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Vol. 289 院内感染と事情聴取

医療ガバナンス学会 (2010年9月11日 14:00)


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横浜市立大学付属病院神経内科教授
鈴木ゆめ
2010年9月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


業務上過失致死容疑に当たる行為があるかどうか見極めるため、警視庁が病院関係者から事情聴取したとの報道。帝京大学医学部付属病院で発生した多剤耐性アシネトバクターによる院内感染問題だ。

私たち医療者は、院内感染を含めた感染防止に日夜努めている。結果、様々な病原体が棲息する医療現場において、特に抵抗力の衰えた患者さんの感染症コントロールが可能となっている。

今回の同大病院における院内感染については厚生労働省と東京都が同大病院に立ち入り検査をおこなうとのこと。感染源、感染ルートを明らかとすべく、綿密 な調査が行われるべきだ。しかし、一方、行政への報告が遅れた点が重視されているが、この点に関しては報告義務の明確化をさらに通達する必要があるのでは ないだろうか。どこのどんな多剤耐性がでたら報告しなければならないのか。出ればこれだけの騒動になるのだから、単なる注意喚起ではない通知を必要とす る。

なにより、警視庁の事情聴取といえば、刑事訴追を十分な視野に入れていることになろう。どう取り繕おうが、怪しいからお調べするのだろう。しかし、刑事 訴追はその対象をあきらかな犯罪や悪意による行為に限らないと、医療の現場が混乱するだけであることは従前の例を見れば明らかだ。医療行為に関しては慎重 にも慎重な扱いが必要だ。

実に、院内感染の届けが遅れただけでお縄になっていたら、我々、首いくつあっても足りゃしない。臨床に携わっている医師なら誰でも思うことだ。思ってい ることは口に出し、声を上げていかなければ、なんにもならない。耐え忍び、頭を下げ、手を後ろに回していて、状況がよくなるだろうか。当事者がいいわけを しないなら、代わって声を上げる人はいないだろうか。

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