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Vol. 287 医療界が直面している困難

医療ガバナンス学会 (2010年9月10日 14:00)


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全国医師連盟代表 黒川衛

2010年9月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp



医療界が直面している困難が三つある。リーダーシップの問題、医療界内部の異論、医療財源と配分の問題である。以下、順を追って述べていきたい。


医療界のリーダーシップの問題だが、日本では、全員加盟制の医師組織が無い。また、最大組織である日本医師会は、運営実態として高年の開業医主体となっ ており、勤務医や若中年開業医、病院、医学会の声が十分に反映できていない。私たち医療者は、こうした声を結集し、真のリーダーシップをとりうる協議体を 作っていく必要がある。私たちはその実現のために「医療再生フォーラム21」 http://iryousaisei.jp/index.html
を起ち上げた。この医療再生フォーラム21は、本田宏氏を筆頭に、全医連代表、全国医師ユニオン代表の三人が発起人を務め、呼びかけ人には、個人肩書きで、中医協委員三名も参加している。

9/19(日)に、秋葉原ビジョンセンターで開催する第一回シンポジウムには、医療界の著名人が集まる。全国の2000を超える病院をそれぞれ傘下にまと めている日本病院会と全日本病院協会の会長お二方、そして全国の1000を超える自治体病院を統括する自治体病院協議会の会長が、個人肩書きではあるが、 ビデオメッセージなどを披露する。
医療界のオピニオンリーダーである小松秀樹先生、海野信也先生、そして日本精神科病院協会の会長である山崎学先生、医師出身の国会議員梅村聡先生、若手医 学研究者の会のリーダー榎木英介先生、医療制度研究会の中澤堅次先生、聖路加国際病院の福井次矢院長、岡山精神科医療センターの中島豊爾名誉院長が参加す る。また、中医協でも活躍された嘉山孝正先生の熱いビデオメッセージが披露されるなど、医療界の一大機運が生まれる予感である。
やや、宣伝めいたが、是非、読者の先生方の参加参集を求めたい。 http://iryousaisei.jp/order.html


医療界内部にある異論の中で重要と思われることは、1混合診療解禁問題、2医師数増員問題、3不適切な刑事訴追回避のための方策、4医師配置問題、5医療機関での労働基準法違反放置の問題などである。こうした異論についても論議を深めていかねばならない。

1 混合診療解禁の問題は、新産業育成、先進医療への投資、公的医療費見直しなどの観点から解禁圧力が強まっている。しかし、この問題を国民に正しく判断 していただくには、混合診療解禁によって、公的医療費の配分、医療技術の普及、死亡分布曲線がどのように変化すると予測されるのか、この点の論議を深めな くてはならない。この三点の予測を秘した混合診療解禁の動きには、対抗しなければればならない。

2 医療需要の増加の中、医療レベルを維持するためには医師数増員は必要である。我が国の人口あたり医師数は、先進国の中でも、とりわけ低く、また病床数 あたりの医療従事者数はOECD平均の三分の一となっている。医師数に限らず、医療サービスにおける人員不足は明らかである。しかし、医療費を抑制し、労 働基準法違反を放置し、訴訟リスクを軽減しないまま医師数を増員させた場合、急性期医療から、医師が流出することになり、「医師確保」の解決にはならな い。

3 医療事故の不適切な刑事訴追を回避するために、業過罪廃止が日程に上らない世論状況では、刑事訴訟法改正により刑事裁判に前置する調査委員会を創設し フィルタリング機能を持たせるべきである。刑事訴訟法改正の実現には、患者家族への公的救済制度を確立することが政治的条件となる。被害患者や患者家族の 持つ処罰感情と真相解明や事故防止といった公共の利益のいずれを優先させるかは、この条件の下で国民に判断していただきたい。

4 医師配置の問題は、日本の医療は地域格差が少ないことにおいて、先進国中一番優秀であるという実績を国民やメディアに理解してもらった上で論議する必 要がある。医師不足は地方の問題だけでなく、3大都市圏でも深刻化している。拙速な政策誘導で若年医師を地方に強制配置すれば解決する問題では無い。限ら れた人材を効率よく教育できるシステムの構築を目指すべきである。医師育成機関に関して、既存の医育機関の問題点を洗い、その運営改善、整備拡充をはかる ことを優先し、新設の場合は、モデル育成機関となりうる条件を吟味すべきである。

5 医療界では、本来は時間外労働を行い得ない「宿日直勤務」の医師に対して、過重な診療活動を強いる労働基準法違反が常態化している。また『主治医制』 と称して、医師個人に、常時診療責任を強制している事が多い。特に公的病院においては、医師のサービス残業と賃金未払いが放置されている。そのため、医師 の健康不安、更に医師の流出が続出している。過労による立ち去りという悪循環を絶つためにも、こうした悪しき慣習を医療界全体で改善する決意を示すべきで ある。


医療財源と配分について、少しだけ触れてみる。
消費税増税は消費税損税の発生する医療機関では痛打となる。そもそも国税を何に優先的に使うべきか、納税が納税者の安心に繋がるよう医療界は提案をすべき である。公的医療費の配分を案分するに当たっては、政治主導で人件費と技術料に重みを付けるとともに、公平、透明、簡素な決定システムに変更すべきであ る。
ざっと70年間で日本の平均余命は35歳近く延長した。未曾有の高齢化社会となった日本に於いて、勤労者供給と国民総所得の確保の国家戦略が必要にな る。医療産業を、国民の健康福祉に加えて、日本社会の活性化に資するよう、医学医療立国のグランドデザインを提示しなければならない。医療財源確保のため に必要な作業である。

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