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Vol.22051 新専門医制度と地域枠制度は若手医師の奴隷制度だ

医療ガバナンス学会 (2022年3月3日 06:00)


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20代専攻医
匿名希望

2022年3月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は20代後半の内科専攻医です。
専門医資格取得のため、スタンプラリーのように効率的に症例数を集め、1人の患者さんにしっかり時間をかけることができません。チーム医療を目指したいですが、患者の取り合いにもなり、嫌な雰囲気になることもあります。親の世代では各学会主導で意味ある専門医だったと聞き、ただ症例数を集めたり多くの講習を受けなければいけなくなった新専門医制度には、世代間の不公平さを感じていています。

しかし、もっと問題なのは地域枠のことです。私の後輩は優秀な成績で地域枠で入学しました。地域枠が一般枠よりも簡単に受かるという印象を持っている人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。どういうことかというと、後輩の時は、前記試験での募集定員が、全部で約70人、その中の約10人が地域枠募集定員でした。出願時に、一般枠と地域枠を併願することができます。後輩の時は、およそ受験者400人中100人が併願しました。併願した中の得点上位10番目が地域枠として合格し、11番目の得点の人は一般枠として合格することになります。つまり、前記試験で選抜される地域枠合格者は、簡単に入学している訳ではないのです。

このように成績優秀な人を選抜するタイプの地域枠合格者に対しても、運用方法は滅茶苦茶です。ある日突然、勤務義務年数が一方的に増やされ、選択できる診療科も急に限定されることとなりました。後出しで条件を勝手に変えることは、明らかに支配側のルール違反です。驚いた後輩は、奨学金を違約金とともに全額(自治体に)返しましたが、地域枠の契約は自治体と大学と二重になっているため、返済後も勤労義務が残ると言われて、結局指定病院で働くことを命じられています。円満に離脱できない場合は、研修先を探すことも難しく、仮に指定病院以外で採用された場合でも専門医認定はされないシステムになっているそうです。願書には、お金を返せば辞めれると書いてあったにも関わらずです。私も願書を見せてもらいましたが、はっきりと義務年限も書いておらず、解釈はいくつもできるように思えました。願書は高校生向けのものなので、やさしい日本語で書いていただきたいです。お金を返しても辞めれない制度は日本初?ではないでしょうか。

奨学金を返しても働かされていることに驚いた私は、他大学の状況も調べてみました。地域枠ではありませんが、似たようなシステム(卒後勤務する約束で入学し、お金がもらえる)の防衛医大で、「卒後進路変更のため奨学金を返したらどうなりますか」と聞いてみました。担当者の方は「お金を全額返してもらえれば自由です。圧力を掛けることも一切後追いすることはありません。」と回答されました。なぜ地域枠だけがお金を返しても契約解除ができず、専門医認定もされないのでしょうか。

先輩の勤務する地域の病院には、数年前から地域枠卒業医師が赴任してくるようになったそうです。その多くは暗い顔をしていて、挨拶すら返さない研修医もいると聞きました。地域枠制度の問題点を知った今、当事者の気持ちが推察でき、これでいいのかと思ってしまいます。

今は、多くの大学や自治体が、高校生向けに個別の受験相談会を催しています。もしも、地域枠に学生をもっと集めようとして、甘い言葉や嘘を言われたとしたら、高校生はなかなか疑うことはできないと思います。入学後に、地域枠とは白紙委任状にサインすることだったのだと気づいても役人は二枚舌なので泣き寝入りするしかないのです。国だからこそ信頼できると思ってしまうのです。『鬼滅の刃』では、「生殺与奪の権を他人ににぎらせるな!」と言っていますが、現代の高校生には自分の将来の人事権を18歳で渡してしまうことの重大さは理解できません。

近年、教育学部にも地域枠が、薬学部にも奨学金と勤務義務が導入されるようです。人手不足の分野に奨学金を出して、人を集めて後から縛る方法を取れば、どの分野でもすぐに人手不足を解消することができ、権力者側にはとても良いシステムたと思います。医学部地域枠と同様な不幸な人を生む状況になるのではと危惧しています。

インターネットで地域枠のことを調べていたら、「みんなが寝静まった頃に」( http://tskeightkun.blog.fc2.com/blog-entry-3621.html?sp )というサイトに『月刊選択2017年12月号 医療法改正で始まる医師奴隷化開業や勤務地選択の自由剝奪へ』という記事が紹介されていました。地域枠の成り立ちや真の目的、作った3人の官僚が実名で書かれていました。また、自治体や大学教授にとって地域医療支援センターは再就職先になるため既得権益になっているともありました。つまり将来の日本の医療を背負う若い医師のことを考えるのではなく、年配者の利益だけを考えているように思えます。
国試の追試が行われないのも、作るのが大変だからという理由だそうですが、受験生側の大変さは考慮されていません。日本の社会は昔から年配者が暖衣飽食をしながら、若者を搾取して来た歴史があります。私の周りでは、医学部を卒業した友人知人らがすでに4人自殺しています。ぜひ、若者の将来や日本の未来も考えて頂きたいです。

以上、若輩の身でありますが、現在感じていることを書かせていただきました。

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