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Vol.22141 研修医獲得へ、地域でいかに教育を行うか

医療ガバナンス学会 (2022年7月19日 06:00)


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この原稿は、医療タイムスに2022年5月18日に掲載された内容を転載しました。

ときわ会常磐病院乳腺外科医
尾崎章彦

2022年7月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

■2人の1年目研修医を受け入れ

私が勤務する常磐病院は2022年3月に基幹型臨床研修病院に指定されました。すなわち、初期研修医の受け入れを病院として認められたことになります。そして、臨床研修マッチングを経て、今年4月に2人の1年目研修医を受け入れることができました。

1人は福島県立医科大学出身の大森一徹先生です。当院が基幹型臨床研修病院に指定された後、早くから当院での研修を考えてくれていました。もう1人は杏林大学出身の坂橋芳弘先生です。お姉さんが福島県立医科大学出身で、いわき市の中核病院であるいわき市医療センターで研修をしていたことで、いわきでの臨床研修に関心を持ってくれたとのことです。

筆者は臨床研修センター長も兼任しており、この2人が、今後医師としてのキャリアを順調に築いていけるよう、しっかりと教育を行なっていきたいと考えています。

実際、彼らがしっかりと成長してくれることは彼らのキャリアだけではなく、常磐病院やいわき市にとっても極めて重要であると考えています。その理由はいわき市が置かれた状況にあります。
■全国的にも極めて医師数が少ないいわき市

添付した図をご覧ください。こちらは、常磐病院が位置するいわき市を含む中核市における人口10万人当たりの医師数の推移を示したものです。厚生労働省は定期的に全国の医療機関に勤務する医師数を調査しており、そのデータを基に作成した図になります。

http://expres.umin.jp/mric/mric_22141-1.pdf

これを見ると、いわき市は、全国的にも極めて医師数が少ない地域であることが分かります。さらに、着目すべきは、いわき市においては、20年にさらに医師数が減少していることです。

その理由については推測するしかありませんが、地理的な要因に加えて、震災後の風評被害などが影響している可能性があります。

そういった点からも、常磐病院に限らず、オールいわきで、初期研修医のリクルートや教育に励んでいくことが重要と考えています。
■いわき市3病院で連携を強化

その意味で、22年はいわき市の臨床研修において、節目となりました。なぜならば、基幹型研修病院である3つの医療機関(いわき市医療センター、福島労災病院、常磐病院)の臨床研修プログラムが、いずれも定員を充足し、いわき市として、新たに16人の初期研修医を受け入れたからです。

実際、この機運を逃すまいと、初期研修医の教育における3病院の連携を強めていこうとする機運が高まっています。また、常磐病院内部でも、研修体制の強化に努めています。例えば、23年度からは、院内で消化器内科や救急科での研修が可能となる他、連携医療機関も増やす予定です。
■リクルート成功病院はブランドを確立

では、それだけで研修医のリクルートや教育がうまく行くかと言えば、答えは否でしょう。何が必要か。その点で、先日、ホクトレジデントで有名なHOKUTOの五十嵐北斗代表に、興味深いお話を伺う機会がありました。

五十嵐氏によると、地域にありながら学生のリクルートに成功している病院は、いずれも自らの「ブランド」を確立しているということです。亀田総合病院や麻生飯塚病院であれば「教育」、手稲渓仁会病院であれば「英語」、湘南鎌倉病院であれば「ハイパー」といった具合です。

ただ、筆者個人は、いわゆるブランド病院に狙いを定めている医学生には、あまり関心がありません。また、彼らも、常磐病院に関心を示さないと考えています。その点、常磐病院とマッチするだろうと筆者が考えているのは、「周りと群れない一匹狼系」の医学生です。実際、初年度のマッチングで当院に応募してくれた医学生は、皆自分で考え、「常磐病院で研修をする」という強い思いを持って、応募してくれていました。

なお、筆者が以前勤務していた南相馬市立総合病院においても、初期研修医は一匹狼系の方が多い傾向がありました。同じ浜通りの医療機関として、そのブランディングは大いに参考にしています。

ちなみに、現在、当院臨床研修センターの副センター長を務めている澤野豊明医師も南相馬市立総合病院で初期研修時代を過ごした一人です。彼は極めて優秀な外科医ですが、「ブランド」に頼らず、自身で考えながら、日々の臨床や研究に地道に取り組んできたからこそ、その両方で、同世代でも指折りと考えられる実力を身につけたのだろうと考えています。

澤野医師の成長を見るにつけ、月並みではありますが、今後重要であるのは、入職してくれた初期研修医を着実に教育していくこと(あるいは彼らが自然と育っていく環境を整えること)、そして、その成果を着実に発信していくことだと考えています。

実際、筆者はこの点に、危機感を持って取り組んでいます。なぜならば、五十嵐代表も強調していましたが、臨床研修において医師のリクルート力を養っていかなくては、「病院として、自立することは難しい」(前述の五十嵐代表)からです。それは、全ての病院に共通する課題と考えます。

もちろん弱い分野について、大学や人材派遣会社との連携は必要でしょう。ただ、それだけでは常磐病院の医療体制を充実させていくことはできません。いわき市の医療を長期的に担っていくためにも、常磐病院として、いかに初期研修医を教育し、リクルートを行なっていくか、筆者は、この問題に不退転の覚悟で取り組んでいく所存です。

http://expres.umin.jp/mric/mric_22141-2.pdf

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