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Vol.22177 ビッグファーマと副作用隠蔽事件を闘った町医者

医療ガバナンス学会 (2022年8月25日 06:00)


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鹿児島県志布志市 井手小児科
井手節雄

2022年8月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は排尿障害治療薬ザルティア(選択的ホスホジエステラーゼ5阻害剤タダラフィル)を1年ほど服用したところで“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という前代未聞の副作用を体験することになりました。副作用は突然の起立性低血圧による脳貧血発作で始まりました。その時血圧は94/56mmHgでした。その後、血圧低下(150/90→110/60)の後遺症が残りました。そして血圧低下による易疲労性、倦怠感などの体調不良に悩まされることになりました。

脳貧血発作は突然たたきつけられるような感じで起こり3週間寝込みました。運転中の危険性などを考えてイーライ・リリー社と日本新薬に詳しい副作用報告をしました。しかし、イーライ・リリー社と日本新薬は「アメリカのリリー本社で情報収集中!」の回答を繰り返しました。そして副作用発症から8ヶ月、副作用報告から6ヶ月して届けられた回答書はじつに素っ気ないものでした。

脳貧血発作についてはザルティアの副作用と認めるような、認めないような回答がなされ、血圧低下の後遺症については半減期を過ぎているのでザルティアの副作用ではないと一蹴されていました。そして、話し合いも打ち切られ私が取れる手段は裁判しかありませんでした。

田舎医者の私にとって裁判を決意することは並大抵なことではありませんでした。しかし、“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という重大な副作用に気付きながら口を噤んで泣き寝入りすることは人として、医師として死ぬまで後悔すると思いました。鹿児島に「泣こよか、ひっ飛べ」という言葉が有ります。「怯むな、勇気を出して立ち向かえ」という意味です。幼いころから教えられてきたこの言葉が私の背中を押しました。

私の訴える“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用について、イーライ・リリー社はその正否を争うという裁判ではなくて、副作用のメカニズムに関する理論をサイエンスフィクションであると嘲笑し、誤誘導という手法でイーライ・リリー社の言っていることは正しいと裁判官に錯覚させ、言いがかり、嘘、詭弁、目くらまし、すり替え、難癖、嘲笑という手法で執拗に裁判官に対する刷り込みを図りました。

イーライ・リリー社は誤誘導という裁判テクニックで裁判官を愚弄し、裁判さえ冒涜しました。

添付文書には記載されていませんが、選択的ホスホジエステラーゼ5阻害剤と言われるタダラフィルは、実は、ホスホジエステラーゼ5だけでなく、ホスホジエステラーゼ11も阻害する薬でした。“血管平滑筋の廃用性萎縮とリストラ”という副作用はタダラフィルがホスホジエステラーゼ11を阻害することによって起るメカニズムベースの副作用であって、イーライ・リリー社はいうまでもなく承知している副作用です。

薬害裁判で浮き彫りになったものは、製造販売承認申請において故意に無視された副作用の危険性、添付文書にまで仕組まれた副作用隠蔽のからくり、製薬マネーを貰い副作用に目を瞑る専門家たち、絶対禁忌の薬が特例承認により難病患者の薬として販売されているという事実でした。

薬害裁判を闘った医師として本を出版してこのような事実を社会に訴えることにしました。15年続いたSSRIによる3万人超の自殺についても、うやむやにされています。小麦粉ほどの効果しか無い薬で十数万人の人が命を落としました。こういうことが表沙汰になることなくうやむやにされ、副作用被害者が泣き寝入りしなければならないなどあまりにも不条理なことです。

製薬ビジネスの実態を知っていただいてみんなの力で日本の医療を守りたいと思っています。

上先生のご厚意で医療ガバナンス学会のメルマガで私の著書を紹介することを勧めていただきました。

8月20日に鹿児島市の南方新社から出版しました。タイトルは「薬害裁判―副作用隠蔽事件を闘った町医者の記録―」です。私の著書が正しい日本の医療を守るために何らかの役に立つことを願っています。

http://expres.umin.jp/mric/mric_22175.pdf

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