医療ガバナンス学会 (2022年8月23日 06:00)
まずは、自分が知っている範囲で、京大医学部でのコロナ対応をご紹介します。
私がコロナの影響を受け始めたのは、大学3年から。テストがレポートに代替される、実習も実験なし、部活も中止と再開を繰り返すなど、学生生活が「中途半端」になってしまいました。授業も部活も内容そのものではなく、形式がどう変更されるのかに気を取られ、充実感が得られなかった覚えがあります。今も病院実習中ですが、コロナの感染拡大に応じて学外病院での実習が大学病院に振替になったり、病棟への立ち入りが禁止されるなどの措置が取られ、やりきれなさを感じています。この状況でも実習をしてくださっていることは大変ありがたいのですが…
下の学年では原則元通りの形式で授業が行われているようですが、多くの科目でコロナに感染した生徒にも手厚い対応が取られていたようです。実習を欠席した学生に追加レポートの形で救済措置がなされたほか、本試験を欠席した学生にも、成績評価は本試験受験者と同様に行われたようです。しかし、不利益を受けた科目もあるそうです。例えば、解剖実習に関しては、2020年(コロナ禍1年目)には実習が完全に中止され、テストのみでの成績判定、なんとご献体に触れることなく終わってしまいました。2021年(同2年目)は、緊急事態宣言が出されたタイミングで実習が一時的に中止されました。完全に中止されることを危惧した学生の中から再開を求める声が上がり、学年を超え100人以上の署名を集めたといいます。しかし宣言が解除されるまでは再開されず、結局通常よりも短い時間しか実習ができませんでした。不十分な実習だったと後輩が話してくれました。
では、留年に関してはどうでしょうか。京大では、学生に自由に過ごしてほしい・勉強は自己責任との考えが強いのだろうと思います。落とすと即留年という科目はそもそもほとんどありませんし、「最後は大目に見てやろう」という先生が多数派であるように思います。ただし、あくまでこれは全体の話に過ぎません。京大でも(他の大学でも)、厳しすぎる条件やちょっとしたミスのために単位を落とした/留年した学生の話は耳にします。学生からしてみれば、評価基準を決める教員に不合格と言われてしまえば受け入れるしかないのが現実ですが…今回杉浦くんが声を上げてくれたことを機に、何かが変われば、と思います。
話を戻しますが、コロナ禍で学びの機会が奪われ、しかも戻ってこないという問題は、京大においても同様です。そして程度の差こそあれどどの大学にも当てはまるのではないでしょうか。しかし、コロナのもう一つの弊害は、他の学生と顔を合わせて話す機会が減ったことで、他者への関心が薄れてしまったことだと思います。この記事の執筆の際に驚いたのは、自分が京大の他の学年の事情について、あまり知らなかったということです。部活等がなく会えなかったとはいえ、知り合いも多いはずなのに…想像以上の無関心さに愕然としました。接触の機会が減ったことで、交換する情報量が減り、本人が困っているちょうどその時に会えない(この前大変だったという話を聞いても何もできない)。しかも自分もコロナの影響を受けているため、他人のことを気遣う余裕がなくなっていたのではないか、と思います。今回は直近で彼と交流があったため、自分事のように危機感を覚えましたが、そうでなければ大変だなの一言で済ませていたかもしれません。
今回の件は、私にとって、自分の視野が内向きになっていたことに気づき、他の学生の現状に目を向ける機会となりました。コロナ禍で自分が被った不利益に目が行きがちですが、その目を一度外に向け、今回の騒動やコロナが学生から奪ったものについて考えてみてほしいと思います。