最新記事一覧

Vol.22208 自治体を「信じた」内閣府、「無駄遣いの責任は自治体にある」 (シリーズ「虚構の地方創生」第7回)

医療ガバナンス学会 (2022年10月13日 06:00)


■ 関連タグ

Tansa リポーター
辻麻梨子

2022年10月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

自治体による地方創生臨時交付金の無駄遣いを後押ししたのは、交付金の決定権を持つ内閣府である。2020年春、地方創生推進事務局の村上敬亮審議官は記者会見で、交付金について次のように語った。

「コロナ対策であればまったく制限はない」
「計画書はぶっちゃけ大雑把でいい」
「細かく審査しないで数千万や1億を使うことになるが、自治体を信じている」

その結果、コロナ対策や地方創生と無関係な事業が横行した。こうした状況を、内閣府は認識しているのだろうか。知っているとしたら、どのような対策をとっているのだろうか。

永田町の合同庁舎にある、地方創生推進事務局を訪れた。参事官補佐の畑裕幸氏と上坂宗憲氏が2名で取材に応じた。

●事業計画まともにチェックせず

内閣府は、自治体から上がって来る事業計画書をチェックしていなかった。1700以上の自治体から提出された計画は、2020年度分だけでも約8万件にのぼる。人手が少なく、それらを確認することは「正直、そこまでできない」という。

そもそも内閣府は厳格な審査を行うつもりはなかった。審査を厳格に行えば時間がかかる。今すぐ支援が必要な自治体への給付が遅れるというのが、内閣府の言い分だ。

自治体がコロナ対策や地方創生に絡めて事業計画を提出すれば、内閣府は「基本的に認めざるを得なかった」という。これまでに計画を取り下げたり、再提出するように伝えたりしたのは、自治体自身がコロナや地方創生との関連を説明できない事業だ。

●内閣府「現金ばらまくのはさすがに・・・」

内閣府が杜撰な審査で事業を認めた結果、地方創生臨時交付金の無駄遣いに走る自治体が続出した。

2021年2月2日、内閣府は各自治体宛に事務連絡を送付した。その中で、「特定の事業者に支援をする場合には詳細な内容を提出すること」や、「現金の一律給付は適切な範囲に限定して支給すること」を、自治体に伝えた。

畑氏はTansaの取材にこう話す。

「市民全員に現金をばらまくというようなものはさすがに…。言い方は悪いが、(自治体が)何も考えていないということになりかねない」

しかしこうなった一因は、交付金の使途をチェックせずに「お墨付き」を与えた内閣府にあるのではないか。

「この臨時交付金自体は地方が単独で使えるものです。コロナとの関連などに関する説明責任は地方公共団体にあると認識している」。(畑氏)

他方で、地方自治体の職員への取材では、交付金の無駄遣いについて問うと「国からは特に何も言われていない」と答えるところが複数あった。巨額の交付金をめぐって、国も地方も責任を押し付けあっていた。

=つづく

※この記事の内容は、2022年4月27日時点のものです。

【Tansaについて】
Tokyo Investigative Newsroom Tansaは、探査報道(調査報道)を専門とするニューズルームです。暴露しなければ永遠に伏せられる事実を、独自取材で掘り起こし報じます。広告収入を受け取らず、独立した立場を守ります。誰もが探査報道にアクセスできるよう、購読料もとりません。NPO法人として運営し、寄付や助成金などで成り立っています。
公式ウェブサイト:https://tansajp.org/

●シリーズ「虚構の地方創生」:https://tansajp.org/investigativejournal_category/region/

●取材費を寄付する:https://tansajp.org/support/

【YouTube番組で解説!】
バラマキは止まらない 交付金16兆円~虚構の地方創生【探査報道最前線 地方創生 NO,2】
https://youtu.be/VXXtC8lUzS4

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ