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Vol.22147 コロナ第七波拡大でも、市中感染状況情報収集も公開もせずに国民に負担を強いる日本のコロナ対策

医療ガバナンス学会 (2022年7月26日 06:00)


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東京理科大学基礎工学部名誉教授
山登一郎

2022年7月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

今コロナ第七波。都では新規感染者数3万人超え。行動制限せず、国民に感染対策を徹底して欲しいとのこと。3年経っても日本の政府自治体専門家のコロナ対策は非科学非論理のまま、同じことの繰り返しだ。

2021年4月以来十数回掲載して頂き、前回4月(2022年4月11日、Vol.22077)が最後だった。この間ずっと同じ指摘をしてきた。
新規感染者数情報として日々公開される情報は、基本的に有症状者対象であり、無症状者も多い市中感染状況を反映していない。
一昨年末から民間自費検査が市中でも行われるようになった。その陽性率が市中感染状況を推測する上で重要なのに、その陽性率も検査数も陽性者数も情報収集されなかった。そのことを延々訴えていた。
昨年末無症状者対象市中無料検査が可能となり、その陽性率が一時入手可能だった。正月の拡大時、都の新規感染者数2万人程度の時、その陽性率は20%などと報告されていた。一方市中無料検査の陽性率が都で3%程度との報告だった。すると都の人口14百万人の3%、40万人程度が無症状も含めた感染者数と推定できた。
だが、検査キット不足などで市中無料検査も下火になってしまった。現在夏休み前からの第七波感染拡大だ。ところが未だにこれまで同様の新規感染者数とその陽性率が公表されるだけで、民間自費検査なり大規模モニタリング検査なり市中無料検査なりの陽性者数も陽性率も国民には広く見えないままだ。つまり国民には市中感染状況が隠されたままといえる。これで何を根拠に判断して、国民は感染対策をできるというのだろうか。おまけに、政府自治体側も、相変わらず、有症状者中心の公表新規感染者数情報だけを頼りにコロナ対策を行っているのだ。

欧米韓国など大抵の国では、市中無料検査を広く行い、その検査結果情報を包み隠さず公開している。昨年末のフランスで検査数155万件、10万人感染者、だから陽性率6.5%、そこからフランス全土の感染者数400万人を推定できる。(当然バイアスがかかっていて、正確ではないだろうが。)
すると、国民はその推定値に基づいて、どの程度感染が広がり、どの程度気をつけて生活するべきか、自分で判断できる。それが民主主義下の“自由”ではなかろうか。
ところが残念なことに、日本では、ずっと国民自ら判断するための基本情報が隠されたままだ。これで民主主義と言えるのだろうか。

太平洋戦争中、政府は国民に竹槍で抗戦せよと呼びかけた。その時ミッドウェーもガダルカナルもインパールも連戦連勝とのプロパガンダ情報を流した。米国艦隊の空母・戦艦等の推定数も空軍戦力も、そして陸海空軍の人数の見積もり情報も収集公開しようとしなかった。国民は何も知らされず、竹槍で抵抗できると思い込まされた。政府は的確な情報を収集すらしないまま、戦争継続していった。一体どんな戦い方を計画できたというのだろうか。
コロナ感染症に対しても、日本は同じ過ちを犯している。市中感染状況情報を広く詳細に公開しようともしないで、国民は単に政府が押しつける感染対策を闇雲に強いられているだけだ。市中にどの程度広がっているのか、知らされないままに。政府自治体も、的確な市中感染状況情報に基づかないでは、科学的なコロナ対策などできないだろうと残念に思う。
欧米韓国などでは、市中検査を広範に行い、その検査結果を入手可能だ。すると国民一人一人が、どの程度国民に感染が広がり、だから自分はどの程度気をつけて感染対策や行動抑制を行うのか、自ら判断できる。そうなれば、政府による緊急事態宣言などの行動制限など全く不必要になると期待する。日本だけ、こんな非民主的で非科学的なコロナ対策を強要されてしまっていると訴えたい。
同様のことが福島原発アルプス処理水の海洋放出問題にも当てはまる。中韓も反対、漁業関係者も反対、それに対して明確な証拠を示せばいいだけだ。原液の液シン測定で、放射能のエネルギー分布と強度情報が得られる。すると残存核種の種類と量が推定でき、世界中で、問題なしか、問題有りかを科学的に判断できる。日本の関係者は当然そのデータを取得しているはずだ。(そのデータに基づいて海洋放出できると主張しているのだと信じる。)だから何故その情報を公表しようとしないのか、不思議だ。疑惑を抱かせるだけだろう。科学的合理的対処を期待する。

今更日本のコロナ対策の変更はあり得ないのかもしれない、との諦めもある。でもこのまま的確な科学的情報を広く公開されないまま、政府自治体専門家のいいなりになってしまうのでは、戦中当時の状況と同じではないかと恐れている。

前回掲載の最後部分を再掲載しておく。
日本のコロナ流行では、失う必要のなかった多くの命・健康、医療従事者等の逼迫状態、緊急事態宣言などによる国民の自由の制限・経済的損失、補償や医療などにおける税金の無駄遣いなどなど、的確な情報の非収集・非開示のために、国民は多大なる被害を被った。
是非自由とは何か、民主主義とは何かをしっかり考え、目を見開いて欲しいと願う。ロシア国民と同様な状況に陥っていないか、心配だ。情報統制も無くネットアクセスも自由なのに、厚労省の今般の情報操作により、戦中の言論統制時と同様な状況に丸め込まれているように思えて恐ろしい。21世紀の国民はもっと自由で平等なヒトを目指すべきだと期待する。
プーチンやその指導層にはロシア国民の指導を任せられないと思う方が世界中大多数だと思う。日本でもそれと同じことが言えるようだ。現在の厚労省分科会専門家報道がコロナ対策の中心に居座り続けるべきではないと、国民の多くに早く気づいて欲しいと願う。

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