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Vol.22050 コロナ禍においても「学び」と「成長」を止めない

医療ガバナンス学会 (2022年3月2日 06:00)


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桐蔭横浜大学
高瀬武志

2022年3月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

コロナ禍になり、自由に国外に渡航できなくなって3年が経ようとしている。この期間に多くの学生アスリート(以下、学生)が「大会の中止」や「活動自粛」で思うような競技活動ならびにクラブ活動ができなくなってしまった。筆者が勤務する桐蔭横浜大学剣道部も同様で所属する剣道連盟が主催する大会は中止になる場合もあり、クラブ活動も自粛もしくは活動人数の制限を設ける分散稽古(人数を分散して実施する稽古)で何とか学生たちの競技やクラブに対するモチベーションを保っている。

本学の授業の1つとして、また剣道部の活動の1つとして実施しているものに「国際武道研修」というものがある。この研修は、主に本学剣道部の部員が参加し、研修先の国で剣道指導や交流を通して、現地の歴史や社会を学び、現地の人々との交流を機にグローバルな視点と多様性、使用言語や生活基盤となる文化の違いをふまえた相互理解を深めることが目的である。この研修を実施するために事前学習として参加する学生は「訪問地の歴史等」を調べると同時に「剣道の文化性と精神性」や「剣道界の国際的な取り組み」や「世界から見た剣道」などを学習(個の学習)し知識を習得します。
また、剣道指導と交流が主な取り組みになる研修なので、どのように指導するか、交流するかといったことをグループワークで学習(協働学習)し習得します。そして、研修先である現地では習得した知識や技術等を活用しながら指導・交流を持ち肌感覚で学びを深め、インプットします。最後に帰国後、自分たちの取り組みをグループワークで振り返り(協働学習)、様々な視点からの振り返りを行います。そして最終的に自分自身と向き合う形で本研修の全課程を振り返り(個の学習)、レポートを作成して自身の考察した内容等を言語化(文字化)しアウトプットします。このような流れをもって剣道を通した研修をアクティブラーニング型授業で実施しています。

先述したとおり、本学もコロナ禍の影響を受け、学生を引率しての海外渡航は制限され実施することができなくなった。2020年度の本研修は断腸の思いで中止という決断に至った。しかし、その後に待っていたのは学生たちの「学び」や「成長」を止めてしまったのではないかという後悔であった。もっと、工夫と協力をしたならば何かしらの形で実施できたのではないかという思いでいっぱいであった。そのような後悔と自責の念を悶々と抱える日々であったが、2021年度を迎え、社会情勢はあまり好転しない中で海外渡航のできない2度目の研修の時期(毎年2月に実施)を迎えた。2021年度は昨年度のような後悔はしたくないという思いから、研修先でもあるシンガポールのタングリン剣道クラブの指導者と相談をしてオンラインでの剣道指導・交流会を開催しようという運びでまとまった。
オンラインでの剣道指導など筆者も学生も初めての経験であり、相手は言葉の通じない異国の方々である。学生の不安は一目瞭然であった。しかし、何度も研修先の指導者と打ち合わせをおこない、どのような指導や交流ができるか、時間帯はどのようにするか、指導する学生の班分けや担当箇所の分担はどうするかなど様々な視点から打ち合わせを行い、準備をすすめた。シンガポールとは時差も1時間と比較的予定を合わせやすい環境であり、予想以上にスムーズにオンラインで現地と繋がることができた。様々な不安はあったが、研修本番の日にはシンガポールをはじめ5カ国(シンガポール・アメリカ・イタリア・ベトナム・香港)から150名近い参加者が集まり大変な盛会で研修を終えることができた。実施したプログラムは、キッズクラス・初心者クラス・経験者クラスの3つで開催しオンラインで学生が剣道指導とアドバイスを現地の参加者に送った。筆者は統括責任者として学生の指導内容の補足や現地の参加者の活動を観察し気づいた修正点などにアドバイスを送った。

今回、実施したオンラインでの国際武道研修において参加した本学剣道部員の学生たちがどのような「学び」や「成長」を感じているのかについては別の機会に報告することとするが、本研修の統括責任者として、また学生たちの指導教員として、学生の「学び」と「成長」について振り返るとオンラインでの実施とはいえ、学生たちの充実した表情や学生同士の会話から、自分でも海外の方々に剣道を指導できる、オンライン上でも剣道で交流ができるという気づきや思いが得られていて良かったと感じている。また、2020年度に味わった後悔を繰り返さなくて良かったとも感じている。学生たちは様々な制限の中でも力強く「今」を生きており、様々なことから多くの「学び」を得て、大きく「成長」することができる。学生たちの可能性は無限であることを再認識させていただいた。研修先としてお世話になったシンガポールのタングリン剣道クラブの指導者や通訳として協力してくださった指導者からも近いうちにまた開催したいとの申し出をいただいた。研修先の参加者たちにも確かな「学び」と「成長」があったようで嬉しく感じている。

どのような社会情勢であっても情熱と工夫、他者との協力をもってすれば、たとえコロナ禍であっても「学び」と「成長」は止まらないことを学ばせていただいた。このような剣道で得た縁を大切しながら、今後も学生をはじめ様々な学習者の「学び」と「成長」を止めないようにアグレッシブかつグローバルに活動を継続していきたい。

http://expres.umin.jp/mric/mric_22050.pdf

 

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