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Vol.22232 現場からの医療改革推進協議会第十七回シンポジウム 抄録から(9)

医療ガバナンス学会 (2022年11月10日 06:00)


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2022年11月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

11月27日(日)

【Session 10】社会的孤立 13:00~13:45 (司会:上 昌広)

●相馬井戸端長屋にみる社会的孤立対策
齋藤宏章(相馬中央病院内科医師、福島県立医科大学放射線健康管理学講座博士研究員)

本発表では、相馬井戸端長屋の取り組みから考える社会的孤立対策について考察する。相馬井戸端長屋は、震災翌年の2012年から相馬市に設置された災害公営住宅である。通常の公営住宅と異なり、長屋内で暮らす住民が自立してコミュニティを形成できるような共助の工夫が凝らされている。これらは震災後の孤独死、孤独な環境での衰弱を防ぐために考案された取り組みであるが、これからの日本の社会が直面する孤独に対する解決策の取り組みでもあるかもしれない。
孤独は、個人の願望と実際の社会関係の乖離と定義される。医学的には、孤独が慢性的になった場合、心血管系、免疫、中枢神経系に悪影響が出ることがそのメカニズムから明らかになっている。実際、孤独であることは、心血管系の疾患、感染症、認知症、早期の死亡とつながっており、肥満症や運動不足、喫煙と同等の死亡リスクであるとさえ言われる。孤独は今や個人の問題ではなく、公衆衛生的な課題として捉えられるようになっている。
興味深いことに、孤独に対しては、単に介入を行えば良いものでないことも知られている。孤独であるか否かは主観的であり、見守られている、世話をされているという事実が必ずしも孤独を解消し得ないためだ。英国に続き日本も2021年に孤独・孤立担当大臣を設置したが、どのような対策が有効であるか模索が続いている。
私は2022年6月に相馬市に赴任して以降、相馬井戸端長屋について研究している。現在の長屋は震災後の復興としての役割もありながら、他の災害のために入居した人、あるいは通常の公営住宅と同じく応募して入居する人が増えている。また、実際に訪問し、関係者に話を伺うと、「新型コロナのために外部との交流が行えなくなっている」「食事を皆で一緒に摂る機会がなくなった」と新型コロナの流行による新しい課題にも向き合っている。
東日本大震災後に相馬長屋が果たしてきた役割と共に、社会的な孤立への対策の一案として、長屋から得られる知見を紹介したい。

●社会的孤立
能美吉貴(弁護士)

私の所属する法テラス(正式名称:日本司法支援センター)という組織は、2006年、司法制度改革の一つの柱として誕生した組織です。法的なトラブルに苦しんでいても経済的に余裕が無い、近くに弁護士がいない等の理由で、なかなか弁護士に繋がれなかった人達に対して、より簡易に弁護士からの情報提供、法的援助を提供できるようにしたものです。 私は2020年より東京において、法テラスの弁護士として、経済的に決して余裕があるとは言えない方々を対象に法律相談、代理援助等の法的支援を行っています。今回のテーマである「社会的孤立」の問題に直面することも少なくありません。
「社会的孤立」といっても、高齢者で判断能力が大きく低下しているケース、職場でのパワハラで心を患い外出すら難しくなったケース、コロナで失職したために借金を重ね、もはやどうしていいかわからなくなったケース等、さまざまなケースがあり、一括りにして語ることは到底できません。
しかしながら、私は「社会的孤立」には一つ共通した問題があると考えます。それは、どのケースでも孤立した方々が「頼るべき社会的資源にアクセスできていない」ということです。人は「病気になれば医者に診てもらう」ことはすぐに思いつきますが、経済的に困窮しているときに行政(福祉)に頼ることや、ましてパワハラや借金で苦しんでいるときに弁護士に頼ろうとは、なかなか思いつきません。
このようなアクセス障害の発生する理由もケース毎に千差万別ながら、私は、アクセスについての十分な理解、認識が醸成されていないことこそが主因と考えています。そこで、「社会的資源」の一端を担う者として、どういった「社会的資源」があり、どうアクセスできるのか、アクセスによるデメリットは無いのか等を、丁寧に伝えていくことを日々心掛けています。

●女性支援新法制定に感謝して~神奈川県議会からの意見書が実現!
小川久仁子(神奈川県議会議員6期、神奈川県議会女性活躍推進議員連盟会長)

2015年(平成27年)に、神奈川県議会県民企業常任委員会提案の意見書を国に提出した。「売春防止法の抜本的改正又は新たな法整備を求める意見書」である。この意見書は、都道ついて府県からの意見書としては唯一であった。そしてこの意見書通りに売春防止法は改正され、「困難を抱える女性の支援に関する法」が成立した。
意見書提出の1年前、私の副議長就任と共に有志の女性議員と共に女性保護事業の勉強会を始めた。
県の男女共同参画課長、婦人保護施設さつき寮寮長と一緒に、女性保護事業の多様性と課題の深さを研究し、視察も行い、女性保護の全ての根拠法が売春防止法であることの矛盾と、女性保護事業がおざなりに扱われていることへの問題意識を持つに至った。
1年間の時をかけて、周囲の、特に自らが所属する自民党県議団の同志の理解を得るために尽力した。年度をまたぎ、自らが所属する県民企業常任委員会での質疑をもとに、自民党から上記の意見書を提案し、可決成立した。
その意見書をもって、県内自民党、公明党国会議員に、同じ目的を持つ全国婦人保護施設等連絡協議会の事務局の話を聞いてもらい、趣旨に賛同してもらうよう努力をした。 機会があれば全国議員が集まる席で同様の趣旨の意見書を上げてもらうよう、女性保護事業の底上げへの協力をお願いした。
女性保護事業関係4団体の新法設立に向けたプロジェクトチームの事務局とも連携をとり、国会議員へのアプローチを粘り強く続けてきた。
国会質問を多くの議員にお願いしたところ、公明党議員が質疑してくれ、塩崎厚労大臣が前向きな答弁をしたところから、国が動き出した。
神奈川県の女性活躍推進議連を3年前に創立してからは、女性保護事業を含め、国の関連省庁からの勉強会を数回開き、意見を申し上げてきた。
国会に超党派女性議員がこの問題のプロジェクトチームを設置したのは、神奈川県から意見書を上げた1年後であった。様々なアプローチが功を奏してきたことは、プロジェクトチームのリーダー戒能先生の著書にも明らかに記載されている。今後、2024年(令和6年)の施行に向けて、事前準備に努力を傾注し、法の精神が行き渡るように努力していきたい。

 

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