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Vol.22052 難病患者の生命権の軽視

医療ガバナンス学会 (2022年3月4日 06:00)


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鹿児島県 井手小児科
井手節雄

2022年3月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は、選択的ホスホジエステラーゼ5阻害剤タダラフィルの排尿障害治療薬ザルティア錠5㎎を1年ほど服用したところで、起立性低血圧による“めまい(脳貧血発作)を発症し、血圧低下(150/90mmHg→110/60mmHg)の後遺症が残りました。
なぜ、服用を始めて1年たってから“めまい(脳貧血発作)”を発症したのか、なぜ血圧低下の後遺症が残ったか不思議でした。
いろいろ調べるうちに、選択的ホスホジエステラーゼ5阻害剤といわれるタダラフィルは、じつはホスホジエステラーゼ11も阻害する薬であることが分かり、タダラフィルがホスホジエステラーゼ11を阻害することでcAMPが増加し→リン酸化酵素であるプロテインキナーゼAが活性化し→ミオシン軽鎖キナーゼがリン酸化され→「アクチンとミオシンの滑走阻止」が起こり→血管平滑筋の廃用性萎縮が起こることが分かりました。
つまり“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用はタダラフィルがホスホジエステラーゼ11を阻害することによって起るメカニズムベースの副作用であることが判明しました。

1.薬害事件
薬害についての解釈は「医薬品の有害性に関する情報を、加害者側が(故意にせよ過失にせよ)軽視・無視した結果、社会的に引き起こされる人災的な健康被害」という考え方が一般的です。
薬害エイズ事件、サリドマイド事件のように製薬会社、医療機関、監督省庁など関係者の怠慢、無謀な使用法などによって、防げたはずの被害が発生、拡大したものも薬害と言います。
イーライ・リリー社は8000人の研究者を誇る薬品メーカーです。タダラフィルがホスホジエステラーゼ11を阻害することの危険性は熟知しています。
それでありながら、排尿障害治療薬ザルティア、肺動脈性肺高血圧症治療薬アドシルカを製造販売しました。
明らかに、タダラフィルの有害性に関する情報を無視して、ザルティア、アドシルカを製造販売しました。“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用の発症は重大な薬害事件ということになります。

医薬品の副作用被害等に係る訴訟の事例(和解に至るもの)
・昭和49年10月 サリドマイド訴訟和解成立
・昭和54年9月 スモン訴訟和解成立
・昭和58年から61年 薬害エイズ事件訴訟提訴 平成8年3月和解成立
・平成8年11月 ヤコブ病訴訟提訴 平成14年3月和解成立
・平成14年10月薬害肝炎訴訟提訴 平成20年2月和解成立
日本における薬害事件の訴訟の事例として上記のようなものが有ります。和解人数はサリドマイド事件が309人、キノホルム事件が6490人、薬害エイズ事件が1382人、ヤコブ事件が106人になっています。

タダラフィル事件
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は死因の25%が突然死、50%が右心不全と言われています。肺動脈性肺高血圧症(PAH)は難病に指定されていて日本における患者数はおよそ1万人と言われています。
この肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者の20~30%にアドシルカは使われています。そしてアドシルカは肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者ばかりではなく、肺高血圧症の患者にも多数使われています。
私はザルティア錠5㎎を1年服用して“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”が起こり強烈な起立性低血圧が起こり脳貧血発作を発症しました。
アドシルカの用量はザルティアの8倍の40mgです。アドシルカを使用している患者には容易に起立性低血圧が起こると思われます。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者において起立性低血圧の発症は右心不全につながり、突然死を意味します。
そして、アドシルカは世界中で使われています。肺動脈性肺高血圧症(PAH)にとっては禁忌とも言える薬が平気で販売されているなど世界を巻き込む薬害事件に発展するのではないでしょうか。
そして、タダラフィル事件は難病の患者の生命権が軽視されるような重大な薬害事件と言えるものではないかと思います。

2.RMP(医薬品リスク管理計画)を無視したイーライ・リリー社の横暴
その薬が持つ薬理作用によって起こる副作用をメカニズムベースの副作用と言いますが、私が主張する“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用は、タダラフィルのPDE11を阻害するという薬理作用によって起こるメカニズムベースの副作用です。
厚労省もメカニズムベースの副作用については「重要な潜在的リスク」としてその危険性を指摘しています。
「重要な潜在的リスク」として「薬理作用からは予測されるが、臨床的には確認されていないもの」を挙げています。
まさに、“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用は、タダラフィルがPDE11を阻害することによって→cAMPが増加し→リン酸化酵素であるプロテインキナーゼAの活性化が起こり→ミオシン軽鎖キナーゼがリン酸化され→「アクチンとミオシンの滑走阻止」が起こり→血管平滑筋の廃用性萎縮が起こることによる副作用であって、厚労省の指摘する「薬理作用からは予測されるが、臨床的には確認されていないもの」に当たります。

【RMP(医薬品リスク管理計画)】

http://expres.umin.jp/mric/mric_22000.pdf

医薬品の安全性の確保を図るためには、開発の段階から製造販売後に至るまで常に医薬品のリスクを適正に管理する方策を検討することが重要です。
それまでの薬事法に於いても副作用発症についての監視はなされていましたが、副作用問題が後を絶たないため、平成17年(2005年)9月に厚労省は「医薬品安全性監視の計画について」の通知を出しました。
その後、平成24年(2012年)4月に「医薬品安全性監視計画」に加えて、医薬品のリスクの低減を図るためのリスク最小化計画を含めたRMP(医薬品リスク管理計画)を策定するための指針を取りまとめました。
RMP(医薬品リスク管理計画)策定の目的は医薬品の「開発段階」、「承認審査時」から「製造販売後」のすべての期間に於いて、ベネフィットとリスクを評価し、これに基づいて必要な安全対策を実施することで、製造販売後の安全性の確保を図ることを目的としています。

医薬品リスク管理計画
————————————————————–
安全性検討事項
重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスク、重要な不足情報
————————————————————–

厚労省はベネフィット・リスクバランスに影響を及ぼしうる保健衛生上の危害の発生、拡大が有るような重要なものについての3つのリスクを制定しました。
RMP(医薬品リスク管理計画)策定のために制定された重要なリスクは、(1)重要な特定されたリスク、(2)重要な潜在的リスク、(3)重要な不足情報の3つです。
(2)重要な潜在的リスクとして下記のことが規定されています。
医薬品との関連性が疑われる要因はあるが、臨床データ等から確認が十分でない有害な事象のうち重要なもの
○薬理作用から予測されるが、臨床的には確認されないもの、
○副作用自発報告制度を通じてもたらされたシグナル
○同種同効薬で認められている副作用等

私の主張する“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”は、「重要な潜在的リスク」のうちの「薬理作用から予測されるが、臨床的には確認されないもの」、ということになります。
イーライ・リリー社はRMPの存在も知りながら、誤誘導という手法を用いて必死に“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”というタダラフィルのメカニズムベース副作用を隠蔽することに努めました。

3.薬害裁判
薬害裁判の場合、サリドマイド事件にしても、キノホルム事件にしても、薬害エイズ事件にしても、ヤコブ病にしても、薬害肝炎事件にしても薬害被害者と薬の因果関係が臨床的に明らかになっているものについての訴訟でした。
しかし、私の主張する“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用は「薬理作用から予測されるが、臨床的には確認されていないもの」になります。
このような裁判において一番危惧されることは、タダラフィルの副作用が見逃されてしまっているために、多くの被害者が居るにも関わらず、「他に副作用患者が居ないために真偽不明」という判決を受けることです。
しかし、タダラフィル事件は難病の患者の生命権が軽視されるような重大な薬害事件です。

RMPによって「薬理作用から予測されるが、臨床的には確認されていないもの」という副作用は「重要な潜在的なリスク」として明記されています。
そして、タダラフィルの服用による血管平滑筋の廃用性萎縮はPDE11が阻害されることによりcAMPが増加し→リン酸化酵素であるプロテインキナーゼAが活性化し→ミオシン軽鎖キナーゼがリン酸化され→「アクチンとミオシンの滑走阻止」が起こるために起こります。
私は、山形大学名誉教授の片野由美先生の「図解ワンポイント生理学 人体の構造と機能」という看護学校の生理学の教科書に気付いて“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用のメカニズムの解明に至りました。
看護学校の教科書で解明できるような副作用が、専門家の間でも取り上げられることなく、多くの患者が犠牲になり、また薬を作っている薬品メーカーはそのことを知っているなど、このような理不尽なことがまかり通るなど許されるべきことではありません。
サリドマイド事件にしても、キノホルム事件にしても、薬害エイズ事件にしても、ヤコブ病にしても、薬害肝炎事件にしても薬害が発生することを承知の上での事件ではありませんでした。
しかし、タダラフィル事件は“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という危険性を原告が指摘したにも関わらず、ザルティアとアドシルカの製造販売は続けられています。今までに無かった薬害事件です。

4.難病患者の生命権の軽視
(1)副作用を隠蔽するためにイーライ・リリー社と日本新薬株式会社は薬害裁判において、「PDE11と同時にPDE3を阻害しなければcAMPが増加することは無い」という「話を作って」裁判官の誤誘導を図りました。
しかし、ことも有ろうか自分で提出した第7準備書面において「種明かし」をしてしまって、自ら誤誘導を破綻させてしまいました。
(2)そして、「角を矯めて牛を殺す」の例えで説明したように、肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬のアドシルカの用量は、排尿障害治療薬ザルティア錠5㎎の8倍の40mgです。
私は、ザルティア5㎎錠を服用して“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用により、94/56mmHgという低血圧が発症しました。肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において低血圧の発症は直接的に右心不全、突然死を意味します。
(3)“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用は、RMPが指定する「重要な潜在的なリスク」に該当します。

原告井手の主張する“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”というタダラフィルの副作用は厚労省が指定する「重要な潜在的なリスク」に当たります。
またイーライ・リリー社と日本新薬株式会社は「PDE11と同時にPDE3を阻害しなければcAMPが増加することは無い」という「作り話」をでっち上げ裁判官の誤誘導を図りましたが、この誤誘導も「自らの種明かし」で破綻してしまいました。
この期に及んでも、イーライ・リリー社と日本新薬株式会社は肺動脈性肺高血圧症治療薬のアドシルカを製造販売しています。

デイヴィッド・ヒーリー教授の著書において
デイヴィッド・ヒーリー教授の著書“抗うつ薬の功罪(SSRI論争と法廷闘争)”において、イーライ・リリー社は抗うつ薬のプロザック(SSRI)における自殺の危険性について、「集中砲火を浴びる精神医学治療」という本に掲載された精神科医ローゼンバウムの論文を盾に取って「自殺はプロザックが原因ではなく、うつ病という病気のせいである」という主張を貫きました。
そして、空々しくも「プロザックの本当の悲劇は、効果的な薬を手に入れる道を閉ざされるために自殺するであろう多くの人々にある。」と繰り返しました。
しかし、FDAのデイビッド・グレアムや、米国精神薬理学会など他に多くのグループによってローゼンバウムの論文の再分析が行われ、プロザックを投与した場合、他の治療薬と比べて、自殺率が3倍に増えるということだという結論を下しました。

私のタダラフィル裁判においても誤誘導を見破られ、RMP(医薬品リスク管理計画)において厚労省が「重要な潜在的なリスク」に指定しているにもかかわらず、肺動脈性肺高血圧症治療薬アドシルカを販売し続けるイーライ・リリー社と日本新薬株式会社の姿は、SSRIのプロザックの危険性を否定し続けた姿と何ら変わるものではありません。
プロザックによる自殺は確かに「病気による自殺か、薬による自殺か」はっきりしないところはあります。
ところが、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者の死因は25%が突然死であり、50%が右心不全です。タダラフィルの副作用の“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”はタダラフィルがPDE11を阻害することによって起るメカニズムベースの副作用です。
“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”により、低血圧が起こります。肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者に低血圧が起こった場合、右心不全、突然死につながります。
アドシルカを服用している肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者が突然死したり、右心不全によって死亡した場合、イーライ・リリー社はタダラフィルの副作用を否定することはできません。
イーライ・リリー社と日本新薬株式会社の賠償額は巨額なものになります。

メカニズムベースの副作用について厚労省は「重要な潜在的なリスク」に指定しています。これでも、イーライ・リリー社と日本新薬株式会社は難病患者の生命権を軽視して、アドシルカの製造販売を続けるのでしょうか。
私は、4年間イーライ・リリー社と日本新薬株式会社の副作用隠蔽の裁判を戦いました。そして臆面もなく嘘を重ねるイーライ・リリー社と日本新薬株式会社の態度を見てきました。
イーライ・リリー社と日本新薬株式会社のこのような態度は人道的に許されるものではありません。

生命権とは他から不法に生命を奪われない権利のことです。生命権は人間が生きるための一番基本的な権利でもあります。生きるというその権利が薬品メーカーの利益追求のために軽視されるなど許されることではありません。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)など難病の患者はそれこそ「藁にも縋る」気持ちで薬を服用します。難病であれば難病であるほど薬に対する患者の願いには大きなものが有ります。

私の主張する“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用は厚労省が指摘する「薬理作用から予測されるが、臨床的には確認されていないもの」にあたり「重要な潜在的なリスク」になります。
アドシルカのような危険な薬を平然と製造販売するなど、イーライ・リリー社と日本新薬株式会社は薬品メーカーとして「してはならない最低のルール」を犯しています。アドシルカの製造販売は即刻中止すべきです。

このような副作用隠しが平然と行われるなど、怒るべきことです。上昌広先生は「を作ること」と仰っています。正しい日本の医療のために、みんなで日本の正しい医療を求めて立ち上がる時が来ています。
副作用の被害者が泣き寝入りすることのない社会でなくてはなりません。

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