医療ガバナンス学会 (2022年8月3日 06:00)
伊賀内科・循環器科
伊賀幹二 (西宮医師会長ではない)
2022年8月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
7月9日、ヤクルトスワローズで選手関係者27名がPCR陽性であったため阪神戦が中止されました。3日後には巨人で約50名のPCR陽性者の選手名が発表されました。これらはクラスタと考えられます。個人的に知っている阪神の球団職員によると、プロ野球12球団で現在では週1回で、緊急事態宣言下では週2回唾液でのPCR検査を、選手・用具係など各球団約100名を対象として実施しているということでした。このスクリーニングPCR検査の結果について、陽性数や選手名は公表されましたが、陽性者のその後の経過として、無症状のままなのか、症状が出現したのか、転帰はどうなったのかなどは公表されていません。
病院でクラスタが発生した時、できるだけ早い時期に濃厚接触者全員にPCR検査を実施し、症状が出現すれば再度PCR検査を、症状がなければ14日で隔離解除という対応でした。医学的にはそれでいいとは思いますが、この方法ではクラスタ発生時には陰性でその後に無症状のPCR陽性になる人数はカウントできません。この集団におけるPCR陽性者(数)を把握するためには毎日のPCR検査が必要になります。
日本プロ野球機構が施行している1週間に一度のPCR検査なら、PCR陽性期間を約7日と考えれば、一つの集団におけるおおむね感染の全体像を把握できると思います。
日本プロ野球のPCRスクリーニング検査の情報をきちんと分析すれば、追加の検査なしでクラスタ発生集団におけるPCR陽性例をすべて把握でき、そのうちの何%が無症状で、何%が2~3日後に有症状がでてくるという貴重な疫学データとなります。そして、同時期の対戦相手の陽性数、チーム内での陽性数の変移から、無症状陽性者を隔離することの意義も判定可能です。すでに、陽性者の名前は発表されているので個人情報保護法案にも抵触しないのではないでしょうか?