類した論文を紹介して頂きました。
(Hiroko Kanoh(2021) Classification of the Transition Patterns of the Number of COVID-19 Patients, The World in Different Perspective_ Rebuilding Lessons after a Crisis.
e-Book: https://iiari.org/product/the-world-in-different-perspective/
(山登へ直接連絡を頂いた方には,無料ダウンロードのURLをお伝えします。))
広範な市中無症状者対象のPCR検査を行う欧米などグループ1の国では、ワクチンにより感染者数が減少しても、その後またある程度の感染拡大が見られます。一方市中無症状者PCR検査の貧弱な国、日本やインドなどグループ2の国では、ワクチンにより感染者数の激減が見られています。両者とも死亡者数は減少しています。つまりここに述べた市中感染者数情報の有無が、見かけの感染者数減少スピードの違いに如実に反映されているのではないでしょうか。

岸田政権が無症状者への無料PCR検査をスタートさせるとか(上先生の『ファクタ』12月号記事)。是非日本も世界標準の検査制度に更新して頂き、「今市中のコロナ感染状況はどうなっているのか」という基礎的な情報を収集公開して頂きたいと願います(MRICVol.102 http://medg.jp/mt/?p=10313 記載)。また11月10日には、分科会が、感染状況のレベルを見直し、またデータに基づいて1~4週後の感染状況予測をしてそれを対策に活かす予定であると発表しています。その時のシミュレーションで使用するデータとして、旧来からの公表新規感染者数情報ではなく、無症状者検査なり民間自費検査情報から推定される市中感染者数情報を用いて意味のあるシミュレーションをして頂けるよう希望します。MRICVol.202 http://medg.jp/mt/?p=10588 に記載したように、旧来の公表新規感染者数は検査特定される有症者主体の数で、シミュレーションでは本来隔離治癒に分類される数であり、感染拡大に寄与する感染者数とは異なりますから。特にワクチン接種後には、その数の隔たりは無視できないほど大きいに違いありません。もうこんな非科学的で無意味なデータを用いたシミュレーションで国民をだまし続けることは無用にして頂きたいとお願いします。

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